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  • 2020/09/02 掲載

“会えない”時代のイノベーション活動、コロナ禍でも「先進企業」と出会う方法とは

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日本では緊急事態宣言も解除され、経済も徐々に回り始めている。しかし、人と人との接触を避けることが望ましいとされ、ビジネスにおけるコミュニケーションの方法や質も変化した。スタートアップと金融機関においても新たな方式が用いられるようになった。この「ニューノーマル(新しい様式)」は、今後のフィンテック業界にどのような影響を及ぼすのか。Fintech協会の理事 Plug and Play Japan フィンテックディレクター 貴志 優紀氏に今後の展望を聞いた(インタビュー実施日 6月27日)。

執筆:フリーランスライター吉澤亨史、構成:編集部 山田竜司

執筆:フリーランスライター吉澤亨史、構成:編集部 山田竜司

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Plug and Play Japan
フィンテック、リテール ディレクター
Fintech協会 理事
貴志 優紀氏


コロナ禍で多くの金融機関が抱える共通の課題とは?

──コロナ禍の状況にある金融機関における共通の課題は何でしょうか。

貴志氏:共通の課題としては、スタートアップと金融機関が共同で事業を展開する際のスピード感ではないでしょうか。海外のスタートアップが海外の金融機関と組む場合と、同じスタートアップが日本に来て日本の金融機関と組む際のスピード感には違いがあるとよく言われます。この課題はコロナ禍の影響に関係なく、普遍的な課題である気がします。

 また、オープンイノベーションという文脈ではたとえば判子の問題など、リモートワークになったがゆえに働き方を改めないといけないといったことが課題として顕在化していると思います。

 さらに、スタートアップとの接点を持つ方法についても共通の課題になっていると思います。特に新規で会う場合は、スタートアップ側も大企業側も苦しんでいます。今まではイベントでピッチ(短いプレゼン)を聞いた後で、会話や名刺交換をするなど接点を作ること方法はたくさんありました。

 しかし最近ではオンラインでの一方通行のピッチが多く、「連絡はWebサイトから」となり、「ヒューマンインタラクション」がなくなっています。スタートアップとの接点をいかに増やすかは、よく耳にする課題ですし、実際に意見を求められることも増えました。

 私が在籍しているPlug and Playはイベントに注力しているのですが、「誰かと誰かをつなげる場をオンラインツールで再現する」という提案をすることが多いです。

 たとえば、三井住友銀行(SMBC)はオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」を、Web会議システム「Remo」を使ってオンラインで再現していました。

スタートアップと金融機関の出会いの場にも変化が

──スタートアップと会う、あるいは金融機関と引き合わせる方法について、もう少し詳しく教えてください。

貴志氏:米国の例をお話すると、シリコンバレーでは、2020年2月頃からすでにイベントやアクセラレータプログラムをすべてオンラインに移行しています。日本においても同様ですが、ポイントは今まで対面でしていたことをオンラインでもなるべく再現することです。

 具体的には、ZoomやRemoといったビデオ会議ツールを使うのですが、両者が顔合わせする仕組みを公式に作ったり、ファシリテーションなどを駆使してオープンなイベントで参加者同士がインタラクションできる施策を打ったりしています。

 正直なところ、まだどれが正解かは見えていません。規模やコンテキストに合わせてツールを使い分けている状況です。そこでスタートアップ側も大企業側も、「お互いに会えてうれしい」という世界観や場を作ることは非常に大事だと考えています。

 今はわれわれも完全にオンラインイベントを開催しています。スタートアップはテックリテラシーの高い方が多いので慣れていますが、やはり日本の金融機関の一部の方からは「対面でないと落ち着かない」などネガティブな声が聞こえてくることもあります。

 ただ今回、オンラインのイベントなどを開催してみて、大企業もオンラインならより多くの色々な人を巻き込めるというメリットがあると感じたところは多そうです。今までの対面でのミーティングの場合、双方が同じ時間帯に、同一の場所へ出向く必要がありました。そうすると移動時間もかかりますし、結果的に半日は拘束してしまうこともあります。

 一方、オンラインであれば、移動時間なく複数のミーティングに出席することが可能になります。また、より多くの部署を巻き込むこともできます。つまり、スタートアップをピンポイントに正しい事業部に紹介することも可能になるのです。オンラインでは、この柔軟性が非常に高まり、イノベーションのプロセスの加速を実現できるのです。


──オンラインでのさまざまな施策の手応えはいかがですか?

貴志氏:オンラインでやっていけそうという手応えは得られました。ただ、双方向での関係性は作りやすいのですが、「コミュニティ感を作る」ことは難しいと感じています。

 今後、大企業とスタートアップとの連携もオンラインとオフラインのハイブリッドな形になっていくでしょう。オンラインでできることはオンラインで済ますべきですが、4~5人でアイデアを出し合うなどの“創発”が必要な場合は、イノベーションの手法の意味でもオフラインの方がいいと考えているからです。

 一方、急な新型コロナ対応となったことで、リモートワークの環境が整っていない会社もあります。従業員に付与できるセキュアなPCが限られていて、輪番制で回しているという金融機関もあります。それに、自宅での環境も整えるのは難しい場合があります。インターネット回線などネットワークの問題もありますし、そもそもご家族がいる場合のリモートワークは難しいことも多いでしょう。

 さらに、たとえば「ZoomはOK/NG」など、会社によって利用できるシステムが異なることもあります。スピーカーやマイク、あるいはスクリーンなどの機器が必要になるケースも個人で用意しているケースが多いようです。これらはほかの業種の方と共通しそうですが、リモートワークのちょっとした「ペインポイント」です。

【次ページ】オンライン対面がもたらす数多くのメリット

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