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  • 2022/02/01 掲載

SPAC(特別買収目的会社)とは何か? 上場の仕組みや「急減速」の理由、事例を解説

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2021年は世界的に新規株式公開(IPO)を実施した企業が多く、米国でのIPOは前年比2倍、初の1000社超となった。その大きな要因の1つがSPAC(スパック:特別買収目的会社)の存在だ。本稿ではSPACの基本的な仕組みを解説しつつ、代表的なSPAC上場企業、そしてその後「急減速」した理由などを紹介する。

執筆:前田 健二

執筆:前田 健二

大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスでビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップ、経営に携わり、2001年、経営コンサルタントとして独立。事業再生、アメリカ市場進出、コンテンツマーケティングなどを中心に指導を行っている。アメリカでベストセラーとなった名著『インバウンド マーケティング』(すばる舎リンケージ)の翻訳者。明治学院大学経済学部経営学科博士課程修了、経営学修士。

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SPACとは何か?
(Photo/Getty Images)

SPACとは?

 2021年は米国の経済メディアだけでなく、日本のメディアでもSPACに関するニュースが報道される機会が増えた。改めて、SPACの仕組みや実際の手続きなどについて解説する。

・SPACとは何か? その歴史や基本的な意味
 SPACとは、「Special Purpose Acquisition Company」の略称で、直訳すると「特別買収目的会社」となる。つまり、最初から他企業を買収することを目的に設立された会社のことだ。SPACは、一般に「ブランク・チェック・カンパニー(白紙小切手企業)」とも称されるが、ブランク・チェック・カンパニーそのものは1980年代から存在していたとされる。

 しかし、ブランク・チェック・カンパニーを使った詐欺事件などが頻発し、1992年に一時規制の対象となった。今日までに、SEC(米証券取引委員会)がSPACに関するルールを厳格に定め、透明性や公平性などを確保したことなどにより、数年前から改めて注目を集めており、2020~2021年で一気に利用企業数が増加した。

・SPACの仕組み
 SPACの仕組みは、非常にシンプルだ。まずは、「スポンサー」と呼ばれる投資家がSPACを設立する。スポンサーは、特定業界における知見や経験のある人たちが多いことが一般的だ。次に、スポンサーはSPACを株式市場に上場(IPO)し、一般の投資家から資金を集める。

 集めた資金は、銀行の信託預金口座へ入金および管理され、上場後、SPACは直ちに買収する「ターゲット企業」の探索を開始する。ターゲット企業のほとんどが、相応の「時価総額」を有する未上場の企業となる。

 ターゲット企業が決まり、買収のディールが決まると晴れて合併成立。合併後は、合併企業は社名をターゲット企業の社名に変更し、ターゲット企業の事業を継続して行う。以上がSPACの仕組みだ。

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米国のSPACの概要
(出典:内閣官房 成長戦略会議 第8回)

・SPACのメリット、人気の理由は?
 SPACは、まず買収されるターゲット企業に大きなメリットをもたらす。米国の株式市場においても、株式を上場するには大量の事務作業やIR活動などの膨大な手続きが必要だ。

 一方、SPACを通じて事実上株式を「上場」すれば、そうした手続きを回避できるため、コストを抑えられる。SPACが「裏口上場」と揶揄される理由だ。

 また、SPACは投資家にとってもメリットがある。プライベートエクイティ投資の場合、投資実行から回収までに5~10年程度かかるのが一般的だ。しかし、SPACへの投資であればそれよりも早い回収が期待できる。さらに、投資資金の信託といった投資家保護のルールも制定されていて、一定の安全性を確保することも可能だ。

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IPOからクロージングまでのライフサイクル
(出典:日本取引所グループ「SPAC制度の在り方等に関する研究会」報道発表)

SPACは増えているのか? IPO件数と資金調達額の推移

 ブームとなっていたSPACだが、実際にどのくらい増えていたのだろうか。

 ルネッサンス・キャピタルの調査によると、SPACのIPO件数は2013年にはわずか10件だったのが、2020年に248件、2021年は604件に倍増していた。さらに資金調達額は、2013年の約14億米ドルから2020年の約834億米ドル、2021年には約1,435億米ドルに増加している。

 2021年3月まで米国の株式市場は、まさにSPACブームと呼ぶべき状態だった。

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SPAC IPO市場の推移
(出典:日本取引所グループ「SPAC制度の在り方等に関する研究会」報道発表)

 現在SPACには「向かい風」が吹いている状態だ。詳細は後述するが、たとえばEYは以下のように解説している。
SPACが増えすぎたことから入札競争の激化、IPO取引実績の鈍化、取引流動性の低下が起こっています。また、株式の募集・売出の際に、限定された投資家に募集・売出を行う私募の方式であるパイプ(PIPE)に対する規制当局や米国議会の監視が高まっている中で、PIPE市場の勢いが弱まっています。株式上場のオプションとして、SPACは引き続き魅力的な選択肢であることが予想されますが、SPACスポンサーにとってディールを締結するのが、今まで以上に困難になる可能性があります(2021年10月、EY Japan 報道発表)。

SPAC上場した有名企業

 ここでは、SPACにより「上場」を果たした企業をいくつかご紹介しよう。

・ドラフトキングス
 2012年設立のドラフトキングス(Draft Kings)は、ボストンに拠点を置くスポーツベッティング(賭博)のプラットフォーム企業だ。MLBやNFL、NHLなどのプロスポーツチームに加え、NASCARレース、プロテニスなどのスポーツベッティングをオンラインで提供している。

 一方、ダイアモンド・イーグル・アクイジションは、2019年5月に設立されたSPACだ。同社は2020年4月にドラフトキングスを買収して同社と合併。合併企業の社名は、ドラフトキングスで、NASDAQにおいてのティッカーシンボルで取引されている。合併後の時価総額は、33億米ドル程度と見込まれている。

【次ページ】他のSPAC上場企業、SPACが抱える課題とは?

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