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  • 2020/08/27

スマートコントラクトとは何か? その仕組みや事例、実装への課題を解説

ブロックチェーンに関するビジネスの話題で「スマートコントラクト」という言葉が頻出している。本稿では、あらゆる企業のビジネスを変革しうるスマートコントラクトについて、その意味や現状、事例、実装、今後の展望などについて解説しよう。

ブロックチェーンハブ Chief Operating Officer 増田 剛

ブロックチェーンハブ Chief Operating Officer 増田 剛

重電メーカー・戦略コンサルティング・メガバンクを経て、現職。ブロックチェーンの社会実装推進、およびブロックチェーンコミュニティの運営に携わる。他に、一般社団法人日本セキュリティトークン協会代表理事、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、大阪大学オープンイノベーション機構アドバイザー、日本ビジネスモデル学会執行役員、海外ブロックチェーンスタートアップのアドバイザーも務める。東京大学経済学部卒、英国ケンブリッジ大学経営学修士、英国オックスフォード大学フィンテックプログラム修了。日本証券アナリスト協会検定会員。

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スマートコントラクトとは何か
(Photo/Getty Images)

スマートコントラクトとは何か

 「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーンシステム上の概念であり、あらかじめ設定されたルールに従って、ブロックチェーン上のトランザクション(取引)、もしくはブロックチェーン外から取り込まれた情報をトリガーにして実行されるプログラムを指す。

 ここでの「スマート」とは「賢い」ではなく、「自動的に実行される」という意味で用いられている。一定のルールによって自動的に実行されるプログラムという考え方自体は、何ら新しいものではない。コンピューターサイエンティスト ニック・サボ(Nick Szabo)氏は1990年代にすでにスマートコントラクトという考え方を世に示している。

 彼はスマートコントラクトの一例として自動販売機を挙げた。購入者が欲しい商品を選択し、代金を投入するという、設定されたルールが満たされると、自動販売機がその商品を払い出すというプログラムが自動で実行されるというものだ。自動販売機はきわめて初歩的な例だが、デジタルに制御されるさまざまな情報や資産に関わるプログラム実行への適用可能性が、30年近く前に示唆されていたのだ。

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スマートコントラクトとは

 スマートコントラクトの成り立ちは、当然ながらブロックチェーンと切り離せない。

 その歴史を振り返ると、まずサトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)氏が2008年に発表したホワイトペーパー「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」によって(ビットコインの)ブロックチェーンが発表。その後、 ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が2013年に発表したホワイトペーパー「Ethereum: A Next Generation Smart Contract & Decentralized Application Platform」によってイーサリアムのブロックチェーンに実装可能なスマートコントラクトが世に広く提案された。

 以来、「スマートコントラクト」といえば、ブロックチェーンにおけるものという認識となりつつある。

スマートコントラクトのメリットとは

 では、ブロックチェーンにおけるスマートコントラクトには、どのようなメリットがあるのだろうか。

 まず、「信頼性」が挙げられる。従来、契約や取引は、信頼を提供する仲介者を介することで実行していたが、スマートコントラクトは第三者を介する必要がない。事前にルールが定められているので、所定の条件が満たされれば必ず自動的にプログラムが実行されるからだ。また、そもそもブロックチェーンはデータ改ざん耐性を有しており、高いセキュリティレベルが担保される。

 次に「透明性」だ。プログラムされたスマートコントラクトの内容や、それにより実行された取引の記録はブロックチェーン上で公開される。したがって、不正が行われた場合の検知可能性は高い。

 また「コスト削減」も期待される。従来、仲介者や信頼性を担保する第三者に支払っていた手数料は不要となる。同時に、一連の手続きに要する時間が短縮され、また仲介者に情報を抜かれることもなくなる。

 これらのメリットの多くはブロックチェーンの技術特性に根差しており、スマートコントラクトがブロックチェーン技術の可用性を高めた格好である。

 スマートコントラクトの活用例として「DAO」がある。これは、「Decentralized Autonomous Organization」の略称であり、自律分散型組織を指す。多くはパブリックブロックチェーン(特定の管理者が存在せず誰でも参加できる)上で構築され、人の意志ではなく、スマートコントラクトによって組織運営が実行されるものだ。

 このように書くと、経済的自由と個人的自由を重視する「リバタリアン」的な印象となるが、ビットコインを始めとするブロックチェーン技術の出自がそうした性質を有することと無関係ではない。ビットコインは「中央銀行の不要な分権的通貨を作りたい」「自分の資産をいつでも誰にもじゃまされずに送りたい」という思想のもとに作られたからだ。

 もちろん、スマートコントラクトは一定の中央集権性を保持するプライベートブロックチェーン(特定の管理者が存在し、許可された者のみが参加できる)上でも活用可能である。現実世界の契約や取引においては、錯誤や法規制などの影響により、契約の無効化や取引の巻き戻しが発生することは珍しくない。プライベートブロックチェーンにおいては、管理者の合意により無効化や巻き戻しが可能であり、現実解としては、少なくとも短期~中期的にはこちらのほうが主戦場とも考えられる。

 ただし、スマートコントラクトに過度な期待をするべきではない。米国の調査会社 ガートナーは、2020年7月に発表した「Hype Cycle for Legal and Compliance Technologies, 2020」の中で、リーガル・コンプライアンス分野におけるハイプサイクル分析(新技術の成熟/適用度などを黎明期→過度な期待のピーク期→幻滅期→啓蒙活動期→生産性の安定期にプロットする手法)を行っている。この分析の結果、スマートコントラクトはまさに「過度な期待」の頂点から滑り落ちる直前であるとされている。

 スマートコントラクトは多くを期待され、またそのように喧伝されたために、それがもたらすと期待されていることが本当に実現されるのかどうか、再確認する必要があるだろう。また、思わぬリスクが覆い隠されている可能性にも留意すべきである。

スマートコントラクトを用いた事例とは

 スマートコントラクトの利点を生かすべく、これまで多くのプロジェクトが立ち上げられた。ここでは、ブロックチェーンのイーサリアムネットワーク上でスマートコントラクトを活用したものについていくつか例に挙げる。

◆メーカー(Maker)
 MakerはDAIというステーブルコイン(法定通貨に対して価値を安定化させた暗号資産)を発行する自律分散組織(DAO)で、分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)の一種である。運営はガバナンストークン(分散型金融組織の運営の際、ユーザーをはじめとする関係者が投票するためのトークン)である MKRの保有者の投票によってなされる。

 ユーザーはETH(Ethereumネットワーク上で流通する暗号資産)などの暗号資産を担保に差し入れてDAIを引き出し、ほかのDeFiサービスなどに使用することができる。DAIの価値は、スマートコントラクトにより発行手数料などが変動し、1DAI=1USDになるようにコントロールされる。

 当初、担保にできるのはETHだけであったが、ETH総流通量においてMakerに担保としてロック(取引に利用されない)されているETHの割合が高まったことなどから、2019年11月以降、ETH以外を担保にできるように変更された。DeFiの多くはEthereumネットワーク上に構築されているが、その中でも最も利用されているサービスの1つである。

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DeFi上に担保として固定されている暗号資産金額と、その内Makerが占める割合
(出典:DeFi Pulse)

◆イーサリスク(Etherisc)
 Etheriscは保険業規制に対応した保険プラットフォームである。保険対象の発生情報を外部から取り込み、それをトリガーにしてスマートコントラクトが保険金の支払い可否の判定や支払いの実行を自動で行う。付保(保険契約)されたリスクは、保険向けのマーケットで再付保(再度保険契約を締結)されたり、トークン化されて投資家に販売されたりするというモデルだ。

 現在、航空機遅延保険のみが試験展開されており、保険商品自体はマルタ共和国で保険商品取り扱い免許を有する保険会社によって提供されている。ほかにもハリケーン被害保険、暗号資産ハッキング保険などが開発中とされている。

 2020年2月には、スマートコントラクトのトリガーとなる外部情報を分散的に提供する韓国のチェインリンク(Chainlink)との提携を発表し、保険金の支払い可否の妥当性を高めるPoC(概念実証)に取り組むことが報じられた。

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Etherisc上の保険商品
(出典:Etherisc)


◆クリプトキティーズ(CryptoKitties)
 CryptoKittiesは、ブロックチェーン上で発行された仮想猫を収集、育成、売買できるゲームである。仮想猫はそれぞれが固有であり、Ethereumネットワーク上でNFT(Non-Fungible Token、代替不可能性を有するトークン)として発行される。仮想猫同士を掛け合わせることで、スマートコントラクトに基づき新たな仮想猫が生み出される(バリエーションは40億種類以上とされる)。希少な属性を有する仮想猫は高値で売買されることもある。

 2017年に一部ブロックチェーンアーリーアダプター間でブームとなった際は、仮想猫の売買によるEthereumネットワークの遅延を引き起こしたり、最初に生み出された「Genesis(「起源」の意)」という仮想猫が約247ETH(当時のレートで約1300万円)で売買されたりした。現在は後発のブロックチェーンゲームに押されているが、ブロックチェーンゲームの先駆けとして知られている。

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筆者が行った収集・育成・売買の例
(出典:CryptoKitties)

◆オーガー(Augur)
 Augurは将来予測を対象とするブックメーカーのようなアプリで、Ethereumネットワーク上で構築された分散型アプリ(DApps:Decentralized Applications)としては初期のものだ。2015年に初めてICO(Initial Coin Offering:新規暗号資産の市場公開)を行い、約6億円を調達したことで当時話題となった。Vitalik Buterinからエンジェル投資を受けたことでも知られる。

 「トランプ大統領は2020年の米大統領選で再選されるか」「ビットコイン価格は2020年8~12月の間に2万ドルを超えるか」といった予測が当たるとスマートコントラクトによって賭け金が支払われるというものだ。2020年7月にはバージョン2をリリースしている。

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Augurのバージョン2
(出典:Augur)

【次ページ】スマートコントラクトを表で「分類」、実装への道を解説

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