- 2026/08/20 07:10 掲載
Claude・GPT公開に「待った」連発…米トランプ政権が目論む“中国封じ”のAI戦略
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
最先端AIの公開に「待った」連発…囲い込みが始まった
米トランプ政権は6月12日、アンソロピックの最先端AIモデル「Claude Fable 5」「Claude Mythos 5」への外国籍者によるアクセスを制限するよう指示。これを受け、アンソロピックは両モデルの提供を一時、全利用者に対して停止した。
米政府はその後、一定以上のサイバー能力を持つ最先端モデルを公開前に検証する枠組みづくりに着手し、8月4日には、ホワイトハウスがオープンAI、アンソロピック、グーグルなどと具体的な運用方法を協議したと報じられている。
現段階では企業の自主参加が原則だが、政府が公開時期や提供条件に影響を及ぼす仕組みは形になり始めている。6月以降続いているAI企業への規制とその解除は、単なる方針転換ではなく、AI企業を国家戦略に組み込む手法だった可能性がある。
AI企業にも同じ手法を使う?トランプ流の「勝ち筋」
一連の動きに隠された米国の狙いを読み解くには、第2次トランプ政権が安全保障上重要な企業に対して用いてきた介入手法を見る必要がある。たとえば、2025年6月に日本製鉄が買収した米鉄鋼大手USスチールだ。米政府は、同社の経営の重要事項に対して強力な拒否権を有する“黄金株”1株を保有している。「鉄は国家なり」という言葉があるほど、鉄鋼は国家安全保障の要だ。
この“黄金株”によって、米政府はUSスチールの親会社である日本製鉄が現地製鉄所を「儲かる」あるいは「儲からない」の判断のみで閉鎖することを防ぐ一方で、老朽化した設備に日本から最先端技術を移植させ、兵器や自動車の生産に欠かせない高品質の鉄を作りやすい環境を整えている。
このようにトランプ政権は、米国の安全保障にかかわる最重要な経営事項については介入をいとわないが、日々の経営上の決定や現場運営は放任するというスタイルであることが特徴だ。
同様に、米政府が2025年8月にインテルの株式9.9%を取得したのも、安全保障上の目的がある。不振に陥っていた同社のAI半導体ファウンドリ事業の立て直しを半ば強制することで、米国内の最先端チップの生産体制を整え、非常時に台湾や韓国に依存せずに最先端製品を製造できるようにしたのだ。トランプ政権は、インテルにファウンドリ事業からの安易な撤退を許さない一方で、その立て直しは経営陣に任せている。
さらに米国防総省は2025年7月に、レアアース開発企業のMPマテリアルズと、官民パートナーシップ契約を締結。株式4億ドル(約640億円)相当を取得し、同社が採掘した先端兵器の製造に欠かせない永久磁石材料のネオジムやプラセオジムに最低買い取り価格を設定した。 【次ページ】なぜ今、米政府が「オープンAI」に接近するのか
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