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- 2023/02/27 掲載
日本の安すぎる給料は「解決可能」と言えるワケ、データで見る賃上げしない根本原因
就業者数で分析:製造業の縮小と保健衛生の拡大
日本の産業構造を就業者数で見ると、図1の通りだ。時系列的に見て最も顕著な変化は、保健衛生・社会事業が著しく増加していることだ。1994年から2021年までの変化を見ると、実数では354万人から903万人に増加。全就業者数に対する比率で見ると、5.3%から13.5%に上昇した。
それに対して、ほかのほとんどの産業で就業者数は減少した。1994年から2021年の間に、製造業の就業者は1403万人から1044万人に減少し、全就業者数に対する比率では20.9%から15.6%に低下した。
建築業や卸売・小売業の減少も著しい。宿泊・飲食サービス業は、やや減少している。情報通信業はかなりの増加。それに対して、金融・保険業は若干減少している。
付加価値で分析:いまだに製造業が最大産業
以上で述べたこと(製造業の比率低下と、保健衛生・社会事業の比率の上昇)は、よく知られている。ところが、産業構造を付加価値(産業別GDP)で見ると、図2の通りであり、図1とはかなり異なる状況になっている。第1に製造業では、1994年から2021年の間に付加価値は増加している。そして、付加価値で見た製造業の比率は、2021年において26.3%である。これは、就業者で見た比率15.6%よりずっと高い。
図1で見た就業者数では、2021年において製造業は卸売・小売業とあまり変わらないが、付加価値では1.7倍になっている。つまり付加価値で見ると、製造業は依然として日本で最大の産業なのだ。
なお、卸売・小売業の場合、就業者数は減少しているにもかかわらず、付加価値はほとんど一定であることに注意が必要だ。
保健衛生・社会事業では、就業者数は1994年から2021年の間に約2.6倍に増えた。それにもかかわらず、付加価値は2.2倍にしか増えていない。この業種は図1に見るように、就業者数では製造業や卸売・小売業と肩を並べるような規模になっているが、付加価値での比率はずっと低いのである。
金融・保険業や情報通信業などは、本来はもっと比重が高くなってしかるべき産業だ。しかし付加価値で見ても、これらの分野の比重は低い。
以上で述べたことを生産性(就業者1人当たりの実質GDP)という指標で見ると、次の通りだ。
【次ページ】生産性で分析:賃金が上がらない「最大原因」とは?
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