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  • 2021/11/05 掲載

ファミマの「デジタルマーケティング戦略」、役員に聞いたファミペイの絶大効果

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ファミリーマートは、1989年のPOSレジ導入以降、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との協業による「ファミマTカード」の導入など、顧客最適な提案を実現するためのデータ収集・活用に取り組んできた。近年は、自社アプリ「ファミペイ」や決済サービス「ファミペイ決済」の開発・導入、さらには購買データを活用した広告事業に関する企業「データ・ワン」の設立などに取り組んでいる。ファミリーマート新規事業開発本部執行役員、(現、データ・ワン出向)の井上博之氏に、同社のデジタルマーケティング戦略の歴史と、データ利活用のポイントについて話を聞いた。
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ファミリーマートの成長を支える「デジタルマーケティング戦略」のポイントとは?同社の徹底した顧客データ分析に基づくマーケティングの事例を紹介します
(写真:當舎慎悟/アフロ)

ファミマのデータ分析の変遷、「ファミマTカード」の絶大な効果

 1980年代頃、ファミリーマートでは商品に貼り付けた値札を見ながらレジに手打ちで金額を入力していくという運営をしていました。当時は、店舗運営において在庫や売上データが蓄積されていかない状態があり、売り場の品ぞろえや発注は店舗の人間の勘に頼るという状況でした。

 その後、POSレジを導入したのが1989年です。POSレジ導入によって、その店で売れた商品と売れた時間が分かるようになり、欠品ロスと廃棄ロスを大幅に削減できました。

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POSを導入した結果売上が伸長し廃棄ロスが削減した
(出典:ファミリーマート)

 しかし、集まったデータから分かるのは「売れたか、売れなかったか」の情報のみです。ある日突然ある商品が売れたり、売れなかったりすることが起きた場合、「どのような要因によるものなのか」までは分析できませんでした。

 そこから、もっと詳細なデータを得ることができないかと議論が始まり、当時圧倒的なシェアを持っていたTポイントの運営会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と協業し、2007年に共通ポイントを導入することになりました。これにより、会員情報に紐づいた購買情報を取得できるようになり、消費者の行動を深く分析できるようになったのです。

 導入の効果は明確に表れました。まず、Tポイント導入後、ファミマ会員数の増加率がアップしたほか、ファミマTカードを持っている方とそうでない方とでは、店舗への月間来店数に倍以上の差がついたのです。

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ファミマ会員の推移
※緑の棒:Tポイント導入前
※黄色の棒:Tポイント導入月
※茶色の棒:Tポイント導入後
(出典:ファミリーマート)

個別最適な提案を実現した、ファミマの「CRM構築」

 共通ポイントを導入したことにより、顧客情報を活用できるようになりました。次に我々が目指したのはCRM(顧客関係管理)の構築です。当初、当社はCRMにノウハウがなかったため、CCCの協力を得ながらCRMを共同で構築していきました。

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ファミリーマート
新規事業開発本部 執行役員
(現、データ・ワン出向)
井上博之 氏

 CRM構築による効果としては、「過去にお客さまがどのような買い物をしていて、どのような好みを持っているか」が仮説だてることが出来ます。例として、ひんぱんにビールを買っているお客さまに対して、レジでビールの新商品のサンプリングを提供させていただくことも可能になりました。

 ほかにも、季節商品の冷やし麺を例にとると、外気温が25度以上になると売上が大幅に増加することがPOSデータで分かっていました。ただし、冷やし麺は「冷やし中華」と「割子そば」に分かれます。お客さまそれぞれで好みに合わせた提案をするため、冷やし中華をよく買っているお客さまに対しては「冷やし中華のこんなキャンペーンをやります」「新製品の冷やし中華はこんなところに力点を置いています」といった情報をレシートに記載し、個別最適な提案にこだわりました。

 顧客情報を突き詰めていくことで、お客さまにとって必要な情報を喜んでいただけるタイミングで提供することが可能になります。お客さまに喜んでいただき、次もファミリーマートに来店していだたくことが、我々のCRMの基本であり目的です。

顧客の声(定性データ)を生かした商品開発とは

 ただし、まだまだ必要な顧客情報が入手できているとは言えませんでした。「20代の女性がいつ、どの店で、どんな商品を、どのくらい購入したのか」という定量データは分かりますが、リピートが発生しなかった場合に、その理由を知るすべがありませんでした。つまり、定性データは追えていなかったのです。

 そこで当社は、これまで以上にお客さまから寄せられた意見を丁寧に分析することにしました。たとえば、商品の改善点を知りたい場合には、その商品を購入したお客さまのレシートにQRコードからアンケートサイトに誘導する仕掛けを用意します。「お買い上げいただいた商品はいかがでしたでしょうか」とアンケート画面を出し、「見た目」や「味」や「問題点」などの定性情報を収集する仕組みとなっています。

 もちろん、アンケートの回答率を上げるためのインセンティブとして、「記述していただいた場合はTポイントを10ポイント、選択肢を選んでいただいた場合は5ポイント差し上げます」といった仕掛けを作りました。

 こうした定性情報が商品開発のヒントになることもあります。たとえば、『エビとイカのトマトスパゲティ』という商品があります。販売当初は「商品の具材がよく見えた方がきれいである」と考え、具材であるエビとイカの下にトマトソースを敷いて販売していました。

 ところが、購入した多くのお客さまから寄せられた感想は「味は良いのに、ソースが見えないと、まずそうに見える」というものでした。それならソースの位置を変えよう、ということになり、生産ラインを変更しソースを上からかける形に変更したら、売上が急増したのです。

 こうした例はたくさんあります。これは数字を分析するだけでは分からないことでした。

【次ページ】「ファミペイ」が超顧客目線と言えるワケ

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