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  • “配車アプリ”が銀行に、シンガポールの「デジタルバンク免許交付」をどう見るか

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  • 2020/12/11 掲載

“配車アプリ”が銀行に、シンガポールの「デジタルバンク免許交付」をどう見るか

FINOLAB コラム:

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新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、発表が遅れていたシンガポールの新たな「デジタルバンク」ライセンスの交付結果がついに明らかになった。「店舗ネットワークを前提としないデジタルチャネルによる銀行」に対し、設立のための免許を発行する背景には何があるのだろうか。

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。

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シンガポール当局が定めた「デジタルバンク」とは
(Photo/Getty Images)

シンガポールの金融規制当局が発表した「デジタルバンク」

 シンガポールの金融規制当局であるMonetary Authority of Singapore(MAS)は、2020年12月4日に、2019年に募集したデジタルバンクの免許を4社・グループに与えることを発表した。新しい銀行免許は次の2種類からなっている。

・Digital Full Bank(DFB)
 支店の設置を必要とせずに、個人・法人とすべてのセグメントから預金を集めて各種銀行サービスの提供ができる銀行免許である。

・Digital Wholesale Bank(DWB)
 支店の設置が必要ない点はDFBと同じであるが、銀行サービスを提供できる顧客セグメントが、中小を含む法人に限定されている点がDWBの特徴である。

 発表となった免許が与えられる予定のDFB2社・グループ、DWB2社・グループ、合計4社・グループは以下の通りである。

デジタルバンクの分類 MASが発表した企業もしくはコンソーシアムの名称 企業もしくはコンソーシアムの説明
Digital Full Bank(DFB) A consortium comprising Grab Holding Inc.and Singapore Telecommunications Ltd. 配車アプリから金融サービスに拡大しているGrabと通信大手SingTelの連合軍
An entity wholly-owned by Sea Ltd. ネット企業であるSeaは、ショッピングサイト(Shopee)やオンラインゲーム(Garena)で有名、決済サービス(Sea Money)提供
Digital Wholesale Bank(DWB) An entity wholly-owned by Ant Group Co. Ltd. 中国ネット大手アリババの金融子会社であるAnt Financial単独での参入
A consortium comprising Greenland Financial Holdings Group Co. Ltd, Linklogis Hong Kong Ltd, and Beijing Co-operative Equity Investment Fund Management Co. Ltd. 不動産取引を中心とするGreenlandと深浅から香港で金融ビジネスを展開するLinkogisと、北京の投資集団が組んだ中国企業の連合軍

 MAS長官のラビ・メノン氏は、発表にあたって以下のようなコメントを発表している。

「MASは、厳格なメリットベースのプロセスを適用して、強力なデジタルバンク候補を選択しました。新しいデジタルバンクが既存の銀行と並んで繁栄し、特に現在十分なサービスを受けていない企業や個人に質の高い金融サービスを提供することによって、業界水準を引き上げることを期待しています。こうしたデジタルバンクは、将来のシンガポールのデジタル経済発展のために、金融セクターをさらに強化していくものと期待されます」

デジタルバンク導入の経緯を解説

 デジタルバンクの導入についてのMASからの正式発表は2019年6月28日である。その際に既存行のネットバンキングとは別に、店舗ネットワークを前提としないデジタルチャネルによる銀行設立に対して免許を発行し、その申請を受け付けることが明らかにされていた。

 シンガポールの金融業界におけるイノベーションを促進するだけではなく、これまで金融サービスにアクセスできなかった社会階層が利用できるようなサービスメニューやインターフェースの構築が期待されることにも言及されている。

 この背景には、欧米でチャレンジャーバンクと呼ばれる新興銀行サービスが拡大していることがある。これに加え、既存のテクノロジー企業やリテール企業の金融サービスへの参入も目立ってきており、規制に守られてきた銀行の免許についても範囲を拡げるべきとの意見が強くなってきている点も背景の1つに挙げられる。

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店舗ネットワークを前提としないデジタルチャネルによる銀行設立に対して免許を発行する背景にはチャレンジャーバンクがある
(Photo/Getty Images)
 

【次ページ】申請から審査・発表までの道程

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