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  • 2021/09/07 掲載

MUFGのイノベーション企業代表が語る「経営論」、金融機関の特別視がダメな理由

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MUFGの デジタルR&DカンパニーJapan Digital Designの代表取締役CEO 河合 祐子氏に、銀行ビジネスとテクノロジーの関係を問う後編。河合氏が暗号資産の位置付けやこの先の可能性、銀行との関係について、そしてデジタルR&Dだという同社のビジネス戦略や、金融機関の経営に関する持論を語った。

聞き手:編集部 山田竜司、構成:吉田育代

聞き手:編集部 山田竜司、構成:吉田育代

photo
Japan Digital Design
代表取締役CEO
河合 祐子氏


暗号資産が新しいとはいえない理由

──ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産についてはどうご覧になりますか。貨幣価値をデジタルデータに載せることで、決済の仕方は変化するように見えます。

河合氏:私は暗号資産の動きは新しい概念だと思っていません。私が中央銀行のフィンテックセンター長をやっていた2017~2018年は、ビットコインが盛り上がった時期でした。その時一番聞かれたのは、「ビットコインが日本で通貨として使われるようになった場合、日本銀行はどうするのか」ということでした。

 まず答えていたのは、技術上の問題(マイニングや、決済スピード)で決済手段として利用されるのは非常に難しいという点です。その上で、もしもビットコイン的なものが国内のあらゆる決済で使われるようになった場合、つまり「中央銀行がコントロールできない通貨が国内で価値を持ち、使われる」際に何が起きるかということについては、歴史的にユースケースがあるという認識を説明していました。

 たとえば、ベトナムを例に考えてみましょう。ベトナムは、だいぶ自国通貨への切り替えが進んでいるとはいえ、流通通貨の少なからぬ量が米ドルなのですが、これは「中央銀行がコントロールできないものが決済に使われている」ということになります。また、家を買う際に「金(きん)」が決済単位になっていたりします。

 金は、誰かが作ったり、コントロールしたりするものではないけれども、価値として認められていて、買う人が多ければ値段が上がっていく。しかも、決済単位にも使われる例があります。米ドルは、米国の中央銀行が発行する通貨ですが、ベトナムからしてみれば、自国の中央銀行が発行量や金利をコントロールできるものではありません。

 ですから「自国の中央銀行が管理できない通貨(的なもの)が国内に流通したらどうなるか」という観点ではビットコインは別に新しくありません。金やドルで決済するのと経済的な意味はまったく変わらないと思います。前例があるので新しいことでも何でもない。なぜまったく新しいものだというのか本当に不思議なんですよね。

──スマートコントラクトと呼ばれるような契約のところも含めて、情報を一緒に流通でき、なおかつそれらを改ざんできないという点はいかがですか。

河合氏:お金の決済(PtoP決済)に決済以外の情報を組み合わせられるところは「格好いい」と思います。それぞれの機能でいえば、もうすでに実用化から何年も経っていますが、改ざんができないとか、共通台帳とかをまとめあげているところも素晴らしいUXです。また、イーサリアムでスマートコントラクトを金融取引に実装できるのであれば、さまざまなユースケースが広がる可能性があります。

弁護士と金融機関のカンファレンス参加で直感したSTOブーム

──DeFi(Decentralized Finance、分散型金融)についてお伺いします。現在のDeFiについて利用者はどう接していけばいいでしょう。

河合氏:何でも試してみればいいと思います。DeFiは確かに、自分でやろうとするとちょっとプログラムを書かなければいけないので難しいかもしれません。金融関係者なら、ビットコイン同様、DeFiに関しても、個人としての興味の先に金融機関の戦略があると考えればよいのではないでしょうか。


──なるほど。6月に、DeFiに対して10兆円集まったということですが、どうご覧になっていますか。

河合氏:面白いなと思っています。明らかに大きくなっていますよね。

 ビットコインが数年前に騒がれた頃、草コインといわれるものも含めて、1000以上のコインが出てきました。ICO(Initial Coin offering)と呼ばれていたコインの発行には、詐欺的案件も多数含まれているように見え、さすがにこれは難しいなと思いました。しかし、その後、有価証券に準ずる投資家保護が適用されるSTO(Security Token Offering)になって、状況は変わりました。

 この時期に、私にとっては劇的な体験がありました。コロナ禍でカンファレンスが軒並みオンラインシフトされたので、米国のトークン・カンファレンスに出てみたのですが、以前は技術の方々が多く話題も技術寄りだったものが、その時のカンファレンスは金融関係の弁護士と金融機関向けになり、実際に人が増えていたのです。

 まさにこの時「暗号資産に、既存の金融分野の人たちが参入してきた」と感じました。絶対に規模が大きくなると思い、「ちゃんと見ておかないとダメだね」と周りと意見交換したのを覚えています。プレイヤーが替われば、どんどんお金は集まってくるものなのです。

 暗号資産については、そのカンファレンスでも日本人の登壇者も多く、取引量も多い日本がこの領域で遅れているとは思っていないのですが、今後グローバルに「プレイヤーが替わる」中で日本の金融分野の人たちがどんな行動をとるのかには注目です。

【次ページ】デジタルR&D機能を提供するJDD

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