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  • 2021/10/11

岸田総理へ提言、日本が「低賃金から脱却する」たった一つの方法

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

岸田自民党新総裁は、格差是正により中間層を復活させる「令和版所得倍増」を掲げた。日本国内では、大企業と零細企業の間で資本装備率に大きな差がある。これが日本の賃金が国際的に見て低い原因でもあり、国内賃金格差の原因でもある。しかし、資本装備率を平準化するためには膨大な投資が必要であり、不可能に近い。今回は、これを解決する方法について提言したい。

執筆:野口 悠紀雄

執筆:野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

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令和版所得倍増はデジタル化が必須である
(出典:アフロ)

所得倍増が実現できれば素晴らしいが・・・

 自民党新総裁に選出された岸田文雄氏は、総裁選で、格差是正により中間層を復活させる「令和版所得倍増」を掲げた。

 日本の賃金が国際的に見て低いことが問題とされている今、もし所得の「倍増」が文字通りに実現できるのであれば、素晴らしいことだ。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大によってこれまでも賃金が低かった部門が大きな痛手を受けている現状では、国内の格差是正や所得の再分配は、緊急の課題だ。

 しかし、問題は、具体的にどのような目的を設定し、どのような政策手段を採用するかである。

 まず、目的が実現可能か否かかが検討されなければならない。実現不可能な目的を掲げても、人々に空虚な期待を抱かせるだけの結果に終わる。

 必要なのは、実現可能な範囲内において何ができるかを探ることだ。そして、明確で定量的な目標を示し、それに至る経路を示すことだ。

 こうしたことを知るためには、日本の賃金が国際的に低い原因を知る必要がある。そして、国内で大きな所得格差が生じている理由を正確に把握しなければならない。

日本の賃金は先進国の6割から8割程度

 まず、国際比較で見て、日本の賃金が著しく低いことを確認しておこう。

 OECDがこれに関するデータを公表している(Dataset: Average annual wages)。これは、2020年基準の実質賃金を、2020年基準購買力平価でドルに換算した数字だ。したがって、2020年においては、各国の名目賃金を実際の為替レートで換算した値になっているはずだ。

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2020年基準の実質賃金を、2020年基準購買力平価でドルに換算した金額

 日本の値3万8,515ドルは、米国の6万9,392ドルの55.8%でしかない。 ヨーロッパの主要国を見ると、独国5万3,745ドル、英国4万7,147ドル、仏国4万5,581などとなっている。

 人口が少ない国を見ると、スイス6万4,824ドル、オランダ5万8,828ドル、ノルウェー5万5,780ドル、アイルランド4万9,474ドル、スウエーデン4万7,020ドルなどだ。

 大雑把にいえば、日本の水準は先進国の6割から8割程度ということになる。

 こうした現状を見ると、所得倍増によって先進国並みになりたいと考えるのは、日本人にとってごく自然な欲求だ。

 しかし、日本の実質成長率はせいぜい1%程度だから、このままでは、いまの3割増になるのに30年近くかかる。その間に、先進国の賃金水準はさらに高くなってしまうだろう。つまり、差はますます開いてしまう。

 賃金が高い先進国にキャッチアップするためには、成長率が先進国より高くなることがどうしても必要だ。

 それを実現するには何が必要かを、考える必要がある。

【次ページ】零細企業の生産性が低く、大きな賃金格差

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