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  • 2021/06/28

「デジタル給与払い」でどう変わる? メリットは? 利用拡大のための2つの条件

2021年度内にもデジタル給与払いが解禁されるかもしれない。数年でスマホ決済サービスの利用者も大きく伸びたとはいえ、その恩恵の多くは学生や外国人、海外赴任者がこうむることになりそうだと言われる。日本の労働人口の多くを占める中高年は、果たして銀行振込に替えてデジタル給与払いを選ぶのだろうか。デジタル給与払いとスマホ決済サービスが与えるメリットと課題を洗い出した。

シニアジョブ 代表取締役 中島康恵

シニアジョブ 代表取締役 中島康恵

50代以上に特化した人材紹介、人材派遣を提供するシニアジョブ代表取締役。1991年、茨城県生まれ。少年~学生時代はサッカーに打ち込み、J1のユースチームで活躍。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓った。売上前年比が最高で300%に及ぶ成長を続け、現在に至る。専門紙を中心にシニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中。

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いよいよデジタル給与払いの解禁が行われそうだ
(Photo/Getty Images)

デジタル給与払い、中高年からは反対や不安も

 デジタル給与の解禁が迫りつつあるようだ。安倍政権下からキャッシュレスを目指す動きが加速しており、厚生労働省は2021年4月、給与のデジタル払いに関する制度案を提示した。2020年7月には閣議決定されていたスマートフォンの決済アプリへと給与を入金するこの方針は、早ければ2021年度中にも制度化されるという。

 当然ながら2020年から加速している他のデジタル化政策同様、反対や懸念の声も多い。私自身も経営者であるため、手数料が抑えられそうなスマホ決済アプリでの給与振り込みに関心が高いが、仕事柄、多くの中高年の求職者と接する身としては年配の方の不安や懸念も分かるし、直接耳にすることも多い。

 実際には中高年であっても、すでにクレジットカードや交通系ICカードなどによるキャッシュレス決済については多くの人が日常的に使っており、また、PayPayやLINE PayといったQRコード決済サービスについても中高年の利用者は少なくない。

 にもかかわらず、中高年を中心にデジタル給与払いへの反対や不安が聞かれるのはなぜだろか。デジタル給与払いが中高年に与えるメリットと、どこがさらに充実すれば導入が前向きに捉えられるのか進むかを考察した。

デジタル給与払いのメリットとは

 今回のデジタル給与払い解禁では、最終的に労働者が給与の入金方法を選べるので、スマホ決済でなく従来の銀行振込を選んでも困ることはない。もっとも、実は銀行振込も労働者が同意した場合にのみできる「例外」で、本当は現金手渡しが原則だ。

 日本ではまだまだ現金信奉も根強く、小売店や飲食店もすべてがキャッシュレスに対応しているわけではない。たまにキャッシュレス専用レジでまごまごしている人を見かけるようにもなったが、現金が一切使えない場面は少ないため、スマホ決済を使用しなくとも困らない、使用にメリットを感じない人がいるのは不思議ではない。

 今回、デジタル給与払いが可能になることでもっとも恩恵を受ける層は、学生や外国人、海外赴任者などだという。学生や外国人などでは銀行口座が持ちにくく、手軽に利用しやすいスマホ決済は重宝するし、外国人の場合は母国への送金も行いやすい。海外赴任者も海外でそのまま使える決済サービスに入金されれば、お金の出し入れや通貨交換の手間が省けて便利だ。

 だが、労働人口の中で上記のような層は一部であり、大半の人は「デジタル給与払いが絶対に必要」なのではなく、「デジタル給与払いだと便利」くらいの恩恵しかない。反対する立場の人や中高年にとっては、具体的なメリットを感じにくいのではないだろうか。

 実は中高年でもスマホ決済を始めとしたキャッシュレス決済の普及が伸びた出来事があった。それは2019年10月の消費税増税に伴い、政府が打ち出したキャッシュレス・ポイント還元事業である。

 キャッシュレス・ポイント還元事業に申請・登録した事業者のECサイトを含む店舗で買い物をすると、中小企業の店舗で5%、大手フランチャイズ加盟店舗で2%のポイント還元を受けることができた。消費税増税で本来なら支出が増えるところ、条件によっては増税分以上の還元が受けられるため、中高年であってもキャッシュレス決済を使い始めた人が増えた。

 キャッシュレス・ポイント還元事業は2020年6月に終了したが、スマホ決済サービスでは導入促進のためなど、自前や提携先とのポイントキャンペーンが今もさまざま展開されている。こうしたポイントはもちろんメリットの一つとなる。クレジットカードでもポイントが貯まるが、似たようなものと考えれば、中高年の心理的ハードルも低いだろうか。

 スマホ決済サービスでは給与を払う側、つまり企業の振込手数料が銀行振込よりも安くなることで、日払いや週払いなど短期間での給与振込も柔軟に対応できるのではないかとも言われている。これは、日雇いやアルバイト、パートタイマーなどの労働者にとっては大きなメリットになるだろう。

 中高年も40代・50代では正社員が少なくないが、60歳を超えると契約社員や嘱託の割合が増え、パートタイマーも増えるため、短期間で給与が振り込まれることをメリットに感じる人が増えるかもしれない。

 また、本業だけでなく副業で収入を増やす人も増えてきているが、この場合にも単発の仕事の収入が短期間で振り込まれるかもしれないスマホ決済サービスは有効だし、銀行口座と分けて使いやすい点がメリットになる可能性がある。

 さらにこれは今の時期に限ったメリットかもしれないが、新型コロナウイルス感染防止の観点からも非接触のスマホ決済サービスのメリットが一つ増えそうだ。西村厚生労働大臣が5月3日に出演した番組で「紙幣に付着したウイルスは約1周間生きている」と述べた。実は世界保健機関(WHO)は、2020年2月の段階で紙幣がウイルスを拡散している可能性に触れ、非接触決済の使用を提言していた。

 新型コロナは高齢者が感染しやすく、重症化もしやすいため、感染防止のためにスマホ決済サービスを用いることもメリットと言える。今後、コロナ禍が収束したとしても、インフルエンザやノロと言ったウイルス感染症は毎年流行しており、年齢を重ねるごとに抵抗力の低下から死亡しやすくなることを考えれば、コロナ収束後も中高年がスマホ決済で接触を減らすことは、重要な感染症対策の一つとなるだろう。

 最後のメリットは、正しくは“今後メリットになるであろうもの”であるが、スマホ決済サービスとスマホ証券の連携がある。スマホ証券はスマホのみで株の売買ができるサービスだが、今のところスマホ決済サービスとは別に進化しており、出入金は証券会社の口座と銀行口座をインターネットで用いることが主流だ。これに対し、One Tap BUYが1月にPayPay証券となり、LINE証券もLINE Payからの入金ができるようになった。今後、スマホ決済サービスとの連携が盛んになることが予想される。

 中高年の大きな関心事の一つとには、老後資金のための資金運用があるが、70歳まで働き続ける時代の中、毎日パソコンで株取引をしたり、ましてや証券会社に出向いてやり取りしたりといった時間は取りづらくなり、若者と同様にスマホ証券を活用することが増えるだろう。

 その場合も、スマホ決済サービスは便利さや、手数料の安さから選ばれやすいサービスとなる可能性がある。もっとも、投資に限らず、利用できる場所が広がれば広がるだけ、スマホ決済サービスのデメリットが減り、メリットが多くなることは確かだ。

【次ページ】デジタル給与払い解禁で新たな詐欺も

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