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  • 2021/06/22

潮流で理解する「BaaS」「埋込型金融」、海外と日本での最前線とは

連載:小俣修一のデジタルバンキング・マンスリーレポート

英レイルズバンクがエンベデッドファイナンス(埋込型金融、Embedded Finance)でフィンテック企業 Plaidと協業するなど、海外では「ネオバンク」や「チャレンジャーバンク」から、さらに進化を続けるデジタルバンクの状況について報道が過熱している。今やデジタルバンクは、フィンテック企業や一般企業をも巻き込む「BaaS(Banking as a Service:銀行の機能をサービスとして利用できるようにすること)」を使った「埋込型金融」、つまり「金融サービス・インテグレーション」の時代へと向かっている。世界と日本の状況を併せて解説する。

小俣 修一

小俣 修一

1979年、慶大大学院修了。 地域金融機関の企画部門に勤務後、コンパックコンピュータ、NTTソフトウェアを経て2005年アカマイ・テクノロジーズ社長、米国本社ヴァイスプレジデント、日本法人会長を歴任。16年ニッキン特別顧問、20年12月みんなの銀行社外取締役に就任。欧米のデジタル・バンキングの事情に精通。国内の金融機関からデジタル戦略をテーマに、数多くセミナー依頼を受ける。

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なぜ「BaaS」「埋込型金融」の勢いが止まらないのか
(Photo/Getty Images)

2021年5月の「デジタルバンキング」海外ニュース

 それではまず、2021年5月の海外の「デジタルバンキング」関連ニュースで筆者が注目したものをみていこう。前回は仏中央銀行の「ネオバンク」という言葉の使用に対する警告ニュースに接し、「デジタルバンク」に対するネオバンクやチャレンジャーバンクの位置づけや基礎的な言葉の定義を整理した。連休が明けてすぐに、米国でもカリフォルニア州の規制当局によって、ネオバンクのチャイム(Chime)が「バンク」という言葉の使用を止めるよう指導された。

 Chimeは使用中止を受け入れたが、Forbes誌は「Chimeが、もし銀行でないなら何なんだ」という記事を掲載。一方、英国では5月18日付で英国金融行為規制機構 (FCA) がペイメントサービスと電子マネーの認可・登録を受けている事業者宛「銀行(バンク)ではないことを顧客に明確化する」よう書面で要求した。

 様子を見守りたいが、これによって全世界的に『銀行のように見えるが実際にはそうではない』フィンテック企業での、特に「ネオバンク」という言葉の使用が難しくなっていくのだろうとみている。日本では金融サービス仲介業の新設が注目されているが、筆者はその中にも今までの認識で「ネオバンク」と呼ばれたい企業があるのだろうとは考えている。

 今月はそんな「ネオバンク」や「チャレンジャーバンク」から、さらに進化を続けているデジタルバンクの状況について触れてみよう。

 クリス・スキナー(Chris Skinner)氏によれば、『技術を用いて金融を再発明しようとしているフィンテック企業は、イノベーションと変化/適応性と柔軟性/陳腐化とアップグレードからこのデジタル変革を捉えている。一方、金融から技術にアプローチする伝統的金融機関は、規則や規制/安全とセキュリティー/回復力や信頼性に根差してデジタルバンキングへのパラダイムシフトを考えている』という。

 フィンテック企業と銀行の両方から金融と技術の融合を模索し合ってきた時を経て、今やデジタルバンクは、フィンテック企業や一般企業をも巻き込むBaaS(Banking as a Service)を使った、「エンベデッドファイナンス(埋込型金融)」(embedded finance、金融以外のサービスを提供する事業者が金融サービスを既存サービスに組み込んで提供すること)、つまり「金融サービス・インテグレーション」の時代へと向かっている。


2021年5月に筆者が注目した「デジタルバンキング」関連ニュース
日付 ニュース内容
5月3日 マスターカード(Mastercard)、デジタル人民元の海外送金取扱ができないか検討
5月6日 ネオバンク Chime、カリフォルニア規制当局の反対で「バンク」を使わないことに同意
チャレンジャーバンクのRevolut、ビットコインの引出しでパブリックβ版を公開
英国のBaaS Railsbank、埋込型金融(Embedded Finance)領域でフィンテック企業 Plaidと協業
5月7日 Citi、仮想通貨の騒ぎに参戦することを検討中
5月11日 チャレンジャーバンクのRevolut、レジ精算時に自動的に割引提案を提示する機能を開始
5月12日 シルバーゲート銀行(Silvergate Bank)、米国に軸足を移したFacebookの米ドル建Diemを独占発行
5月13日 US Bank、データ共有でPlaidと契約締結
5月14日 Facebook、アイルランドからUSへ個人情報の持出しを禁じられる
5月18日 英国金融行為規制機構 (FCA) 、英国のフィンテック企業に顧客へ銀行でないことを明確とするよう要求
5月19日 ユニオン・バンク・オブ・フィリピン(Union Bank of the Philippines)、AWS上でコア・バンキングシステムを稼働
5月21日 JPモルガン(JP Morgan)のブロックチェーン関連の事業を統括する新事業ユニット「Onyx」が海外送金基盤を公開
5月25日 Square、普通預金口座での金融サービスを拡大
Revolut、法人口座に請求書発行・処理機能を追加
(出典:筆者作成)


「BaaS」「埋込型金融(Embedded Finance)」とは

 BaaSとは、一般に「銀行が提供する機能やサービスをクラウドサービスとしてAPIを介して提供すること」とされる。そこではBaaS利用企業となる「ブランド」と裏方となる「銀行免許保持行」があり、場合によって「イネーブラー(enabler、手助けする存在)」と呼ばれる金融サービス関連システム提供者(BaaS基盤とAPIの提供者)が介在している。フィンテック企業と銀行免許を保持する銀行の関係がネオバンクの形でAPI接続されたのが原形とされる。

 銀行・フィンテック企業どちらがBaaS基盤を提供するに関わらず、そのBaaSの先で一般企業がEmbedded Finance、つまり金融以外の事業者が金融サービスを既存サービスに組み込むことで、提供しやすい「埋め込まれた金融サービス」を社内利用したり、「ホワイトラベル・バンキング」の形で顧客へ新たな銀行サービスとして提供したりするようにもなってきた。

 その姿は、一般企業によるBaaSを利用した金融サービス提供と銀行業務処理へと高度化し、マーケットプレイスやエコシステムの形成を経て、さらにスーパーアプリや“IoT化”を目指し発展しようとしているように見える。

 参考にしたい資料として、BaaSではTearsheetや11:FSの資料、埋め込み型金融サービス(Embedded Finance)の市場規模の予測や解説ではSimon Torrance氏のWebサイトがよく知られている。

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次ページでBaaSや埋込型金融と有力サービスを提供する各社との関係を図を紹介する

【次ページ】BaaSや「埋込型金融」の日本事例、あおぞらやソニー、新生など

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