• 2025/06/27 掲載

「V字回復」した島根銀行に何が起きた?SBIグループとの連携「Before/After」徹底解説

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島根銀行は「顧客中心主義」を掲げて、地域貢献を目的としてさまざまな施策を積極的に打ち出している銀行である。2025年2月には、スマートフォン支店の普通預金金利を、国内金融機関の最高水準の0.5%に引き上げて話題となった。2019年にSBIホールディングスと資本業務提携を結んでから、預金額や利益は大きく向上している。そんな島根銀行の戦略と、直近の実績や目標について、同スマートフォン支店の支店長である野中駿平氏と総合企画グループ副長の三成直紀氏に話を聞いた。
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戦略ドメイン:財務の健全化<KGI>
(後ほど詳しく解説します)

2022年4月に掲げた「中期経営計画」の実績は?

 島根銀行は、島根県を拠点とする第二地方銀行で、島根県内に24店舗、鳥取県内に9店舗、そしてスマートフォン支店の計34店舗を展開している。2022年4月から2025年3月までの3年間を計画期間とする「中期経営計画」が終了し、新たに、2025年4月から2028年3月までの3年間を対象とする「新中期経営計画」が、2025年5月13日に発表された。

 この2つの経営計画に共通しているのは、山陰地方の活性化を大きな目標として掲げていることである。山陰地方の経済の現状について、島根銀行スマートフォン支店の支店長の野中駿平氏は、こう語る。

「山陰地方は、他の地域と比較しても、少子高齢化と人口減少が著しく進行しているのが現状です。そうした背景があるため、経済の規模も縮小傾向にあります。また、コロナ禍による経済の縮小や消費の低迷から完全に回復するには、まだ時間がかかるでしょう。我々は島根と鳥取を拠点としており、地元の事業者さまと密接な協力関係を築いているため、強い危機感を覚えています。そして、積極的に支援を行っていく必要があると考えています」(野中氏)

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SBI未来共創プロジェクト推進室
スマートフォン支店 支店長
野中 駿平 氏
 島根銀行が、2022年4月から2025年3月までの3年間を計画期間とする「中期経営計画」を策定した背景には、地元経済の逼迫した状況があったのだ。2022年に島根銀行が掲げたキャッチフレーズは「夢への架け橋~オープンイノベーションバンクしまぎん~」だった。その基盤となる考え方は「顧客中心主義」だ。

「我々は前中期経営計画の柱に顧客中心主義を位置付けています。顧客中心主義とは、お客さまの夢や課題を共有し、夢の実現や課題解決をすることによって、お客さまと我々の共通価値の向上を実現することです。顧客中心主義を徹底することで、地域に選ばれる銀行、ファーストコールバンクになることを目指しています」(野中氏)

 顧客中心主義に基づいた営業活動を行うことと、収益を向上することとを両立することが求められる。前中期経営計画で設定された数値目標は以下だった。

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新中期経営計画最終年度の計数目標
(出典:島根銀行)

「2025年3月期のコア業務純益は14億円(計数目標は10億円)、当期純利益は6億円(計数目標は5億円)で、いずれも計数目標として掲げた数字を達成しています。自己資本比率は7.5%となっており、目標としていたKGIは未達ですが、全体としてはかなり順調です。我々は2019年からSBIグループと業務提携しており、丸5年経過したところです。その2019年の時点と比べると、預金に関しては1,000億円以上伸ばし、コア業務純益も11億円以上、伸ばしています」(野中氏)

SBIグループとの連携が島根銀行の業務にもたらした効果とは

 地方の事業者のパートナーとして、地域に密着した活動を行い、地域ブランド力向上や地域活性化支援の強化を通じて、信用関係を構築してきたのだ。下の図は、「新中期計画の全体像」のイメージを示したものである。

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前中期経営計画全体像のイメージ図
(出典:島根銀行)

 前中期計画で掲げた計数目標を収益性の項目で達成することができた要因ついて、総合企画グループ副長の三成直紀氏は、以下のように説明する。

「顧客中心主義を実現するためには、“お願いセールス”のような営業活動ではなく、お客さまのニーズを理解して応えることが必要です。そのためには、単なる御用聞きではなく、お客さまのためになることを真摯に考え、提案していかなければなりません。

 SBIグループとの提携前は、提案内容や提供できるリソースが限られていたため、幅広いサービスの提供が難しい状況でした。しかし提携後は、より幅広い提案が可能となり、お客さまにもプラスになっています」(三成氏)

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総合企画グループ副長
三成 直紀 氏
 つまり、業績が好調となった要因として、中期経営計画として明確に目指すべきビジョンと目標とする数値を設定したことと、SBIグループと資本業務提携をしたことの2つが挙げられるだろう。特に後者が大きな要因である。

「SBIグループとの資本業務提携の効果はかなり大きかったと認識しています。SBIグループとは、各種領域で連携しており、地域金融の業務へのノウハウやリソースの提供において、さまざまなサポートをしていただきました。また、2022 年9月26日に新設したスマートフォン支店のインフラであるアプリ基盤の整備や各種サービスの提供も、SBIグループの協力により、実現したものです」(野中氏)

 スマートフォン支店では、ネット完結型のがん保険・自動車保険を提供している。このサービスも、SBI損保と提携することによって実現した。投資関連での業務強化においても、SBIグループの果たした役割が大きかったと三成氏は語る。

 SBIグループとの連携は、ノウハウやリソースの提供だけではない。人的交流も活発に行っている。

「当行の行員は、投資信託や運用商品を提供するSBIアセットマネジメントに出向し、投資信託、株式、債券、外国為替、REITなどの運用サービスのノウハウを学んでいます。また、当行の保有する有価証券の運用サポートもしていただいています。提携後には、SBIマネープラザの拠点を島根に置いていただき、我々のリテールのお客さまにも、一部資産運用をお願いしています」(三成氏) 【次ページ】スマートフォン支店で高金利を設定できたのは徹底的な…
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