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  • 2021/06/30 掲載

与党の「提言」から読み解く、金融イノベーションの重点施策とは何か

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日本の金融分野は、デジタル化やフィンテックなどによる金融イノベーションの進展、金融取引の高度化や資金調達手段の多様化などで、市場の複雑化や大きな環境変化が起きている。さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、日本社会や経済に深刻な影響を与え、事業者への資金繰り支援や地方創生の取り組み強化などが課題となっている。こうした状況の中、自民党の金融調査会は2021年5月21日、日本の金融の在り方に関する新たな提言を公表した。今回は、その中から「金融イノベーション」関連に焦点を当て、進捗状況と今後の課題などを解説していく。

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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与党の「金融の在り方への新たな提言」にみる金融イノベーションの現在地とは
(Photo/Getty Images)

与党の金融調査会の「金融の在り方への新たな提言」とは?

 自民党の金融調査会は、山本幸三(衆議院議員)調査会長の下で2018年10月以降、日本の金融の在り方に関する議論や過去2回にわたり提言してきた組織だ。従来からの調査会本体と「企業会計に関する小委員会」に加え、数々の金融関連のプロジェクトチーム(PT)を立ち上げている。

 具体的には、2018年に「金融イノベーション加速化PT」「地域金融機関経営強化力PT」「金融市場強化・保険PT」を新設、さらに2019年には「デジタルマネー推進PT」を追加し、2020年には地域金融機関経営強化力PTを「地域金融機関に関する小委員会」に改組し、新たに「金融における新国際秩序戦略PT」を追加してきた。

 同調査会は2021年5月21日、これまでの提言に基づく成果を総括し、今後の課題に向けて、新たに主要な7項目などの提言を公表した。金融調査会の提言の骨子は、以下の通りだ。

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金融調査会の提言概要
(出典:自民党 金融調査会の公表資料を元に、筆者加工・編集)

「オープンAPI活用でWin-Winな関係を」

 金融ノベーション加速化PT(座長:木原誠二 衆議院議員)では、金融サービスのアーキテクチャについて、川上から川下まで金融機関によって独占されている問題点を指摘している。今後、チャネルの多様化や金融アンバンドリングなどによる提供事業者の多様化を通じて、「デジタル・プラットフォーム型の金融アーキテクチャ構築」の必要性を示している。

 具体的には「フィンテック企業向けの新たな枠組みとして、金融サービス仲介法制を実現し、当局への申請をワンスオンリー化する」ことや、「銀行と資金移動業の間に新たな類型を設置し、決済法制全体の横断化と柔構造化に向けた制度を整備する」ことを挙げている。

 政府は2020年3月、銀行、証券、保険すべての分野のサービスをワンストップで提供できる金融サービス仲介業や、100万円超の送金が可能な資金移動業の類型の創設などを盛り込んだ法律案を国会に提出した。

 この法律案は「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律案」として2020年6月に成立し、2021年に施行される。金融調査会では「制度施行後も提言の趣旨を踏まえつつ、事業者を適切にモニタリングしていくべき」とコメントしている。

 また、「銀行とフィンテック企業のオープンAPIについて、双方にとってWin-Winとなるように推進すること」も挙げている。オープンAPIを介した連携が着実に進展し、金融のデジタル化を視野に入れた制度整備が進んでいる一方、銀行など既存金融機関におけるビジネスモデルの変革は道半ばの状況だといえる。

 そのため、金融調査会は政府に対して、金融部門におけるイノベーションを加速する観点から「日本の決済システムの中核を担う銀行間決済システム改革」への取り組みや、顧客基盤と社会的信頼を有する銀行グループが、そうした強みを生かして「日本経済全体のデジタル化、地方創生、SDGsの推進といった課題解決に貢献するための規制見直し」などを提言している。

 たとえば、銀行間決済システムの改革では、コスト実態を反映した「銀行間手数料の合理的な水準への引き下げ」が2021年10月から実施される予定だ。内国為替制度運営費を新設し、従来の銀行間手数料を廃止するなど、これまで40年以上変更がなかった部分が見直されている。

【次ページ】参加資格の拡大など「全銀システム改革」への動きも注視

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