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  • 2021/11/12 掲載

キーエンスやMS&ADが語る「パーパス主導DX」、“データありき”で失敗する理由

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DX推進が大きなテーマとなる中、データの利活用は、金融機関のみならずあらゆる企業にとって大きな経営課題となっている。しかし、実際にデータをどのように活用し自社のビジネスや組織戦略を変革していけばよいか、重要なポイントは「DXの目的とともに企業のパーパス(存在意義、目的)」を明らかにすることにある。MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 執行役員 グループCDO CIO CISOの一本木 真史氏、キーエンス データアナリティクス事業グループ マネージャの柘植 朋紘氏、シナモンAI 代表取締役社長CEOの平野 未来氏、東京大学大学院 経済学研究科 教授の柳川 範之氏といった各界でデータ活用を牽引する登壇者が、日本経済新聞社 編集局 編集委員の滝田 洋一氏をモデレーターにDXを成功させるデータ活用のポイントを語った。
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データありきでなく、“パーパス”主導でデータ戦略を再定義することがDX成功のカギ
※本記事は、日本経済新聞が2021年9~10月に主催した金融DXサミット「Financial DX/SUM」の講演内容を基に再構成したものです。

社会の共通価値や社会課題の解決をDXを通じて進める

 日本経済新聞社 滝田 洋一氏はまず、各社のデータ活用の取り組みについて話すよう登壇者に求めた。キーエンスの柘植 朋紘氏は、「我々は製造業をメインに、IoTで工場の生産性を向上させるためのセンサーや測定器などを扱うBtoBビジネスだ」と述べ、その特徴は、すべてのビジネスにデータ活用を徹底的に取り込むことで「利益率が約51%と高収益な体質にある」とした。

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キーエンス
データアナリティクス事業グループ
マネージャ
柘植 朋紘氏

 キーエンスでは2年前から、社内で用いてきた自社開発のデータ分析ソフトウェアを幅広い業種に向け外販を開始し、データ分析支援にも乗り出しているという。たとえば、金融機関向けには「金融商品の営業先を、これまで勘と経験に頼ってきたものをデータ分析、活用することで、営業効率の向上を支援している」ということだ。

 続いてMS&ADインシュアランス グループ ホールディングス一本木 真史氏は自社の金融分野のデータ活用について「金融を通じて安心と安全を提供すること、活力ある社会の発展、地球の健やかな未来を支えることをミッションに掲げてきた」と説明した。その実現に向けた重要な戦略の一つが「CSV(Creating Shared Value)×DX」だ。すなわち、社会の共通価値や社会課題の解決をDXを通じて進めていく戦略である。

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MS&ADインシュアランス グループ
ホールディングス
執行役員 グループCDO CIO CISO
一本木 真史氏

 具体的には、保険金支払いの前後にデータを活用し、顧客への提供価値を拡大していくことに取り組んでいる。たとえば、「保険求償の前の価値として、事故が起こらないようにリスク検知、事故の予兆を知ることで事故を減らせるのではないか」という取り組みだ。

 これが「テレマティクス自動車保険」と呼ばれるもので、保険加入者の車にセンサーを取りつけ、運転挙動をデータで取得し、運転リスクを分析。それを保険料に反映したり、「必要なときにはアラート、アドバイス提供することで、事故低減を図っていく取り組み」だ。

 一方、補償の後の価値としては、事故による保険求償のスピードを高めることで「被害からの回復を早める」ことにある。具体的には、自動車保険にドラレコ映像から事故の状況を分析し、AIを使って過失割合を算定することや、損傷箇所の画像データから損害を算定し、保険金支払いのスピードを高めることに取り組んでいる。

 こうした取り組みは自動車保険だけでなく、たとえば洪水などの自然災害時にはドローンの空撮画像からAIを活用して浸水の深さを算定し、「現地に赴くことなく被害状況を把握して保険金支払いのスピード化する取り組みが実装段階に入っている」と一本木氏は話した。

「DX成熟度」の5つのフェーズと「パーパス主導」のDX

 人工知能(AI)を企業の成長戦略に取り入れ、DXを支援するのがシナモンAIだ。代表のの平野 未来氏は、さまざまな企業を支援する中で「DX成熟度は大きく5つのフェーズに分かれる」と述べた。

  • フェーズ1:AI・DXに取り組んでいない
  • フェーズ2:間接部門にAIを活用し業務効率を向上する
  • フェーズ3:直接部門にAIを活用し、業務効率を向上する
  • フェーズ4、5:DXの本格段階

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シナモンAI
代表取締役社長CEO
平野 未来氏

 そして、「フェーズ4はデジタルを活用した新規事業開発の段階、フェーズ5は本業を含むビジネスそのものをAIで大きく変革する段階」だということだ。平野氏はよく、DX推進したい企業から「ウチの会社にはデータたくさんある」との相談を受けるというが、「データ主導でDXを進めるのは少し違う」と話す。

 というのも、「データから考えていくと起きることは部分最適で、ビジネスインパクトは小さくなる」からだ。重要なのは「企業のパーパス(存在意義、目的)」から考えることだ。

 「どういう世界をつくるのか」「どういう顧客にどういう体験を提供できるのか」を考え、そのパーパスを達成するためにアプリやセンサーといった実装アプローチを考え、さらにどういうAIが必要か、どんなデータが必要なのかを考えていくことがDX成功のポイントだと平野氏は述べた。

 滝田氏は、日本の経済政策立案の第一人者である東京大学大学院 柳川 範之氏に「今年の経済財政白書にDXが課題だと書いているが、DX進展の現状をどう見ているか」を問いかけた。

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東京大学大学院 経済学研究科 教授
柳川 範之氏

 柳川氏は、「DXは今まで得られたなかったデータを活用して社会全体で付加価値を高めていき、それが結果として経済成長をもたらすことだ」だと述べた上で、得られなかった情報はすなわち「デジタルデータだ」とした。

 IoTやセンサーデバイスなどでこれまで得られなかったデータが得られる。さらにデジタルデータで得られることで、その後の活用可能性が格段に高まるのだ。

【次ページ】「パーパス」とともにDXを進めるのが難しい理由

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