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  • 2023/02/27 掲載

日本の安すぎる給料は「解決可能」と言えるワケ、データで見る賃上げしない根本原因

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

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賃金は生産性で決まるので、賃上げ実現には生産性の分析が不可欠だ。この分析を行ってみると、日本で賃金が上がらない基本的な原因が見えてくる。その1つが低生産性産業の成長だが、問題点はほかにもある。これを見ると、日本の低賃金は解決できる課題であることがわかる。この状況を日本は変えなければならない。

執筆:野口 悠紀雄

執筆:野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

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日本の賃金が上がらない最大原因とは
(Photo/Shutterstock.com)

就業者数で分析:製造業の縮小と保健衛生の拡大

 日本の産業構造を就業者数で見ると、図1の通りだ。

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図1:産業構造を就業者数で分析してわかることとは
国民経済計算のデータより筆者作成)

 時系列的に見て最も顕著な変化は、保健衛生・社会事業が著しく増加していることだ。1994年から2021年までの変化を見ると、実数では354万人から903万人に増加。全就業者数に対する比率で見ると、5.3%から13.5%に上昇した。

 それに対して、ほかのほとんどの産業で就業者数は減少した。1994年から2021年の間に、製造業の就業者は1403万人から1044万人に減少し、全就業者数に対する比率では20.9%から15.6%に低下した。

 建築業や卸売・小売業の減少も著しい。宿泊・飲食サービス業は、やや減少している。情報通信業はかなりの増加。それに対して、金融・保険業は若干減少している。

付加価値で分析:いまだに製造業が最大産業

 以上で述べたこと(製造業の比率低下と、保健衛生・社会事業の比率の上昇)は、よく知られている。ところが、産業構造を付加価値(産業別GDP)で見ると、図2の通りであり、図1とはかなり異なる状況になっている。

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図2:就業者数の状況とはまったく異なり、製造業がいまだに日本最大の産業であることがわかる
(国民経済計算のデータより筆者作成)

 第1に製造業では、1994年から2021年の間に付加価値は増加している。そして、付加価値で見た製造業の比率は、2021年において26.3%である。これは、就業者で見た比率15.6%よりずっと高い。

 図1で見た就業者数では、2021年において製造業は卸売・小売業とあまり変わらないが、付加価値では1.7倍になっている。つまり付加価値で見ると、製造業は依然として日本で最大の産業なのだ。

 なお、卸売・小売業の場合、就業者数は減少しているにもかかわらず、付加価値はほとんど一定であることに注意が必要だ。

 保健衛生・社会事業では、就業者数は1994年から2021年の間に約2.6倍に増えた。それにもかかわらず、付加価値は2.2倍にしか増えていない。この業種は図1に見るように、就業者数では製造業や卸売・小売業と肩を並べるような規模になっているが、付加価値での比率はずっと低いのである。

 金融・保険業や情報通信業などは、本来はもっと比重が高くなってしかるべき産業だ。しかし付加価値で見ても、これらの分野の比重は低い。

 以上で述べたことを生産性(就業者1人当たりの実質GDP)という指標で見ると、次の通りだ。

【次ページ】生産性で分析:賃金が上がらない「最大原因」とは?
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次のページでは、生産性の分析を踏まえ、賃金が上がらない原因や日本が解決すべき課題などについて解説する

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バブル期の水準が異常だっただけ「賃金が増えていない」という大多数の誤解

いい所まで分析が出来てるのに、詰めが甘い。
バブル期に出しすぎだったのではなく、今までが出し渋り過ぎただけ。
バブル期はIT発達が乏しく他社との価格競争なんかも今よりも緩かった。デフレで価格競争して支払う原資を失ったゾンビ企業が跋扈して上げないことが当たり前の糞社会が醸成された。
ヨーロッパ、アメリカを比較に入れれば年収は上がってるよね?
ならバブル期が上げすぎということではなく、バブル後が上げなさすぎということになる。
給料を上げなかった経営者側に言い訳できるような記事かくな。
それに時給が上がって最下層の年収があがり総年収が変わらないやばさが分かってるのか?
正社員の最下層化が始まっている。
最低賃金が低かった頃物価も上がってなくて400万円台の社会人でもどうにかなってたが最低賃金アップで物価があがり、でも400万円層の年収は変わらないから底が上がって400万円層が底辺層になってきている。
これこそが茹でガエル。
社会人を歯車に例えてみようか、油を刺さなきゃ動かないよな?その油をギリギリまで落としてメンテナンスもせず動かしてるのが今の会社、
もっと油させば回るのにそれを理解しない。
水車にも例えようか水を流さなきゃ水車は回らないよな?
その水が今チョロチョロで極わずかなんですよ。
上流のダムには水がいっぱいで締め続けてるんですよ。
まず書くべきは経営者への賃上げ。そして賃上げ。
原資が必要というなら
社長が営業に単価アップを厳命して既存顧客からまず利益を上乗せして持ってくる経営を始めるように書くべきだ。
記事を書くならば総年収を上げない経営者は悪くらいの立場で書くべきだ。

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