- 2025/06/09 掲載
なぜ「運用の裏方ビジネス」が注目される? 新制度“投資運用関係業務受託業”の正体

誰のどんな仕事を「受託」するのか
投資運用関係業務受託業(以下、「新受託業」)は、2024年5月に成立した金融商品取引法で新たに制度が整備され、投資運用業者などの「計理業務」や「法令等遵守のための指導に関する業務」の委託を受ける新たなビジネス形態として規定されています。投資に関するビジネスにはさまざまな形があります。その代表的なものの1つが、投資信託を運用する投信会社です。たとえばNISAを使って投信を買うと、そのお金を使って投信会社が、本人のかわりに株式や債券などに投資してくれるのです。
投信会社で働いている人々は日々、さまざまな業務に追われています。彼らの仕事はおおまかにみて、「アセットマネジメント業務」と「ファンドマネジメント業務」の2つに分けられます。
「アセットマネジメント業務」とは、金融機関が顧客から預かった資金をどのように運用するかに関わる仕事です。株式や債券などさまざまな選択肢がある中で何に投資するのか、投資するならどの銘柄にするか、資産全体でみてリスク水準をどのようにコントロールするか……など。投信会社にとって腕の見せ所であり、ライバル社としのぎを削る主戦場とも言える分野です。
これに対し、「ファンドマネジメント業務」は、投信を運用する上で必要となる「裏方」的な分野です。ミドルバックオフィス業務、と呼ばれることもあります。
たとえば代表的な業務として、投信の計理(投資信託の会計処理)が挙げられます。 投信(ここでは一般的な公募投信を想定)は日々、その投信の価値である「基準価額」を算定して公表する必要があります。基準価額は投資している株式や債券などの価格に左右され、計算は簡単ではありません。
その投信に投資している人たちの収益や損失に直接結びつく数値なので、「絶対に間違えてはいけない」というプレッシャーの下で毎日、計算作業に当たっています。

計理に間違いのないよう、投信会社は通常、担当部門に相当の人数を配置して体制を整備し、多額のコストを支払っています。この他、投信運用に関わるコンプライアンスの分野(インサイダー取引や個人情報保護に関する内規の整備など)も、このファンドマネジメント業務に含まれています。
今回創設された新受託業は、投信会社の内側で発生する大量の業務のうち、ファンドマネジメント業務にあたる経理やコンプライアンス分野の仕事を代わりに引き受けて、その対価を受け取るビジネス形態です。
新制度では、金融庁に任意登録した受託業者に委託することで、国内で投資運用業を手掛けるために必要な要件(人的構成など)の一部が緩和されるといったメリットがあります。 【次ページ】「資産運用立国」と新受託業の関係
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