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- 2025/12/16 掲載
「法人特化型」で大逆転、GMOあおぞらネット銀はなぜ“トップ”をつかめたか
元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」
銀行の“当たり前”を疑い、利便性を追求し続けた理由
「決して、世の中の流行に合わせて始めたわけではありません。これまでの銀行の常識にとらわれず、お客さまの声に耳を傾け、どうすればより便利に使ってもらえるかを考え抜いた結果、ごく自然な結論としてAPIを活用した組込型金融にたどり着いたのです」──GMOあおぞらネット銀行執行役員の小野沢宏晋氏(営業本部長 兼 カスタマーサポートグループ長)はこう振り返る。今でこそ話題だが、2018年に同社がインターネット銀行事業開始した当時、日本ではまだ、銀行が提供する機能を「クラウドサービス」としてAPIを介して提供する「BaaS(Banking as a Service)」という言葉や概念はあまり浸透していなかった。
小野沢氏を含む創業期メンバーは、銀行法改正を機に海外の先進事例を研究し、この道を歩み始めた。
「私たちは『プラットフォーム銀行構想』を掲げ、事業者さまのサービスに金融機能を埋め込む構想を公表しました。事業開始前に構想をしっかり固めていたからこそ、その後も、既存の金融機関のレガシーに縛られず、エンジニア主導で新しいシステムと事業モデルをゼロから構築する方向へ突き進むことができたのです」(小野沢氏)
一般的に銀行は、勘定系システムという中核にすべての機能が複雑に関連付けられ、外部との連携に相当の手間暇・コストを費やしがちだ。
しかしGMOあおぞらネット銀行はそのハードルを軽々と乗り越え、さまざまな領域の事業者と連携を拡大してきた。
「私たちは後発の銀行の利点を生かし、フロントと勘定系が疎結合になるようなシステムのアーキテクチャを採用しています」と小野沢氏は語る。
「顧客との接点となるフロント部分の機能を柔軟に改修できるため、新たなサービスや機能を迅速に追加できるのです。多くの銀行が長い稼働実績のある既存の勘定系システムに縛られて身動きが取りにくい中で、私たちはスタート当初から最新システムをベースにビジネスを展開することができました。まさに時代の流れに乗っていたのだろうと考えています」(小野沢氏)
FLEXCUBE(オラクル社が提供するコア・バンキング・ソフトウェア・プラットフォーム)を使用する勘定系システムには極力手を入れず、その周囲に独自のフロントシステムを構築することで、迅速な開発と高い柔軟性を両立させている点が同行の特徴だ。
伝統的な銀行の特徴的な「勘定系至上主義」の考え方を脱却し、SIerに依存しない内製態勢を構築した上で、既存パッケージを利用すべき部分と、個別に手を入れるべき部分とをていねいに整理する。この建付けは、他社・他行から移籍してきた人材からも高く評価されているという。
GMOあおぞらネット銀行は、役職員の約4割をエンジニアが占める。こうした人材構成が、ビジネス・制度上の制約と技術的な課題に関するスムーズな相互理解を促し、アジャイルな組織文化の根幹を成しているという。
執行役員の細田暁貴氏(コーポレートコミュニケーショングループ長 兼コーポレートHRグループ長)はこう語る。
「たとえば、ユーザーさまからインターネットバンキングのこのボタンの色が見にくいという声をいただけば、それをすぐに開発部門に伝え、翌月のメンテナンスで修正するといったことが可能です。これは、一般的な銀行では考えられないスピード感ではないでしょうか」(細田氏) 【次ページ】銀行の“当たり前”を疑い、利便性を追求し続けた
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