• 2026/04/24 掲載

金融庁「AI新ルール」徹底解説、顧客対応に“生成AI”はどこまでOK?どこからNG…?

金融庁「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」を読み解く

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金融庁は3月3日、「AIディスカッションペーパー」の最新版(第1.1版)を公表しました。初版(第1.0版)から1年間が経ち、金融機関の事務作業などの分野では生成AIの利用が一定の広がりを見せる一方、顧客の目に触れる部分での積極的な活用事例は限定的です。顧客向けサービスで導入する際のリスク管理に焦点を当ててアップデートを加えた改定版のポイントを、一挙解説します。
編集:ジャーナリスト 川辺 和将

ジャーナリスト 川辺 和将

元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」

  執筆:小達 紀治
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金融業界におけるAI活用に向けた論点のマッピング
(出典:金融庁公表資料より)

なぜ今、金融庁は「AI新ルール」を出したのか?

 AIディスカッションペーパーは、銀行、証券、保険など金融業界におけるAI活用の方向性について官民で目線合わせを進めるため主要な論点を整理した資料です。

 金融庁は2025年3月に「第1.0版」を発表しました。これは、金融機関でのAI利用の実態調査を踏まえ、AI導入にあたって必要となるデータ整備やリスク管理、ガバナンスのあり方について、その時点で重要と考えられるポイントをまとめたものです。

 その後、同年6月から12月にかけて、金融庁は事業者と意見交換を行う「官民AIフォーラム」を複数回開催しました。このフォーラムでは、顧客向けサービスにAIを導入する際、AIを想定せずに作られた既存の法制度との整合性について、行政としての考え方を明確にしてほしいという声が多く上がりました。

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【画像付き記事全文はこちら】
AIDP改定版のポイントと主な追加事項
(出典:金融庁公表資料より)

 こうした議論を踏まえて、金融庁がこのたび公表した「1.1版」。基本的な構成については「1.0版」を引き継ぎつつ、(1)顧客向けサービスを念頭としたリスク低減の取り組み事例、(2)諸法令・規制の考え方、(3)AI利活用の実践──この3つの点にフォーカスした記載が加えられています。ここからは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

改訂版の論点(1):顧客向けサービスのリスク低減の事例

 AI官民フォーラムでは、一部の事業者から、生成AIの先進的な事例が紹介されました。たとえば、コールセンターでの一部顧客対応や営業支援のように、顧客と間接的にやり取りするシステムに、生成AIを組み込んでいるケースもあります。また、顧客が住所変更手続きを行う際に、生成AIを組み合わせたアバターが対応するサービスを始めたという例も取り上げられました。

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顧客向けサービスで進む目線合わせ
(出典:金融庁公表資料より)

 こうした事例を踏まえ、金融庁は改定版で「顧客への資産運用に関する相談対応やコンサルティングなど」を含め、「より金融サービスの本業に近い領域で生成AIを直接顧客向けに活用するような高度なサービスを提供する未来も展望される」との認識を示しています。

 その上で改訂版では、顧客向けサービスにおけるリスクを抑えるための具体的な対応策として、いくつかの取り組み事例を紹介しています。具体的には、システムプロンプトやRAG(検索拡張生成)を活用して回答内容をコントロールする方法や、より高性能なLLM(大規模言語モデル)の選定、ファインチューニングなどです。

 また、投資勧誘に際して「必ず儲かる」といった断定的な判断を示したり、コンプライアンス上、不適切な回答を行ったりといった事態を防ぐため、「回答内容にフィルタリングを設けるなどの重層的なガードレールを設定する」といった検討も進められているといいます。

 サービス設計の観点では、特に導入初期において、AIが対応するサービスと人間が対応するサービスを利用者が選べるようにすることや、まずは事務手続きなど比較的リスクの低い領域からAIの活用を始め、知見を蓄積しながら金融取引などの中核業務へと段階的に適用範囲を広げていくアプローチが示されています。その上で、「こうした対策が適切に機能しているかについて、リリース前に十分なテストと検証を行うことが重要である」と強調しています。

 顧客への説明・注意喚起や、運用状況の記録については、それぞれ以下のような実践例や検討例を含む対応の選択肢を紹介しています。

■説明・注意喚起
  • 顧客が生成AIサービスの利用を開始する前に、以後は生成AIによる回答であることや、生成AIの特性上、誤りが含まれうることなどについて注意喚起を行う
  • テキストだけでなく動画や図解などを用いた直感的に理解しやすい回答を用意する
  • あらかじめ顧客との対話にいくつかのフェーズを設け、フェーズごとに顧客の理解を確認するステップを踏まない限りは次のフェーズに進まない設計とする
  • 顧客に回答の根拠・情報ソースを明示する設計とする
  • 顧客の選択で、いつでもAI対応から有人対応へ移行できるようにする

■運用状況の記録
  • リスクの高い場面を中心にAIと顧客との会話ログを保存し、不適切な回答がなされていないかをモニタリングし、必要な場合に顧客にフォローアップの連絡を行う態勢を整える
  • AIにより特定の金融商品に偏った勧誘などを行っていないかなどについての客観的な数字を用いた確認・検証
  • 推奨ロジックの文書化と第三者レビューを通じたモニタリング

 その上で、ガバナンスの観点では、AIの用途などに応じたリスクベースのアプローチの重要性を指摘。「AIのように技術進展が著しく不確実性が高い領域にあっては、事前にルールを設定することは困難」としつつ、達成すべきゴールを明確化した上で、「ライフサイクルを通じてリスクマネジメントを行うアジャイルなガバナンスが必要」と記載されています。 【次ページ】改訂版ポイント(2):法制度との整合性は? AIと個人情報の関係は?
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