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  • 2026/10/14 06:50 掲載

【潜入】生産効率2倍を実現「長野の工場」、物流ロボが自らエレベーターを使った衝撃

連載:勝てる工場のつくり方~シスメックスRA~

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AMR(自律走行搬送ロボット)が自らエレベーターに乗るなど、入荷から出荷までの多くの構内物流工程を自動化させているのが、医療検査機器メーカーのシスメックスRA(長野県塩尻市)だ。人手不足が深刻になる中、同社は入荷からピッキング、製造、出荷までの物流を大胆に見直し、人員を増やさず生産効率を約2倍にまで高めた。だが、最初から順調だったわけではない。AMRの選定からデータの登録、台車の作り直しまで、現場を待っていたのは想像外の苦労だった。その舞台裏について、代表取締役社長の尾黒 昌彦氏と執行役員の小澤 洋輔氏に話を聞いた。
構成:編集部 井内 亨   執筆:ビジネスライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

ビジネスライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

東北大学大学院応用化学専攻修了。大手製造業を経て自治体に勤務し、大学での産学連携業務も経験。現在はビジネス分野を中心に取材・執筆。導入事例、記事広告、技術紹介、セミナー記事、SEO記事、法令解説記事などのほか、企業向けコンテンツ制作にも携わる。理系・技術職出身で、環境分野(脱炭素・廃棄物・水質)に強み。脱炭素アドバイザー(環境省認定)、公害防止管理者。著書に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)。

  撮影:大参 久人
【潜入】生産効率2倍を実現「長野の工場」、物流ロボが自らエレベーターを使った衝撃の画像
AMRが自律的にエレベーターから降りてくる様子(詳しくは後ほど解説します)

「年5%成長」で手狭になった旧工場

 シスメックスRAは、血液や尿などの検体検査事業を手掛けるシスメックス(兵庫県神戸市)の完全子会社で、検体検査機器やその周辺装置の開発・生産を担う。ヘルスケア市場の成長を背景に、同社は着実に業績を伸ばしており、「2010年ごろからCAGR(年平均成長率)は5%程度の成長を続けています」と尾黒氏は説明する。

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シスメックスRA 代表取締役社長 尾黒 昌彦氏

 一方、生産規模の拡大を続ける中で、生産現場ではスペースの制約が大きくなり、自社工場だけでは手狭となっていった。部品や完成品の保管を外部倉庫に委託することで対応してきたが、保管場所が工場外に分散することによる物流面の負担も生じており、さらなる成長を見据えると、既存工場のままでは限界が見え始めていたのだ。

 そこで同社は2021年ごろから新工場の計画に着手。事業の成長を支える生産体制を整えるため、工場の拡張・移転に踏み切った。
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新工場で決断した「物流の自動化×省力化」

 新工場の建設にあたり、同社が掲げたコンセプトは「自動化して製造効率を高めること」だった。

「シスメックスRAは検体検査のオートメーション化を担う会社です。にもかかわらず、その製品の製造は大半は手作業で行われており、自動化は以前からの課題でした」(小澤氏)

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シスメックスRA 執行役員 小澤 洋輔氏

 もっとも、製造工程そのものの自動化には、同社ならではの難しさがあった。扱う製品は多品種少量で、月に数台しか生産しないものがある一方、200台程度を生産する製品もある。製品ごとに専用の自動化設備を導入すれば、設備投資が膨らみ、投資対効果も見込みにくい。

 そこで同社がまず着目したのが、物流だった。製品ごとにサイズや形状は異なっても、搬送部分は共通する。ここを自動化することで、工場全体の効率化につなげようと考えたのだ。

 もう1つの狙いが、限られた人材を最大限生かすための省力化・活人化である。

「人を減らすためではなく、現在のリソースの効率を最大化させるというところを目的としていました」(小澤氏)

 事業の成長と比例して人員を増やすのではなく、現在の人員を維持、あるいは事業の成長よりも緩やかなペースで増員しながら、生産性を高めていく。そのために、人が担っていた搬送作業を自動化し、製造や品質管理など、人が担うべき業務にリソースを振り向ける考えだ。

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2025年6月に稼働した新たな本社工場

 この背景には、地方の工場ならではの人材確保の難しさもある。尾黒氏はこのように吐露する。

「人材の確保には苦労しています。特に当社はパートタイマーのメンバーを中心にものづくりをしています。そのため、移転先でも、従業員が無理なく継続して勤務できるよう、できるだけ近い場所を選ぶことを重視しました」(尾黒氏)

 なお新工場は旧工場から1キロ圏内に設け、それまで働いていたスタッフが引き続き働ける環境を整備。これに加え、新社屋では社員食堂を設けるなど、働きやすさにも配慮している。また地域の小中学生を招いた工場見学も受け入れるなど、地域とのつながりを大切にし、将来的な人材確保にもつなげたい考えだ。

知見ゼロから始まった「AMR選定・導入」の舞台裏

 もっとも、物流の自動化を進めるといっても、同社に最初から十分な知見があったわけではない。「何から始めたらいいかわからない」状態からのスタートだった。

 そこでまず、製造部からものづくりへの理解や技術的な知見をもつメンバーを集め、専門チームを編成。チームを中心に自動化の構想を描くとともに、さまざまな設備や運用方法について情報を集めていった。

 展示会にも足を運び、ピッキングや搬送に使われる設備を20種類ほど見学。メーカーへの相談や、実際に設備が稼働している現場の見学も重ねた。その中から候補を絞り込み、搬送用ロボットについてはAGV(無人搬送車)とAMRを合わせて5社程度を比較検討。最終的にAMRを選んだ。

 多品種少量生産の同社では、生産する製品や数量に応じてレイアウトを変更することもある。あらかじめ搬送ルートを設定するAGVに比べ、状況に応じて柔軟に動けるAMRの方が適していると判断したのだ。

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AMRでピッキング作業をしている様子

 選定にあたって、既存工場でPoC(概念実証)も重ねた。

「いきなり新工場で導入するのではなく、既存工場でできる限りPoCを重ね、効果が見えた段階で投資判断を行う。このようにして社内の理解も得ながら進めていきました」(小澤氏)

 PoCを経て新工場への導入段階に入ると、生産技術部門も本格的に加わった。メーカーとも連携しながら、設備の詳細な設計を詰めていった。

「最終的に導入したAMRはラピュタロボティクスとオムロンなのですが、当時訪れた展示会ではラピュタロボティクスとの接点がなく、帰社後にWeb上で見つけたのがきっかけでした。これいいんじゃないか、ということで実際にラピュタの事務所まで足を運び、デモを見て最終的に選定しました」(小澤氏) 【次ページ】AMRがエレベーターに乗る!?「入荷~出荷の自動化」徹底解剖
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