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- 2022/03/09 掲載
グーグルや欧米金融当局が警戒する「AI審査」最前線、そのリスクとは何か?
英国での「AI審査に対する警告」
英国の金融当局は、貸出などの信用審査において人工知能(AI)を活用しようとしている銀行に対し、AIの利用を許容した。ただし、「マイノリティー(社会的・民族的な少数者)への差別を助長しないことが確認できる場合に限って」という条件付きである。具体的には、当局が大手行に対し、審査プロセスへのAI導入によって金融取引を行う消費者が不利益をこうむらないようにするために、充分な保全措置を講じることを要求しているとのことだ。
米国におけるAI審査からの「消費者保護論」
また、米国においてもConsumer Financial Protection Bureau (CFPB:消費者金融保護局)が、「AIやアルゴリズムがバイアスを完全に排除することは難しい」と指摘。融資に申し込む消費者が公平に扱われない可能性があることから、与信審査にAIを活用しようとする金融機関やフィンテック企業には規制が必要との考えを明らかにしている。
特に、AI審査によってどのようなロジックで結果が導き出されたのかわからないようになるとすれば、利用者にとって公正なサービスとは言えない点を強調している。
なぜAI審査が金融機関に必要なのか?
こうした方針が出てくる背景には、多くの商業銀行がAIや複雑なアルゴリズムを活用することによって融資審査の自動化を進めようとする動きがある。融資を希望する人の年齢や性別、住所、職業、金融取引履歴などさまざまな個人情報を基に、従来は労働集約的に行われていた審査業務をAIに委ねようとしているのだ。自動化を進めることによって、従来は数日から1週間ほど結果が出るまでにかかっていた個人ローンの借入可否がほぼリアルタイムで判明するだけでなく、これまで業務に携わってきた多くの審査担当者が不要になる。
結果として、顧客満足度は向上し、従前より多くのローン申込みを受け付けることができるとともに、事務処理のコストを大幅に下げることが見込まれる。
金融機関が「AI導入による差別解消」を主張するワケ
英米どちらにおいても、人種的な偏見が与信審査にも影響を及ぼすことから、民族的マイノリティーは融資審査において不利な立場にあると考えられてきた。一方で、AIを導入しようとする多くの金融機関は機械学習技術を導入すれば、融資判断での差別を減らす可能性を示唆している。
銀行によっては「AIは無意識のうちに人種差別をする人間のような主観的かつ不公平な判断を下さない」という論拠から、偏見の源となる人間による意思決定を排除することが解決策になると考えられている。
【次ページ】AI/ビッグデータによる審査の「リスク」とは
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