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  • 2020/08/17 掲載

日銀など識者が激論、「日本版CBDC」が企業や消費者にもたらすインパクトとは

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今や世界46カ国の中央銀行が発行を検討しているとされる中央銀行デジタル通貨(CBDC)。国内でも、今年7月に閣議決定した「骨太の方針2020」に盛り込まれるなど、政府や日銀の動きが加速し、注目されている。CBDCが普及することで、社会はどう変わるのか、企業や一般消費者にはどのようなメリットが考えられるのか。日本ブロックチェーン協会 福島 良典氏を進行役に、日本銀行 副島 豊氏、ソラミツ 宮沢和正氏、麗澤大学 経済学部教授 中島 真志氏、LayerX 中村 龍矢氏、日本日本ブロックチェーン協会代表 加納 裕三氏、元 スタートバーン でブロックチェーンビジネスに詳しい大野 紗和子氏が議論した。

フリーランスライター 酒井 真弓

フリーランスライター 酒井 真弓

ビジネス/エンタープライズIT領域のライター、広報、イベントコーディネーターとして活動するフリーランス。

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CBDCについてLayerXの福島 良典氏(中央)を進行役に、日本銀行 副島 豊氏(中段右)、麗澤大学 経済学部教授 中島 真志氏(上段右)、LayerX 中村 龍矢氏(上段中央)、ソラミツ 代表取締役社長 宮沢 和正氏(中段左)、日本ブロックチェーン協会 加納 裕三氏(下段左)、元スタートバーン 大野 紗和子氏(下段右)が議論した。
(出典:JBA)
※本記事は、日本ブロックチェーン協会(JBA)のCBDC分科会が2020年6月11日に主催したオンラインイベント「 日本版CBDCを考える 」の内容をもとに再構成したものです。


CBDCだけを追うのでは不十分、デジタル通貨のトレンドを整理

 議論を前に、麗澤大学 教授で『アフター・ビットコインアフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』(新潮社)の著者でもある中島氏は、デジタル通貨やCBDCをめぐるトレンドを整理した。

「サトシ・ナカモトが暗号資産(仮想通貨)の一種であるビットコインを作り、その後さまざまなアルトコイン(ビットコインの代替コイン)が出てきて、これは非常に価格が乱高下して使いにくいということで、安定した価格を実現するように設計されたステーブルコインが出てきた。しかし、ステーブルコインは市場ではなく、ボラティリティや金融機関への信用で運用されている部分があり、問題視されていました。そこで出てきたのが、デジタル通貨です」(中島氏)

 デジタル通貨に関しては、現状3つのプレイヤーに大別されるという。

「1つはフェイスブックのリブラ。企業がデジタル通貨を発行しようという動きです。2つ目は、銀行が決済用の通貨を発行しようという動きがあります。複数の国の貨幣を背景にした独自の暗号資産(USC)やJPモルガンのJPMコインなどのことです。3つ目は、中央銀行のCBDCです。実は、3つのプレイヤーが同時にデジタル通貨を出そうと動いているという状況です」(中島氏)

 中島氏は、「面白いことに、3つのプレイヤーが皆、『裏付け資産を100%持ちます』と主張しています。それによって法定通貨できっかり1対1でペッグ(固定相場で対応)すると口をそろえているのです」と指摘する。

「リブラは自分たち(リブラ)の話だけをして、CBDCの話題の際はリブラの話は出てこないことが多いのですが、実は三つ巴の状態です。だから、中央銀行が乗り遅れるとリブラが出てきたり、民間銀行のコインが出てきたりするという状況にあるのです。これは十分認識しておく必要があります」(中島氏)

CBDCを出すことを目的とした議論があるが

 議論を前に日本銀行 FinTechセンター長 副島 豊氏はイベントでの発言について、「個人的な意見である」と前置きした上で、「CBDCを出すこと自体を目的とした議論があるが、本来の目的は、よい決済サービスや金融サービスを生み出し、実体経済の成長につなげることだ」と強調した。

 そしてそれを大前提に、CBDCをはじめ中央銀行が提供するマネーシステムがどうあるべきか検討すべきとした。

 「国際社会に乗り遅れる」とか、「三つ巴の状態にある」など、“急ぎたくなる状況”があるとはいえ、手段が目的化する現象はこれまでもさまざまな場面で起こり、不幸な結果をもたらしてきた。今回は、自らの事業や実務経験もとに、実際のユースケースを想定してCBDCがもたらす変化や価値を語る論客が集まった。

【次ページ】CBDCの普及が一般企業にもたらすメリットとは

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