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- 2020/08/17 掲載
日銀など識者が激論、「日本版CBDC」が企業や消費者にもたらすインパクトとは
CBDCだけを追うのでは不十分、デジタル通貨のトレンドを整理
議論を前に、麗澤大学 教授で『アフター・ビットコインアフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(新潮社)の著者でもある中島氏は、デジタル通貨やCBDCをめぐるトレンドを整理した。「サトシ・ナカモトが暗号資産(仮想通貨)の一種であるビットコインを作り、その後さまざまなアルトコイン(ビットコインの代替コイン)が出てきて、これは非常に価格が乱高下して使いにくいということで、安定した価格を実現するように設計されたステーブルコインが出てきた。しかし、ステーブルコインは市場ではなく、ボラティリティや金融機関への信用で運用されている部分があり、問題視されていました。そこで出てきたのが、デジタル通貨です」(中島氏)
デジタル通貨に関しては、現状3つのプレイヤーに大別されるという。
「1つはフェイスブックのリブラ。企業がデジタル通貨を発行しようという動きです。2つ目は、銀行が決済用の通貨を発行しようという動きがあります。複数の国の貨幣を背景にした独自の暗号資産(USC)やJPモルガンのJPMコインなどのことです。3つ目は、中央銀行のCBDCです。実は、3つのプレイヤーが同時にデジタル通貨を出そうと動いているという状況です」(中島氏)
中島氏は、「面白いことに、3つのプレイヤーが皆、『裏付け資産を100%持ちます』と主張しています。それによって法定通貨できっかり1対1でペッグ(固定相場で対応)すると口をそろえているのです」と指摘する。
「リブラは自分たち(リブラ)の話だけをして、CBDCの話題の際はリブラの話は出てこないことが多いのですが、実は三つ巴の状態です。だから、中央銀行が乗り遅れるとリブラが出てきたり、民間銀行のコインが出てきたりするという状況にあるのです。これは十分認識しておく必要があります」(中島氏)
CBDCを出すことを目的とした議論があるが
議論を前に日本銀行 FinTechセンター長 副島 豊氏はイベントでの発言について、「個人的な意見である」と前置きした上で、「CBDCを出すこと自体を目的とした議論があるが、本来の目的は、よい決済サービスや金融サービスを生み出し、実体経済の成長につなげることだ」と強調した。そしてそれを大前提に、CBDCをはじめ中央銀行が提供するマネーシステムがどうあるべきか検討すべきとした。
「国際社会に乗り遅れる」とか、「三つ巴の状態にある」など、“急ぎたくなる状況”があるとはいえ、手段が目的化する現象はこれまでもさまざまな場面で起こり、不幸な結果をもたらしてきた。今回は、自らの事業や実務経験もとに、実際のユースケースを想定してCBDCがもたらす変化や価値を語る論客が集まった。
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