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- 2020/07/07 掲載
“Withコロナ”時代にイノベーションを探すには? 「成長ストーリー」に学ぶ方法
新興市場の株価はコロナ禍以前を超える水準に
コロナ禍による景気後退が予想され株価指数は下落したが、現在は値を戻してきている。特に新興市場において回復の度合いが大きい。マザーズ指数の場合、コロナ禍の影響が出る前は1年以上に亘り900ポイント前後で推移してきた。それがひとたび500ポイント台まで下落したものの、2020年6月現在、下落前の水準を超える1000ポイント台まで回復している。また、米国ではナスダック総合指数が、コロナ禍による下落から回復後、史上最高値を更新した。
株価指数が回復している背景には、景気対策として各国の中央銀行が流動性を供給していることがある。その中で特に新興市場の株価が上昇しているのは、成長性を理由に株価の妥当性を比較的説明しやすいためと考えられる。
伝統的な企業の場合、コロナ禍により業績の悪化が予想される中で株価が上昇すれば、株価の分析に用いる各種指標は割高となり、妥当性を説明するのが難しい。一方、新興市場の企業であれば、現在の業績から株価の妥当性は説明できなくても、大きく成長することを前提に、数年後の業績を予想して株価を考えるのであれば、説明がつかないこともない。
ただし、新興市場に上場するすべての企業の株価が上がっているわけではない。コロナ禍以前よりも株価が大幅に上がった企業がある一方、以前の水準まで達していない企業も存在する。株価が大きく上昇した企業は、Withコロナ時代において投資家が成長を期待しているところと言えるだろう。
上場企業の株価はスタートアップの資金調達に影響する
株式市場における株価の上昇は、スタートアップの資金調達において一般には好影響を及ぼす。ベンチャーキャピタルなどの投資家がスタートアップへ出資する際、そのスタートアップの上場時の時価総額と、要求するリターンの水準を想定し、投資時の時価総額を決定する。上場時の時価総額を大きく想定すれば、出資時の時価総額がある程度大きくなっても、要求するリターンを達成できるだろう。反対に、上場時の時価総額を小さく想定すれば、出資時の時価総額を小さくしなければ、要求するリターンを実現できなくなる。
出資時の時価総額は大きい方が、発行する株式数は少なくて済むため、スタートアップにとっては有利な条件で資金を調達できる。
スタートアップ上場時における時価総額の算出は、業種などにより違いはあるものの、一般には「類似企業比較法」という手法を用いる。
これは、上場企業の中から新規に上場するスタートアップに類似した企業を選び、その企業の指標を用いて時価総額を算出する方法である。なお、スタートアップの類似企業は、規模や成長性などの類似性から、新興市場の企業から選ばれるケースが多い。
代表的な指標としてPER(Price Earnings Ratio)が挙げられる。これは株価を1株当たりの当期利益で除したもので、株価が1株当たりの当期利益の何倍の水準にあるかを表している。
株価に発行済み株式数を乗じたものが時価総額、1株当たりの当期利益に発行済み株式数を乗じたものが当期利益であるため、スタートアップの当期利益に類似企業のPERを乗じることで、時価総額を算出することができる。
時価総額=当期利益×PER
株式市場が好調で類似企業の株価が上がっている時は、PERの水準も上昇することが多く、投資家の立場からすればスタートアップの時価総額は割高になると言える。類似企業の株価が下がっているときは、その反対の理屈が成り立つ。
コロナ禍の影響により株価が下落した際は、スタートアップの時価総額が割安になり、出資や買収の好機が訪れると思われた。しかし、新興市場の株価指数はわずか数カ月で回復し、Withコロナ時代に成長が期待できるスタートアップの時価総額は、むしろ割高になってしまった可能性がある。
この状況が続くようであれば、割安な価格での出資や買収を目論んでいたベンチャーキャピタルや企業にとっては、思惑が外れることになるかもしれない。
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