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  • 2023/05/25 掲載

幻に終わったLINEバンク、みずほの「悪しき体質」との知られざる関係とは(2/2)

大関暁夫のビジネス甘辛時評

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みずほ失敗の「根深い理由」とは

 みずほの「決断の悪さ」は今回に限ったことではありません。その最たるものとして金融界で語り草になっているのが、2008年秋のリーマン・ブラザーズ破綻を受け、信用危機にひんしていたモルガンスタンレーからの出資依頼への対応です。「3日も待ったが、色よい返事がもらえず」(当時のモルガンのジョン・マックCEO)、救済を求める手はライバルであるMUFGに差し出され、MUFGがこれを即決してモルガンへの出資を決めたのでした。このことが現在、みずほとMUFGの時価総額に決定的な差を生んだと言えます。

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みずほはなぜ「決断の悪さ」が目立つのだろうか
(Photo:Ned Snowman/Shutterstock.com)

 こうした「決断の悪さ」は、三行合併行であるみずほ特有の「決められない組織風土」によるところが大きいと言えるのではないでしょうか。MUFGにおける旧三菱やSMBCにおける旧住友のような、確固たる主導権者がないまま発足したみずほは、三者の均衡力学にありがちな、場面、場面で「三者間の遠慮」や「腹の探り合い」や「お互いの責任回避」によって、明確な「決断」が出されずに流れ任せに漂うという状況が、時として重要局面で顕在化するのです。

 先のリーマンの問題だけでなく、繰り返されたシステム障害の根本原因である合併当初のシステム統合の遅れも、リーダーシップ不在が故の中途半端な対応に起因した失策であったように見受けられます。

 今回のLINEバンクの件も、2019年のLINEとZHDが経営統合した段階か、遅くも2021年にシステムベンダー変更を含めた計画の見直しが余儀なくされた段階で、「決断」して別の道を探るべきだったのではないでしょうか。みずほ内部にあったものが、「遠慮」であったのか、「腹の探り合い」であったのか、あるいは「責任回避」であったのかは分かりませんが、モルガンの時と同じく組織風土により後手に回ったことは大いあり得るでしょう。

遅れを取り戻す「起死回生」の道は?

 ではこの先みずほは、どうようにしてライバルからの遅れを取り戻すのでしょうか。

 一番現実的と思われるのは、楽天銀行との提携でしょう。楽天グループとの関係で言えば、昨年800億円を投じて楽天証券の株式を取得し、業務提携関係を結んでいるからです。みずほの狙いはLINEバンク計画と同じく、楽天証券が持っている若年層を中心とした約800万超の個人取引に他なりません。すでにライバルのMUFGがカブドット証券、SMBCがSBI証券との提携を結んでいただけに、ここでも遅れを取り戻すのに必死な姿が見て取れます。

 しかしこの資本提携において、みずほと楽天の思惑が一致しているかといえば、必ずしもそうではありません。みずほの狙いは前述の通り、楽天証券の若年層取引の取り込みですが、楽天はどうなのか。楽天はモバイル事業で大赤字を続けながらも大型投資が必要であり、今何より有利子ではない資金が欲しい状況と言えます。

 すなわち、楽天は提携による業務上のシナジーを求めているのではなく、あくまで目の前の資金が欲しいということであり、この提携が業務面で大きな成果を生むとはどうしても思えないのです。

 この先、仮にみずほが楽天銀行に出資することになったとしても、その資本提携は楽天証券とのそれと同じく、カネがつなぐ関係にすぎないように思えます。もっとも楽天銀行はすでに上場に際して約3割の株を市場に放出したので、追加でみずほに持ち株を売却すれば親会社の支配力が弱まりますし、早々に第三者割当増資をすれば株主利益を毀損(きそん)することにもなりかねません。楽天銀行との資本提携はそう安々とは進まない、そんな状況も見て取れます。

 LINEはこのままZHDに飲み込まれてしまうのか、みずほはこのまま他のメガバンクに差をつけられてしまうのか。LINE銀行計画の頓挫で、両社が共にそのプレゼンスを賭けた正念場に至っていることが、浮き彫りになったと言えるのかもしれません。


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