- 2026/10/19 06:50 掲載
【単独】エンジニア不要…シスメックス子会社の製造現場発「不良解析AI」爆誕の裏側(2/2)
連載:勝てる工場のつくり方~シスメックスRA~
【事例】製造現場で生まれた「不良解析エージェント」の正体
こうした環境やスマートプロセスワーキングへの参加を通じて、同社では社員自らがAIエージェントを作る動きも出ている。その1つが、製造部門で開発を進める「不良解析エージェント」だ。製造工程で不具合が発生した場合、症状を基に過去のデータベースを調べたり、専任者が経験や知識を生かして原因を探ったりする。不良解析エージェントは、こうした過去の情報の検索や技術承継にAIを活用しようとする試みである。
製造工程で得られる膨大なデータを分析することで、品質向上につながる新たな気づきが得られることがある。データの中に潜む小さな変化や傾向を捉え、その知見を製品や工程の改善に生かすことで、さらなる品質向上を目指している。
とはいえ、大量のデータを人が1つひとつ確認するには限界がある。そこでAIにデータを読み込ませ、人が確認するだけでは見つけにくいデータ同士の関係性や、不具合につながる兆候を探ろうとしている。
こうした動きは製造部門に限らない。経理部門でも「会計エージェント」を作り、検証を進めているという。
「いい意味で『まずはやってみる』。そんなチャレンジを後押しする環境こそが、新たな発想や改善を生み出すと考えています」(尾黒氏)
それぞれの業務を知る社員が、身近な課題を起点にAIを試しているのだ。
こうしたAI活用は、製造現場の作業効率化にも広がっている。たとえば、部品のピッキングを担うAMRでは、AIが作業者に次の動きを案内する仕組みを活用。さらに、ARやAIを使ってねじや配線の取り付け状態を確認するなど、検査作業の効率化も進めている。同社が目指すのは、単純作業の自動化にとどまらず、熟練者の「勘・コツ・経験」をAIで補完し、現場の改善につなげることだ。データ活用はまだ本格化に向けた途上にあるが、現場の知見とAIを組み合わせることで、さらなる業務改革を目指している。
「勘・コツ・経験」をAIで補完? 現場発の挑戦とは
「AIが作業者に対して次に何をすべきか、最短の動きを指示してくれるという意味では、シスメックスRAの中では最初の人協調型AIだと捉えています」(小澤氏)
さらに、製造工程の一部では、ARやAIを活用した検査作業の効率化を実現するツールの活用も始めている。ねじや配線などが正しく取り付けられた状態をAIに学習させた上で、実際の作業を撮影し、各工程が正しく行われているかを確認する仕組みだ。さらに、従来の作業手順書を3Dモデルに反映し、実機を認識させることで、作業を進める仕組みも活用し始めているという。
こうした現場でのAI活用を踏まえ、小澤氏と尾黒氏は、それぞれの立場からAIへの期待を語る。
「製造目線で言うと、単純作業だけでなく、より踏み込んだ領域で活用できるようになってほしいと思っています。日本のものづくりの文化である『カイゼン』の1つのツールとして、ほかの手法と組み合わせながら、現場の改善につなげられることを期待しています」(小澤氏)
「勘・コツ・経験が必要な部分で、人間に示唆を与えるのがAIだと考えています。多種多様な提案をするAIと壁打ちしながら、自分の考えを洗練していけるようになるといいですね」(尾黒氏)
現場主導のAI活用は、少しずつ広がりを見せている。データ活用が本格化すれば、その可能性はさらに大きくなるだろう。物流の自動化から始まった同社の業務改革は、これからも続いていく。
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