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  • 2020/11/19

非金融領域のブロックチェーン活用法とは? 3つの事例に見る「メリットと課題」

ブロックチェーン技術は「フィンテック」の中核技術の1つに位置づけられてはいるが、非金融分野でもその活用が進んでいる。日本国内でもさまざまな領域でブロックチェーン技術を活用するプロジェクトが立ち上がり、実証段階から実用へ向けた歩みを進めている。本稿では、非金融分野での活用事例として豊田通商システムズ、住友生命保険、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングの取り組みを紹介。実用フェーズにおけるブロックチェーン活用について、担当者が実感した具体的なメリットとデメリットを考察する。

三村 ゆにこ

三村 ゆにこ

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※ 本記事は、金融庁と日本経済新聞社が主催となり2020年8月24、25日に開催された「BG2C_FINSUMBB(ブロックチェーン・サミット)」におけるパネル討論「ブロックチェーン Fintechの先」の内容を再構成したものです。


豊田通商システムズが実感した「ブロックチェーンの課題」

 トヨタグループを中心として企業向けに各種ITサービスを提供する豊田通商システムズ。同社では、ブロックチェーンを活用した「電子商取引基盤」サービスの開発を進めている。その第一弾として「電子契約サービス」を2021年1月に提供開始する予定だ。

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豊田通商システムズ
ブロックチェーンビジネス担当
主幹
纐纈 晃稔(こうけつ・あきのり)氏
 豊田通商システムズのブロックチェーンビジネス担当 主幹を務める纐纈 晃稔 氏は「商取引のDX化を実現する基盤技術として、ブロックチェーンに注目してたが、調査・検討を進める中で、ブロックチェーンの活用メリットと課題が浮き彫りになった」と説明する。

 纐纈氏は、エンタープライズ領域でブロックチェーンを活用する一般的なメリットとして「高セキュリティ」「高可用性」「低運用コスト」「スマートコントラクトによる簡易な自動化」の4点を挙げた。しかし、実際に活用する場合には「セキュリティ」「可用性」「運用コスト」については、改善しなければならない点があるとの見解を示す。

 同氏によると「セキュリティ関連ではデータブロックのハッシュ連結により改ざん不可能ではあるが、ブロックが共有されるために暗号化されていても秘匿性が低い」という。また、複数ノードによって実現される高可用性についても「実際は管理サーバへの高負荷やノード数によってはシステム停止リスクがあり、可用性を確保しづらい部分もある」と指摘する。

 さらに、運用コスト面については「ブロックチェーンを活用したITインフラの構築では、想定以上に多大なコストがかかる。また、ブロックチェーンや分散システムに精通する技術者が少ないため、そうした技術者の確保にもコストがかさむ」(同氏)

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一般的なブロックチェーン活用の課題。たとえば、各社にノードがある場合、A社とB社間の取引のデータブロックが関係のないC社にまで共有されるなど、秘匿性が低いという
(出典:日経 XSUM Channel

ブロックチェーンの「デメリット」を解決する基盤技術とは

 豊田通商システムズでは、複数のブロックチェーン技術を試行錯誤した後、米国のR3が提供するブロックチェーン基盤「Corda(コルダ)」を採用した。Cordaとは、世界で300社を超える企業連合「R3コンソーシアム」が活用する独自のブロックチェーン基盤。

 Cordaは、他のブロックチェーンとは異なり、取引データを全ノードで共有せずに必要なノード間でのみ共有する。そのため、データの秘匿性を確保できる。また、インフラ構築コストについては「一般の中央管理システムと比較するとやや高額になる点は否めないものの、一般的なブロックチェーンよりずっと現実的な価格で導入可能だ」(纐纈氏)。さらにJava言語を簡素化した「Kotlin」を標準開発言語に採用しており開発技術者の確保にかかるコストも抑えられるという。

 同社は、「Microsoft Azure」上でCordaを基盤とする電子商取引基盤を構築している。電子契約サービスを皮切りとして、「見積・請求書発行」「受発注」「精算」などサービスの拡充を計画している。電子契約サービスから始める理由について、纐纈氏は「印紙や郵送代が不要とコスト減につながる」「契約締結の高速化」「新型コロナウイルスを考慮して、リモートワークの推進にもつながる」点などを挙げ、短期的で目に見える形で効果を示せる点を説明した。

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ブロックチェーンを活用した豊田通商システムズの「電子商取引基盤」イメージ図
(出典:日経 XSUM Channel

ブロックチェーン活用の最大のネックをどう乗り越えるか?

 纐纈氏は「この電子商取引基盤上でさまざまな商取引を実施することで、サプライチェーンのトレーサビリティシステムを実現できる」との構想を明かした。たとえば、セキュリティ上、ノードを預けたくないという場合でも、自社のファイアウォール内でノードを立ち上げることでノード間通信を可能にする。また、重要な情報や個人情報を自国にデータを保持して持ち出さない「データ規制国」との取引においても、Cordaを立ち上げることで各国のデータ規制への対応が実現できるという。

 その上で、同氏はブロックチェーン導入の大きなメリット「構築後の機能拡張性の高さ」を挙げる。ただ、ブロックチェーン活用の最大のネックとして「インフラ構築の初期投資コストがかさむ」点を指摘し、「経営層を含めて、初期構築コストへの理解がないとプロジェクトは進まないということを実感している」と述べた。

ブロックチェーン技術を活用した給付金自動請求の実証実験

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住友生命保険
デジタルイノベーション推進室
奥山 裕司 氏
 次に紹介するのが、住友生命保険の実証実験だ。同社では、2020年2~3月にかけて、ブロックチェーン技術を活用した給付金自動請求の実証実験を実施した。複数の医療機関と生命保険会社間をブロックチェーンでつなぎ、給付金請求を自動化するという取り組みだ。システムベンダーであるTIS、北原国際病院(東京都八王子市)などのKNIグループが実験に協力した。

 実証実験を実施した背景について、住友生命保険 デジタルイノベーション推進室の奥山 裕司 氏は「生命保険の請求手続きは、原則として治療を受けた患者自身が請求書類や診断書を取り寄せる必要があり時間や手間がかかる現状がある」と説明した。

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従来型の給付金請求との比較
(出典:日経 XSUM Channel

 奥山氏によると「従来型の請求では、病院と請求者、保険会社の間で個別に煩雑なやり取りが必要」だという。その上で、今回の実証実験では、ブロックチェーン上に登録する給付金制空の事前同意書や医療情報などを共有する仕組みを構築し、複数の医療機関や保険会社間で情報を共有。請求時に医療情報を自動的に連動して支払処理までを実行することを可能にしている。

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実証実験における情報共有の連携イメージ
(出典:日経 XSUM Channel

 今回の実証実験でブロックチェーン技術を採用した点について、住友生命保険 デジタルイノベーション推進室 阿部 智英 氏は「登場人物が複数存在する状況に対応する」点を挙げた。

 同氏によると「他業種や同業他社との取引が多数入り乱れる中で、管理者あるいは第三者にデータを預けて安全にデータを交換する必要がある。そうした仕組み自体は、API連携でも実現可能だが、手間とコストがかさむ」という。続けて「その点、ブロックチェーンであれば、このような状況下でも比較的容易に対応できるのではないかと考えた」と語る。さらに「耐改ざん性と二重取引を防止するためには、相互に検証したり、移転したり検証が可能になる」点などを考慮したという。

 住友生命保険では、ブロックチェーン基盤技術としてCordaを採用した。選定理由について、阿部氏は「非常にプライベートな情報である医療情報を扱うためには、限定的なデータ共有や開示が可能である必要がある。パブリックブロックチェーンでは全ノードにデータを流したり、ブロック単位での検証が必要となるが、Cordaはこうした問題を解決してくれる」と説明した。

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住友生命保険がCordaを選んだ理由
(出典:日経 XSUM Channel

【次ページ】実証実験で得られた、ブロックチェーン活用に関する「3つの気づき」

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