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  • グーグル「量子コンピューター開発」報道で、ビットコインが大幅“下落”したワケ

  • 2019/11/13

グーグル「量子コンピューター開発」報道で、ビットコインが大幅“下落”したワケ

米グーグルが量子コンピューターを用いて、スーパーコンピューターよりも圧倒的に高速な計算を行うことに成功したと発表したことで、ビットコイン価格が一時、大幅下落するという騒ぎになった。量子コンピューターというのは現実的にどれほどのインパクトを持っているのだろうか、また、なぜグーグルの発表でビットコイン価格が下落するのだろうか。

経済評論家 加谷珪一

経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『"投資"に踏み出せない人のための「不労所得」入門』(イースト・プレス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方』(ビジネス社)、『お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか』(朝日新聞出版)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)などがある。

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2019年10月、量子コンピュータの「量子超越性」をグーグルが実証したと発表した
(提供:Google/ロイター/アフロ)

これまでの常識がまったく通用しない世界

 米グーグルは2019年10月23日、同社が開発した量子コンピューターを使って、従来のスーパーコンピューターでは1万年かかる計算を3分20秒で解くことができたと発表した。

 同社が開発したのは54個の量子ビットを持つ量子コンピューターで、1つの量子ビットは他の4つの量子ビットに相互接続されるグリッド構造になっている。実際は1つの量子ビットが作動しなかったことから53個の量子ビットで演算が行われたという。

 量子コンピューターの基礎的な概念が提唱されたのは30年以上も前のことだが、基礎研究にとどまる時代が長く続き、なかなか現実的な開発には至らなかった。だが、近年になって画期的な研究成果が相次いだことで、開発競争が本格化している。

 量子コンピューターは、量子力学の考え方を応用したコンピューターで、従来のコンピューターとはまったく異なる原理で動作する。量子力学は、ミクロ的な物質の振る舞いを記述する学問領域で、相対性理論と並んで現代物理学の中核をなす理論とされている。

 だが、極めて抽象度が高く、直感的に理解するのが難しいため、量子コンピューターについては「よく分からない」という印象を持つ人が多い。

 私たちが住む一般的な世界では、モノが存在しているのか、いないのかは、はっきりしている。水(H2O)という物質が存在していることは誰の目にも明らかであり、これを否定する人はいないだろう。

 だが、原子レベルの世界になるとこの大前提が崩れてしまう。たとえば、電子という物質は存在することは分かっているものの、その存在は確率的にしか記述できないというのが、量子力学の基本的な考え方である。

 数字で考えれば、存在するかしかないかという違いは「1」と「0」で表現できるが、1でもあり0でもあるという概念は存在しない。

 今のコンピューターはすべてデジタル処理(つまり1か0)されているのだが、これに量子力学を応用すると、1と0が確率的に両方存在するという記述が可能となる(中間を取って0.5という意味ではない)。

 1つのビット(情報処理の基本単位)で複数の情報を示せるので、うまく応用できれば計算のスピードが圧倒的に速くなる。1つのビットで複数の状態を記述することを「重ね合わせ」と呼んでいるが、この原理を応用したのが量子コンピューターである。

「暗号化技術が有名無実化する」はホント?

 筆者は大学で原子核工学を専攻したので、量子力学の講義は受けているが、この科目はとにかく分かりにくい。モノが「ある」「ない」という一般社会(あるいは古典物理学)における常識がまったく通用しないので、概要を把握するだけでもかなりの時間がかかった。

 ここでは量子論の詳細には触れないが、とりあえず量子力学を応用することで、複数の情報を同時に記述できると認識しておけば良いだろう。

 量子コンピューターは、特定の計算に対して従来の常識を一変させるような高速処理が可能とされており、一部の論者は量子コンピューターの実用化によって、現在、使われている暗号化の技術が意味をなさなくなると指摘している。今回のグーグルの発表でビットコイン価格が大きく値を下げたのも、これが原因と言われている。

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ビットコインは無価値になってしまうのか……?
(Photo/Getty Images)

 現在の暗号化技術は、高性能なコンピューターを使っても、解読には膨大な時間がかかることが担保となっている。もし、量子コンピューターが完全に実用化され、あらゆる種類の暗号を短時間で解読できるという状況になると、暗号化技術の多くが使いものにならなくなる。

 ビットコインの根幹をなしているブロックチェーンの技術は、基本的に暗号化技術がベースになっているので、ビットコインが無価値になってしまうことを懸念した一部の投資家が売りに転じた可能性が高い。

 しかしながら、今回のグーグルの発表で、暗号化技術が有名無実化するというのは、あまりにも拙速な見解だろう。

【次ページ】基礎研究としては画期的な成果だが……

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