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  • 2021/10/26

FATFによる暗号資産規制の「論点」とは? ビットコイン絶好調の今知るべきこと

米SEC(証券取引委員会)が10月15日、米国初のビットコイン先物ETFを承認した。この動きからビットコインは最高値を更新し、暗号資産市場が盛り上がっているが、その一方で規制も強化されている。その一例が8月30日に正式公表されたFATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)による第四次対日相互審査である。FATFは、暗号資産と交換業者の事業者をどのようにとらえているのか。昨今のFATFを取り巻く実情とFATFの見地から暗号資産の関連ビジネスの現在地を概観する。

Ginco代表取締役 森川 夢佑斗

Ginco代表取締役 森川 夢佑斗

京都大学在学中にブロックチェーン事業に着手し、2017年12月に株式会社Gincoを創業。2018年に暗号資産ウォレットアプリを提供開始。2019年には暗号資産取引所向けの業務用システム「Ginco Enterprise Wallet」を開発。国内有数のブロックチェーンテック企業として、暗号資産やデジタル証券、NFTの活用に取り組む事業者を支援する。2019年には、ブロックチェーン業界を代表する起業家としてForbes Next Under30、BUSINESS INSIDER「BEYOND MILLENNIALS」などに選出。『ブロックチェーン入門』『ブロックチェーンの描く未来』(KKベストセラーズ)、『未来IT図解 これからのブロックチェーンビジネス』『超入門ブロックチェーン』(MdNコーポレーションズ)など著書多数。

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FATF審査の結果を暗号資産の観点からどうみるべきか
(Photo/Getty Images)

「ビットコイン最高値更新」の今、FATFの評価は

 米SEC(証券取引委員会)が10月15日に米国初のビットコイン先物ETFを承認しことから、ビットコインは最高値を更新するなど、暗号資産市場が盛り上がっている。このような潮流に対し、世界的な暗号資産市場への「規制」の動きも確認しておこう。

 マネーローンダリングやテロ資金供与対策の実効性を評価する、FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)による第四次対日相互審査の結果が8月30日に正式公表されたが、今回の審査からFATFの監督対象となる金融機関の1つに新たに「暗号資産交換業者」が追加されている。

 今年2月の金融庁によるガイドライン改訂・FAQ公表を知る多くの金融機関にとって、今回の審査結果はおおよそ予想通りという内容と言えるが、審査結果のサマリーでもくり返し言及されるなど、暗号資産交換業者の取組状況にFATFが注目していることがうかがえる。
a)総評
AML/CFT のための国の政策と戦略において日本は、暗号資産に関するリスクを含め、リスクの高いいくつかの分野に対処しようとしている。しかしながら、それらの政策と戦略は AML/CFT の活動に的を絞ったものではない。

b)金融機関のリスク理解と取り組みについて
暗号資産交換業者は、暗号資産取引に関連する犯罪リスクについて一般的な知識を有し、基本的な AML/CFT に係る義務を実施している。「疑わしい取引の届出」の総件数(年ベース)は増加傾向にあるところ、「疑わしい取引の届出」の大部分は金融分野からのものであり、暗号資産交換業者の届出の実績も良いが、全体的にみて、「疑わしい取引の届出」は、基本的な類型や疑わしいと判断された参考事例を参照して提出されている傾向がある。

c)金融監督当局のリスク理解と取り組みについて
日本は、暗号資産交換業者セクターに対し、対象を絞り適時な法令と監督対応を実施した。不備の認められる暗号資産交換業者に対して迅速かつ強固な対応を行ってきたことは認められるものの、マネロン・テロ資金供与リスクに基づく監督上の措置は改善する必要がある。

j)金融制裁の対象者の指定・履行手続きについて
対象を特定した金融制裁を遅滞なく実施するために金融機関や暗号資産交換業者、DNFBPs に対してスクリーニングを行う義務が課せられているものの、金融機関や暗号資産交換業者、DNFBPs による対象を特定した金融制裁の実施は不十分である。
 暗号資産と交換業者に深く関わる事業者の立場から、昨今のFATFを取り巻く実情を概観したい。

第四次審査結果の概要

 今回の審査結果は「重点フォローアップ国」となった。これを受け、多くのメディアは「通常フォローアップ国」に選ばれなかった、という内容を報じている。

 重点フォローアップ国となる条件は以下の4つとされている。日本は、この4つの条件のうち3つに該当している状況だ。

条件 日本の状況
法令等整備状況の評価について、8以上の不履行(NC)または一部履行(PC)がある場合 PCが10、NCが1
→該当
法令等整備状況の評価のうち、以下のいずれかについて1つ以上の不履行(NC)または一部履行(PC)がある場合

勧告3:資金洗浄の犯罪化
勧告5:テロ資金供与の犯罪化
勧告10:顧客管理
勧告11:本人確認・取引記録の保存義務
勧告20:疑わしい取引の届出
勧告5(テロ資金供与の犯罪化)がPC
→該当
有効性の評価の11項目のうち、7以上の項目について、低レベル(LE)または中レベル(ME)の評価を受けた場合 有効性の評価の11項目のうち、MEが8
→該当
有効性の評価の11のIOのうち、4以上のIOについて、低レベル(LE)の評価を受けた場合 有効性の評価の11項目のうち、LEが0
→非該当

 しかしながら、公表された審査結果を概観していると、規制当局の制度整備を主なスコープとする既存の40勧告については「8.非営利団体(NPO)の悪用防止」を除き、そこまで低い評価が下されているわけではないようだ。少なくとも前回審査からの大幅な改善は先述のサマリーでも評価されている。

 他方、現場レベルでの執行状況についてチェックされる「有効性審査」については、高レベルの評価が1つもなく、大多数が下から2番目の評価となっている。民間企業との連携が必要な項目や、警察組織との連携が求められる項目で課題を残していることにも注目したい。

 概して、「ルールメイクが求められる段階から執行が求められる段階へと視座を高めよ」というメッセージを読み取ることもできるだろう。

「通常フォローアップ国」をどうみるか

 これまでFATFの審査を業務に反映し評価を改善してきた金融関係者の多くは、今回の評価を肝に銘じながら課題を1つひとつ解決していくとの考えをお持ちのことと思う。また、審査結果の公表から1カ月以上が経過し、そうしたミクロな評価改善に向けた情報は出尽くしつつある。

 そのため、本記事ではイノベーションを踏まえた新しい視座を提示したいと思う。それは「通常フォローアップ国のほとんどが、FATFが暗号資産への態度を硬化する以前に審査を終えている」という観点だ。

 今回の第四次相互審査によって通常フォローアップ国との評価を獲得した国は8カ国、そしてその後のフォローアップによって通常フォローアップ国に昇格を果たしたのが3カ国ある(本記事執筆時点)。

 これらの国々の審査結果には共通点がある。それはほとんどが2019年以前に公表されたものという点だ。調査から公表までのタイムラグを踏まえると、2018年から2019年初頭頃に調査を終えていることになる。

 現在、通常フォローアップ国に該当する国で日本の相互審査以後に評価が下された国はスウェーデンしかいない。そのスウェーデンも2020年に公表された最新のレポートで、特に暗号資産が関与する「勧告15:新技術」の評価をAからBへと下方修正されている。

 今後、FATFによる相互審査に国を挙げて対応していこうと考えた場合、「暗号資産」を取り巻くFATFの考えを知り、それを国内の議論にブレイクダウンしていかなくてはならない。

【次ページ】FATFによる暗号資産規制の経緯

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