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- 2025/06/30 掲載
ChatGPTが「崩壊寸前の医療現場」を激変させる?「とりあえず病院」が無くなる新常識
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
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ChatGPTで「セルフトリアージ」を行った
先日、原稿を書きながら果物を食べるという行儀の悪いことをしていたら、注意が散漫になり、むせて、果物のかけらが鼻に入ってしまった。大慌てで洗浄してかけらを出し、その後、痛みもないので大丈夫と思ったが、心配は残る。そこでChatGPTに尋ねたところ、「食べ物が誤って鼻に入るのはよくあること。呼吸が正常で痛くなく、気分が悪くなければたぶん大丈夫」との返事だった。
ChatGPTに、健康上の問題に関する問い合わせをすることがたまにあるのだが、「よくあること」という返事は初めてだった。これを見て一安心。ありがたいことに、ChatGPTの言う通り、何事もなく済んだ。
以上で述べたプロセスは、「セルフトリアージ」と呼ばれる。これは、現時点における自分の健康状態を把握し、症状の緊急性や受診の必要性を自ら判断する行為だ。「今すぐ医療機関を受診すべきか」「様子を見るべきか」「どの診療科が適切か」などを判断する。
検索エンジンでは「セルフトリアージが困難」
健康に関する一般的な知識は、新聞、雑誌、書籍、テレビなどのメディアで広く提供されている。これらは、一般的な医学知識の取得には有益だが、「今この瞬間で、自分が直面している健康上の問題に関する知識」を獲得するには、役立たないことが多い。これまで、このような判断は、検索エンジンに症状を入力し、得られる情報を元にして行われることが多かった。これによって、インターネット以前の時代に比べると、我々が得られる医学上の知識は大きく拡大した。それまでは、『家庭の医学』といった書籍が、普通の家庭が得られる唯一の医学情報源だったのである。
しかしそうであっても、検索エンジンでは、自分が直面する問題に関する的確な判断情報を得られるとは限らない。
まず、記事は一般的な読者対象を想定して書かれており、個別具体的なアドバイスは得られない。また、検索結果の中には広告目的で作成されたページもあり、信頼性に乏しい情報が混在している場合もある。専門的な医学論文が示されても、一般人には難解で実際の判断には使いにくい。
しかしChatGPTのような生成AIの登場によって、個人の具体的な状況に基づいた、よりパーソナライズされたセルフトリアージが可能になりつつある。 【次ページ】セルフトリアージでChatGPTができる「3つのこと」
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