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  • 2022/03/24 掲載

金融商品取引法をわかりやすく解説、やってはいけない「5つの販売・勧誘ルール」とは

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金融商品取引法とは、投資家が安心して投資を行えるような環境を作ること、取引市場の公正性・透明性を向上させることを目指して作られた法律です。同法律では、投資家に金融商品を販売する事業者や、取引参加者が「守らなければならないルール」がいくつも設けられています。具体的な内容をわかりやすく解説していきます。

執筆:1級FP技能士、社会保険労務士 加治直樹

執筆:1級FP技能士、社会保険労務士 加治直樹

1級FP技能士、社会保険労務士。銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。

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金融商品取引法で規制されている内容、禁止される販売・勧誘方法を分かりやすく解説します
(Photo/Getty Images)

金融商品取引法とは

 金融商品取引法とは、投資性(価格が変動するリスク)のある金融商品を取引する消費者を保護するために成立した法律です。

 金融商品取引法が成立したことによって、たとえば、株式や債券、投資信託などの金融商品を取り扱う事業者は必ず内閣総理大臣に申請し、登録業者として認定されなければビジネスができないようになったほか、事業者が消費者に金融商品を販売・勧誘する際に「やってはいけないこと」などを決めたルールが整備されました。

 ここで紹介したのはほんの一部ですが、このように金融商品取引法では、金融商品を買ったり売ったりする消費者が不利益を被らないよう、また透明性のある公正な取引市場をつくるためにあらゆるルールが設けられているのです。ここからは、そんな金融商品取引法を詳しく解説していきます。


金融商品取引法誕生の背景

 個人投資家の「貯蓄から投資」を推進する政府は、金融・資本市場の環境の変化に対応することにより日本経済の発展を目指す中で、2007年9月にいくつかの法律を廃止・統合し金融商品取引法を制定しました。前身の法律は「証券取引法」で、その名を「金融商品取引法」と改名した形です。

 具体的には以下の4つの法律を統廃合し、さらに全89もの法律を改正し、その一部を統合する形で金融商品取引法は作られました。

  • 金融先物取引法
  • 外国証券業者に関する法律
  • 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律
  • 抵当証券業の規制等に関する法律

 証券取引法から金融商品取引法に変わったことで、それまで分かれていた「証券取引所」と「金融先物取引所」は、まとめて「金融商品取引所」に改名されています。

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金融商品取引法では、投資性のある金融商品を取引する消費者を保護するため、さらには透明性のある公正な取引市場をつくるために、あらゆるルールが設けられています
(Photo/Getty Images)

金融商品取引法の「4つのポイント」

 金融商品取引法が定めるルールは、大きく分けて下記の4つになります。それぞれのポイントを見ていきましょう。

  1. (1)投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な利用者保護制(いわゆる投資サービス法制)の構築
  2. (2)開示制度の拡充
  3. (3)取引所の自主規制機能の強化
  4. (4)不公正取引などへの厳正な対応

(1)投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な利用者保護制(いわゆる投資サービス法制)の構築
 金融商品取引法では、投資家保護強化のために、規制対象となる金融商品や業務の範囲を拡大したり、金融商品を取り扱う業者が守るべき販売・勧誘ルールを整備したりしています。対象となる金融商品や業者が守るべきルールについては、後ほど解説します。

(2)開示制度の拡充
 金融商品取引法では、投資家が投資判断材料を入手できるように、上場会社に「四半期報告書」の提出を義務付けています。「四半期報告書」は、公認会計士・監査法人による監査の対象になっており、虚偽の記載があれば罰則や課徴金の対象です。

 上場会社が開示する情報としては、年1回作成される事業内容などが記載された「有価証券報告書」、四半期ごとに提出される「四半期報告書」などがあります。また、有価証券報告書などの記載内容が適切であるかを、利害関係のない公認会計士や監査法人の監査の対象とすることで、内部統制の強化を図っているのです。

(3)取引所の自主規制機能の強化
 株式会社の形態をとる証券取引所は、株式会社として利益を追求するのと同時に、取引所としての公正性や透明性を確保するために、取引者を参加資格を有する証券会社に限定したり、投資対象となり得る企業だけが上場する取引所にするため上場廃止基準に沿って企業を見極めるなど、自主規制業務を行っています。このように、立場上利益相反が生じやすい証券取引所に対し、金融商品取引法では、自主規制業務の適正な運営をさせるためのルールを設けています。

(4)不公正取引などへの厳正な対応(※2)
 金融商品取引法では、投資家保護と取引所の透明性や公正性を確保するために、インサイダー取引や相場操縦、さらには発行体の有価証券届出書の不提出など、あらゆる違反行為に対する罰則を強化しています。

 たとえば、インサイダー取引や有価証券届出書などの不提出の場合は、「5年以下の懲役もしくは500万円以下(法人の場合は5億円以下)の罰金、または併科」という罰則がもうけられています。また、行政処分として「課徴金」の納付が命じられることもあります。

 ここまで紹介してきた4つのポイントのうち、ここからは特に重要な(1)の内容、具体的には規制の対象となる金融商品や業者が守るべき販売・勧誘ルールについて解説していきます。

規制の対象となる「金融商品取引業者」とは

 この法律で規制対象となる業者は、法律上「金融商品取引業者」と呼ばれます。具体的に該当する業者としては、下記などが挙げられます。

■「金融商品取引業者」に該当する業者
  • 証券会社
  • 金融先物取引業者
  • 商品投資販売業者
  • 信託受益権販売業者
  • 投資顧問業者
  • 投資信託委託業者

規制の対象となる「投資性のある金融商品」とは

 金融商品取引法の誕生により、規制対象となる「有価証券」の範囲は大きく拡大しました。金融商品取引法の成立以前の証券取引法では、国債や地方債、社債、株式、投資信託などを有価証券として規制の対象としていましたが、金融商品取引法では「信託受益権全般」に加え、ファンドなどと呼ばれる「集団投資スキームの持分」も有価証券とみなして規制対象に加えています。

■金融商品取引法が規制対象とする金融商品
  • 国債
  • 地方債
  • 社債
  • 株式
  • 投資信託
  • 信託受益権全般
  • 集団投資スキームの持分
  • 多様なデリバティブ取引
  • 暗号通貨(※2020年5月施行の改正金融商品取引法)

 また、デリバティブ取引についても、有価証券に限定せず通貨・金利スワップ取引や天候デリバティブ取引など、多様なデリバティブ取引も対象とし、規制対象となる範囲を拡大しています。

 さらに、2020年5月に施行された改正金融商品取引法では、これまで適用除外とされていた暗号通貨が規制の対象となる金融商品に加わりました。

【次ページ】販売業者が守らないといけない「5つの販売・勧誘ルール」、広告の規制、書面交付義務、適合性の原則、禁止行為、損失補填の禁止とは?

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