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  • 2023/05/25 掲載

幻に終わったLINEバンク、みずほの「悪しき体質」との知られざる関係とは

大関暁夫のビジネス甘辛時評

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LINEとみずほフィナンシャルグループ(以下みずほ)が、共同で開業を目指していた新銀行「LINEバンク」が中止となりました。2018年の計画発表から4年超の歳月の中で、コロナ禍という未曽有の環境変化もあり、ネット銀行やスマホ決済を巡る競争環境も激変した矢先の出来事です。LINEバンクは、流れに乗り切れぬまま今回の中止発表に至った感が強く、この半端な終わり方には両社の絶対的な力不足を感じざるを得ません。今回は、計画頓挫がみずほ、LINE双方に及ぼす影響を探ります。

執筆:企業アナリスト 大関暁夫

執筆:企業アナリスト 大関暁夫

株式会社スタジオ02代表取締役。東北大学経済学部卒。 1984年横浜銀行に入り企画部門、営業部門の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時にはいわゆるMOF担を兼務し、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。2006年支店長職をひと区切りとして独立し、経営アドバイザー業務に従事。上場ベンチャー企業役員を務めるなど、多くの企業で支援実績を積み上げた。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業などのアドバイザリーをする傍ら、出身の有名進学校、大学、銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆やコメンテーターを務めている。

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LINEバンク事業の中止は双方にどんな影響をもたらすのだろうか
(写真:つのだよしお/アフロ)

障害が多すぎた中止までの道のり

 誤算の始まりは、2019年11月のLINEとZホールディングス(以下ZHD)の経営統合でした。ZHDグループにはネット専業銀行の草分けであるPayPay銀行(当時はジャパンネット銀行)があり、この段階でLINEが新たに銀行業務を手掛ける必要があるのかという問題が出てきたと言えます。しかも、PayPay銀行はみずほのライバルである三井住友銀行が大株主であり、これを取り込むことは至って困難な状況でもありました。

 そんな折にさらなる問題が発生します。2020年秋ごろから勘定系システム開発を担当していた富士通と開発費を巡って折り合いがつかなくなり、2021年2月にベンダーを富士通から台湾LINEバンク設立に実績のあった韓国企業に変更し、LINEバンクの開業2年延期が発表されました。

 PayPay銀行の存在を考えれば、この段階で計画中止が決断されてもよかったのではないかと思われるところですが、LINEにとってはグループ内での存在感強化に向け銀行は不可欠な要素であり、みずほ銀行にとっては約9,000万人といわれるLINE利用者の銀行取引への取り込みに魅入られたが故の計画継続であったと推察されます。

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国内約9000万人のLINE利用者を取り込む新銀行設立は、幻に終わった
(Photo:StreetVJ/Shutterstock.com)

 この開業遅延の足をさらに引っ張ることになったのが、2021年みずほ銀行で相次いだシステム障害の発生です。みずほ銀行のシステムへの信頼は地に落ち、金融庁から厳しい業務改善命令が出されたことで新規システム開発の凍結を余儀なくされ、生き馬の目を抜くネット業界における数カ月間の足踏み状態は、LINEバンクの意義ある開業に向けて致命的なダメージを負うことになります。相前後してLINEの中国における個人情報ガードの甘さが問題視される一件もあり、LINEバンク構想は信用面からも窮地に立たされました。

 最終的にLINEバンク構想に引導を渡したのは、今年2月のZHD、ヤフー、LINEの3社統合表明でしょう。ZHDとLINEは経営統合こそ実現したものの双方の重複事業の整備は思うように進んでおらず、統合効果を明確に発揮させるためには重複事業の一体化による効率化が不可欠であるとの判断が、その理由でもありました。すなわち、これによりZHDグループにとっては、LINEバンク設立の必要性ゼロが決定的になったと言えます。

LINEよりみずほのほうが「大ダメージ」のワケ

 LINEバンクの中止がもたらす影響ですが、LINEサイドとなるZHDとしては前述の通りPayPay銀行の存在があるので、グループとしてのダメージはさして大きくないと言えるでしょう。しかし事業体としてLINE単体で考えた場合には、ZHD、ヤフーとの3社統合を前にLINEの存在感を弱め、その立場を悪くする材料になりかねないとも考えられます。

 さらに言えばLINEは金融分野では、LINE証券、LINEほけん、LINEクレジット、LINEペイいずれも赤字運営です。すでにLINEほけんが4月末に一部商品をPayPayほけんに引き続く形での事業終了が決まっており、今回のLINEバンクの中止を受けて他の金融事業も同じ流れになることが容易に想像できるところです。

 すなわち今回の問題を機に、3社統合後のLINEの立場は、単なるコミュニケーションツールとしての「LINE」を提供する1セクションに成り下がってしまう姿さえ目に浮かびます。

 みずほの立場はさらに深刻です。自前では若年層を中心とした顧客層拡大が難しい中で、LINE利用者の取り込みによる事業拡大を狙っていただけに、ライバルのMUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、SMBC(三井住友フィナンシャルグループ)からは大きく後れを取ることになるのです。というのはネットバンキング・ビジネスの領域では、MUFGはauじぶん銀行に出資し連携サービスを開始しているほか、NTTドコモとも共同でデジタル口座サービスを手掛けていますし、SMBCも前述の通りPayPay銀行に出資し、連携サービスを始めているからです。みずほにとってはLINEバンク構想の白紙化で、これからの時代のカギを握る業務がゼロベースからの再構築となり、これはあまりに痛すぎると言えます。 【次ページ】みずほ失敗の「根深い理由」とは

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