- 2026/06/16 掲載
スペースX無双か、まさかの日本逆転か…「宇宙AIデータセンター」争奪戦の意外な行方
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
住民も大迷惑…AIブームの裏で爆増する“厄介者”
アマゾンやグーグル、マイクロソフトやメタなど米テック大手をはじめ、オープンAIなどのAIスタートアップがAI向けの計算資源を支えるために、データセンターを相次いで建設している。AIデータセンターの世界的な市場規模は、2025年の174.3億ドル(約2兆7,743億円)から、2026年には30%も拡大して226.6億ドル(約3兆6,068億円)に達すると米市場調査会社のPrecedence Researchは予測している。これが2035年には、1,975.7億ドル(約31兆4,136億円)と10倍の規模に成長する見込みだ(冒頭の図1)。
現在、全米では3000超の新規データセンターが建設中または計画中だ。しかし、住宅地に隣接して建てられるデータセンターの騒音や、電力供給のための火力発電所が増加し、燃焼時に汚染物質やCO2を排出するとして問題になっている。冷却水の不足も深刻だ。
米世論調査大手のギャラップが3月上旬から中旬にかけて全米1000人の有権者を対象に実施した調査によれば、「地元にAIデータセンターが建設されることに賛成か反対か」との問いに対し、23%が「やや反対」、48%が「強く反対」と回答し、合わせて7割以上が何らかの形で反対していることが判明した(図2)。
問題は騒音や水資源不足、環境汚染だけではない。データセンターは大量に電力を消費し、電力網への負荷を増大させる。それによって引き起こされる、停電など電力供給の不安定化、さらに電力不足による電気代高騰なども、懸念材料として指摘されている。こうした住民の懸念に対し、データセンター運用企業が対応するコストは、日々大きくなっている。
一方で、AI企業は「収益性の増大」および「演算コストの経済性追求」という投資家からの要求に応じて、AIデータセンター運用で確実に利潤をあげることが求められている。住民と投資家からの板挟み状態というわけだ。
そこで浮上しているのが、「宇宙」という選択肢である。地上の制約を一気に突破するその構想は、AI時代の“大化け市場”になる可能性を秘めている。いまスペースX、中国、欧州、そして日本勢までが、この巨大市場をめぐって一斉に動き始めている理由とは──。
なぜ宇宙なら一石二鳥?宇宙DC市場規模は「衝撃の○倍」
宇宙への活路とは具体的には、軌道上に太陽光発電で稼働するデータセンター衛星を大量に打ち上げる計画だ。運用・保守コストをほとんどかけずに、「タダ」の太陽光発電を直接利用することで、コストとエネルギー効率を劇的に向上させると期待されている。地上データセンター建設と運用に伴う環境や電力網への影響を大幅に削減できるため、一石二鳥の解決策であるというわけだ。
こうした期待を背景に、この先数年で本格的な実用化が見込まれる軌道上データセンターの世界市場は急拡大するとみられている。米市場調査会社のResearch and Marketsは、2029年の17.7億ドル(約2,814億円)規模から、2035年には390.9億ドル(約6兆2,134億円)まで約22倍以上の驚異的な伸びを示すと予測している(図3)。
実際には、近未来の低軌道データセンター実用化のペースに左右されるが、当該予測はPrecedence Researchによる2035年のグローバルなAIデータセンター市場予想である1,975.7億ドルのおよそ2割に相当する。
この有望な巨大市場をめぐってイーロン・マスク氏のスペースXをはじめ、アマゾンの創立者でマスク氏のライバルであるジェフ・ベゾス氏、さらに中国や欧州・日本などが競って参入を目指しているのだ。 【次ページ】マスク氏もべゾス氏も次々参戦…最有望はやはり“あの企業”
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