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  • 2021/07/21 掲載

コロナ禍で続出した「社内失業」、復帰のチャンスはあるのか?

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「社内失業」という言葉が目立ってきた。背景にはコロナの影響もありそうだ。景気が低迷する中で、社員でありながらやるべき仕事がなく、企業のお荷物となる社内失業者は、どのようにして生まれるのか。どうすればそれを防ぎ、活躍の最前線に復帰させられるのか。多数のシニアを最前線に再就職させた「復帰支援」のプロが社内失業対策を説く。
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コロナ禍で失業者も増えたが、「社内失業」も増えた
(Photo/Getty Images)

コロナで社内失業が浮き彫りに?

 コロナ禍で失業が増えていることは繰り返し報道されている。2019年は2.3%程度で推移してきた完全失業率は、2020年3月頃から上がり始め、8月には3%に達し、同じように完全失業者数も8月には200万人を超えた。

 今なお、失業率・失業者数ともにコロナ前の水準には戻らないが、本当の失業だけでなく、コロナはこんなものまで浮き彫りにしているという。それが「社内失業」だ。

 社内失業とは、正社員として会社に雇用されているものの、仕事がない状態を指す。会社は解雇したいが簡単に解雇できず、その寸前の状態という場合も多いだろう。

 古くは「窓際族」、最近では「社内ニート」「妖精さん」などという呼び方もあるが、こうした実際には仕事がない・働いていない社員が、コロナによってクローズアップされている。

 もともとコロナ以前から、70歳までの就業機会確保など、シニアの雇用延長の話題が出る度に、50代・60代、場合によっては40代も含めて、実際の戦力になっていない中高年層の存在が取り沙汰されていた。

 こうしたもともと社内失業者だった、あるいは社内失業者に近かった方の多くは、コロナでテレワークが一般的になったことにより、その存在を浮き彫りにされてしまったのだ。

 これまでのオフィスワークで存在していた管理業務やコミュニケーション、雑用などの一部は、テレワークによって無くなったり、優先度が下がったりした。テレワークは「本当に必要な仕事」と「それほど重要ではない仕事」や「仕事のふり」を、明確に色分けしたと言える。

 このように説明すると、テレワークが社内失業の「踏み絵」のように作用した印象が強いが、一部にはテレワークによって生み出されてしまった社内失業者もいる。

 たとえば、ある現場監督(施工管理技士)の方は、現場監督として転職した建設会社が出社する人員を削減しようとしたことで転職後の研修や打ち合わせが行えず、求人内容とはまったく異なる事務仕事をずっと続けさせられ、最終的に辞めてしまったという。誰とも会わず、一人パソコンに向かって成果も問われない不慣れな仕事を続ける日々は、かなりの苦痛だったそうだ。

 一方で、テレワークをやってみたものの、「かえって効率が下がった」という声も多く、中には仕事に集中できない、つい、家事や趣味に気を取られてしまう、といった人も少なくなさそうだ。言い方は悪いがサボっている人もいるかもしれない。

 そうした「テレワークでサボる人」は、もともと半分社内失業状態にあったものが、テレワークが引き金になっただけと言えるかもしれないが、そんなことをしていては、いずれ本当に仕事も減り、本物の失業へと向かっていくことだろう。

 いずれにせよ、コロナとテレワークによって社内失業へと向かうさまざまなパターンがあり、正確な数は分からないものの、社内失業は多くの働き手にとって身近な問題となった。

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リモートワーク主体になって「社内失業」が浮き彫りになったケースもある
(Photo/Getty Images)

社内失業とは既存社員のミスマッチである

 さて、では社内失業とはなんだろうか。どうすれば社内失業を防止し、改善することができるのだろうか。

 社内失業の原因や背景については、正規雇用者を解雇しにくい日本の労働市場形態が根幹にあるとする声は多い。

 しかし、窓際族などとは違ったニュアンスであるものの、社内失業に多少近い部分を持った「ボアアウト」(Burnout=退屈症候群)という言葉が近年、ドイツなどを中心に目立ち始めている。これは、仕事が自分の力量に合っておらず、過小な仕事しか与えられずに退屈さを感じているという労働者の状況である。

 意味するところが完全に一致するものではないが、日本だけでなく外国でも近い現象があることが分かる。また、米国などでは能力が見合わない社員はすぐに解雇されるため、社内失業という現象自体はないものの、能力を発揮できない人材や働くことに積極的でない人材がいないわけではない。

 そこで改めてこの社内失業という現象を考えてみるが、よりシンプルに原因を言い表すとするならば、それは「ミスマッチ」だと言えるだろう。

 いきなり社員がミスマッチになったわけではない。応募選考時ならば自社が求める能力や姿勢、人柄などにミスマッチな人材は落選するだけだが、社内の人材も徐々に会社が求めるものと本人が離れていく場合がある。その結果の一つの形が社内失業だと筆者は考えている。

 日本の雇用は「メンバーシップ型」だと言われることがあるが、社員は一つの役割・業務内容で雇用されるのではなく、さまざまな配置転換があることが多い。そのため、入社後も仕事内容が変化する。会社の成長によっても社員に求めるものは変わるかもしれない。また、本人のプライベートや職場の人間関係、立場などによっても重視するものや思いは変化する。

 結果的に、応募選考時に会社にマッチしていた人材であっても、それ以降ずっとマッチし続けるわけではない。もちろん、それが普通であり、多くの場合、会社と社員双方が少しずつ求めるものが違っただけで、互いに納得のできる範囲ならば、雇用関係は継続されるし、また再びマッチする状況に戻る場合も、長い雇用期間の中ではあるだろう。

【次ページ】社内失業は早期発見が難しく手遅れに

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