- 2026/09/11 06:30 掲載
なぜ日本人は「現金・預金」が大好き?話題のトランプ口座から読み解く日米のお金観
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
新生児の約16万円が55歳で3,900万円に?トランプ口座の実態
日米の資産運用観の違いが非常にわかりやすく表れている政策が米国で始まった。トランプ政権が2026年7月4日の米国独立250周年記念日に開始した、子供の資産形成を支援する税制優遇制度である「トランプ口座」である。
共和党のトランプ大統領の名前を冠しているため党派性があるとの印象を与えるかもしれない。しかし、実はトランプ氏が率いる共和党だけでなく、対立勢力である民主党の一部からも支持を受ける政策である。
この制度では、一定の要件を満たす18歳未満の子供が口座を開設できる。さらに、2025年1月1日から2028年12月31日の間に生まれた米国市民などを対象に、特別限定ボーナスとして、1回限りの1,000ドル(約16万円、1ドル=160円換算)の初期資金を受け取ることができる。
これに加えて、米大手テック企業デル・テクノロジーズCEOであるマイケル・デル氏とその妻スーザン氏が個人による寄付として、対象となる2500万人の子供たちに1人あたり250ドル(約4万円)を拠出する。また、ビリオネア投資家のレイ・ダリオ氏夫妻もコネティカット州の30万人超のトランプ口座に対し、1人あたり250ドルを拠出する。
この資金は、株式市場全体と連動する低コストのインデックスファンドで運用される。S&P 500株価指数の運用実績を基にしたホワイトハウスの試算では、当初の拠出金1,000ドルを得た子供たちのトランプ口座は、その後の上乗せ拠出額が0ドルでも、55歳時点で24万3,000ドル(約3,900万円)まで成長することが見込まれている。
さらに年間最大拠出額の5,000ドル(約80万円)の上乗せ拠出を毎年入金し続け、成人後も毎年5,000ドルを支払い続けると、複利効果により、55歳になるころにはなんと1,300万ドル(約21億円)まで膨れ上がる計算をホワイトハウスは示している。
将来的な米株式市場の長期低迷の可能性や、インフレによる目減り分を差し引いても、それなりの額に成長して楽な老後が過ごせる可能性がある。
トランプ大統領は2025年6月9日にホワイトハウスで開かれたイベントで、トランプ口座について「人生の早い段階から投資を始める大きなメリットに加え、貯蓄口座を持つ子供は高校や大学を(中退せずに)卒業する可能性が高く、住宅購入や起業の可能性も高い一方、収監されるリスクが低いことが多くの研究で示されている。トランプ口座は多くの新生児の生涯にわたる成功に貢献するだろう」と述べた。
批判もあるのに…政敵も評価する“賢明な政策”
トランプ口座の資金は、口座名義人が18歳の成人になるまで引き出すことはできず、出金時には一定の税制上のルールが適用される。また、運用先のインデックスファンドは高リスク型であることから、将来の市況次第では想定受取額がホワイトハウスの宣伝よりも低くなる可能性が指摘されている。さらに、毎年の拠出金を出せる裕福な家庭と、拠出金が出せない家庭の子供では、最終受取額が大きく異なり、貧富の差を拡大させるだけだとの批判がある。
しかし、民主党の一部からも、トランプ氏の名前を冠した制度であることに抵抗感を示しつつ、子供の保護者にはトランプ口座の開設を勧める声が上がっている。その代表格が、トランプ大統領の政敵でありながら、トランプ口座を「大統領の最高の功績のひとつ」と誉めるカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事や、トランプ口座を「賢明な政策」と評価するメリーランド州のウェス・ムーア知事だ。
ベッセント財務長官によれば、現地時間7月6日段階では、すでに約600万人分の登録があり、そのうち約140万人分が1,000ドル拠出の対象になったと説明した。
こうした反応から、大半の米国人の金融資産に対する考え方が、「自己責任を前提とした高リスク・高リターン型」であることが垣間見える。より多くの米国民が株式市場に投資するほど、「すべての米国民が経済成長の恩恵を受けられる」(ベッセント財務長官)との一定のコンセンサスが形成されていることの証左だ。
トランプ口座は、国策としての金融リテラシー教育の体現化であると言えよう。
では、これほど株式投資を“善”とする米国に対し、日本人はなぜ現金・預金にこだわり続けるのか。その根底には、お金をめぐる日本独特の価値観が横たわっている。 【次ページ】日本人はなぜ「現金・預金」を好む?日米で異なる資産観とは
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