※本記事は、米国モーニングスター社の記事「
The Costs of Digitizing Education」をもとにFinTech Journal編集部が翻訳・再構成したものです。米国モーニングスターの独占的な権利に属しており、私的利用かつ非営利目的に限定します。また、米国モーニングスター及びその関連会社は、本翻訳記事の利用に関して一切の責任を負いません。
コロナ前から疑問視されてきた高等教育の価値
米国の高等教育システムに対しては、パンデミック以前から疑問の声が高まってきていた。その背景には、増加するコスト、役に立たない成果、キャリアの過程でより高い敏しょう性が求められるようになってきた人材市場の急速な変化などがある。大学教育の費用はここ40年間で劇的に増加し、多額の負債を抱えて卒業する大学生もおり、政治家や規制当局による精査の対象となっている。
ミレニアル世代は、歴史上最も教育を受けた世代であるにもかかわらず、家計の純資産はその前2世代に遅れを取っている。ミレニアル世代が職に就こうとしていた時期、あるいはキャリアの初期段階にあった2008~2009年に発生した金融危機とその後の景気後退という予期せぬ影響には多少の差異があると見られるものの、学生時代の負債の代償として持続する格差は、その報いが目の前にあることを示唆している。
ミレニアル世代の子供たちは、おおむね今後10年間で大学入学年齢に達する。多くの親は、4年制大学卒業で得られる学位の価値に懐疑的であり、高等教育分野に現在従事している者はその影響を痛感することになるだろう。
米国労働統計局によると、2019年には大学卒業者の給与の中央値が高校卒業者の値より約65%高くなっており、大学の学位には依然価値が認められる。しかし、経済シンクタンクのマンハッタン・インスティテュートの調査によると、すべての学位が平等なわけではなく、収入面では大学卒業者の下位4分の1と高校卒業者の上位4分の1が重なっている。
大学卒業学位は専門職の必須資格となっているが、経済的コストをもたらすスキル不足も表面化してきている。パンデミック発生以前は米国労働市場がひっぱくしていたため、雇用主は十分なスキルを備えた労働者を雇用することが難しかった。2020年初頭の全米商工会議所の調査によると、採用担当者の4人のうち3人が一般労働市場におけるスキル不足を認識しており、半数近くは募集職種のニーズを満たすには応募者のスキルが不十分であるとしている。
さらに、大学からキャリアへの移行のマネジメントを専門とする非営利組織のストラーダ・エデュケーション・ネットワークの調査によると、学士号取得者の40%以上が卒業時点で不完全雇用(学歴に見合った職に就けていない)状態だった。急上昇する高等教育コスト、大学卒業者と高校卒業者の間の所得格差はわずかであるケースが多いという事実、スキル不足、大学卒業者の不完全雇用は、従来の高等教育に対する代替モデルのための機が熟したことを示唆している。