• 2026/05/01 掲載

PayPayのようにはいかない…国が発行するステーブルコイン「CBDC」が普及しないワケ

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PayPayやSuicaが乱立する日本で、国が発行するデジタル通貨「CBDC」は本当に必要なのか。総務省が統一QR(JPQR)を開発しても普及せず、日銀の担当者はわずか数名という現実がある。一方、中国はすでにCBDCを完成させながらも普及に失敗し、欧州は2029年発行を目指すも中途半端な状況だ。国家主導の決済統一がうまくいかない理由とは何か。その背景にはテクノロジーの問題ではなく、人間の“ある本能”が深く関係していた──。
執筆:楽天ウォレット シニアアナリスト 松田 康生

楽天ウォレット シニアアナリスト 松田 康生

東京大学経済学部で国際通貨体制を専攻。三菱UFJ銀行・ドイツ銀行グループで為替・債券のセールス・トレーディング業務に従事。2018年より暗号資産交換業者で暗号資産市場の分析・予想を始め、2021年のBTC価格のピーク800万円や2024年末の1,550万円を、ほぼ的中させる。2022年1月より現職。著書に『世界一やさしい暗号資産・ビットコインの教科書1年生』(ソーテック社)、『暗号資産で100万円が消えた僕に儲かる方法を教えてください! 暗号資産アナリストから学ぶ「1億円を目指す」投資法』(翔泳社・共著)がある。

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「CBDC」は本当に必要なのか…国家主導の決済統一がうまくいかない理由とは?
(画像:本文をもとにAI(Gemini/Nano Banana)を使用して生成)
※本記事は『お金の世界を可視化する 教養としてのビットコイン』を再構成したものです。
■ 登場人物 ■
松田さん
東大→国内最強のメガバンク三菱UFJ銀行のトレーディング部門で活躍し、ドイツ銀行グループに転職。暗号資産の時代が来ると予見し、2018年から暗号資産業界に身を投じる。2024年にはビットコインの価格予想が的中。エリートらしからぬ、知識ゼロの人にもわかりやすいユーモアを交えたやさしい語り口が人気。

アワタニ
30代サラリーマン。ビジネス書は多少読むが、投資は全世界株式インデックスを積み立てで少額やっているのみ。暗号資産は気になっているものの、怪しい気もして手が出せていない。ニュースでビットコインが最高値更新とか、トランプ大統領が激推ししているなどと聞いて、「これ、知っておいたほうがいいのかも」と思い始めている。

国家主導のステーブルコイン、なぜうまくいかないのか

松田さん:米国はステーブルコイン容認に舵を切りました。日本も少なくとも規制の面では先進国です。欧州は出遅れた印象ですが、中国はCBDC(中央銀行デジタル通貨)を優先しているようです。

アワタニ:民間企業がつくったUSDTやUSDCではなく、これは国がつくるステーブルコインの話ですね。

松田さん:国家主導は一見うまくいきそうですが、そうもいかないのが実態で。たとえば日本ではPayPayとかSuicaみたいな電子マネーが乱立気味じゃないですか。店舗側もQRコードを貼ったり機械を導入したりして対応が大変で。日銀が発行して国内の電子マネーを統一したら、便利になりそうですよね。

アワタニ:たしかに……!

松田さん:でも、そういうのってうまくいかないんですよ。せめてQRコードだけでも統一しようと総務省が統一QR(JPQR)を開発したんですが、あまり普及していません。

アワタニ:なんでですか?

松田さん:PayPayが日本を席巻したときってプロモーションにすごい額のお金を使っていたじゃないですか。そのおかげで国内トップの地位を手に入れたと。

アワタニ:たしかにポイント10%とか、当選したら半額とかもありました。あれ、いくら使ったんですかね。

松田さん:最初に100億円、最終的には数百億円は使ったとみています。それだけの手間と時間とお金をかけて乗り換えを促し巨大なシェアを得たわけで、政府には無理でしょう。

アワタニ:政府がそんなお金使ったらボロカスに言われそう……。

とてもつくれっこない…日本円のCBDCの実情

松田さん:商売にはノウハウが必要なので、政府がやってうまくいくとはかぎりません。これが、CBDCがうまくいかない理由の1つでしょう。日本では二階建て方式(注1)と言われ、国がデジタル通貨を発行すると民業圧迫になるからやりませんとしています。「銀行どうしのやり取りやインターバンク(注2)の取引だけ、つまり業者間取引はCBDCでやりましょう」と。でも既存の決済システムがあるのに、そんなの必要あるかって話になっています。

注1:二階建て方式…日銀がCBDCを発行・管理(1階)し、銀行や決済事業者が口座開設や入出金などのユーザー対応(2階)をするしくみ
注2:インターバンク…銀行どうしが取引する市場のこと。為替市場では、銀行間で通貨を売買することで価格が決まる。個人が両替するレートとは異なり、大口の取引が行われる

アワタニ:まあ僕もPayPayと楽天ペイでポイントをもらっているし、日本のCBDCなんて別にいらないかも。

松田さん:PayPayもSuicaも楽天ペイもある。それぞれポイントが加算されたり優遇措置があったりして、独自の経済圏をつくっていますからね。

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【画像付き記事全文はこちら】PayPayもSuicaも楽天ペイもそれぞれポイント加算など優遇措置があり、独自の経済圏をつくっている
PayPayもSuicaも楽天ペイも、それぞれポイント加算など優遇措置があり、独自の経済圏をつくっている
(Photo:StreetVJ / Shutterstock.com)

アワタニ:「おまけあんの? メリットは?」って思います。

松田さん:仮に、日本円のCBDCだけ手数料がとんでもなく安くなったとしても、電子マネーを使って消費者が手数料を取られたことはないって話で。決済時に3%とかの手数料を負担しているのは、加盟店ですから。

アワタニ:たしかに……。

松田さん:しかも日銀でCBDCを専任で担当しているのは数名らしく、業者間決済に絞ったとしても、とてもつくれっこない。やるなら相当な予算と人材が必要なんで「いちおう研究・実証実験は続けている」ってスタンスじゃないですかね。 【次ページ】中国のCBDCはとっくに完成しているのに…普及しないワケ
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