- 会員限定
- 2025/12/12 掲載
“地銀4割が預金減”の衝撃、北國銀・紀陽銀・西京銀に学ぶ「勝ちパターン」
1979年、慶大大学院修了。 地域金融機関の企画部門に勤務後、コンパックコンピュータ、NTTソフトウェアを経て2005年アカマイ・テクノロジーズ社長、米国本社ヴァイスプレジデント、日本法人会長を歴任。16年ニッキン特別顧問、20年12月みんなの銀行社外取締役に就任。欧米のデジタル・バンキングの事情に精通。国内の金融機関からデジタル戦略をテーマに、数多くセミナー依頼を受ける。
「4割の銀行で預金残高が前年度比減」の衝撃
2025年5月30日付のニッキン(日本金融通信社)本紙は、24年度に地方銀行と第二地方銀行合わせて約100行のうち、4割の銀行で預金残高が前年度比で減少していたと報じた。具体的には、2024年度の地銀預金増減率の内訳として、「前年割れ(-1%以上)」が24行、「ほぼ横ばい(±1%以内)」が34行、「1~5%増」が30行、「5%以上増」が9行という状況とのことだ。
特に注目すべきは、全体の約4割にあたる38行が「預金が実質的に増えていない、もしくは減っている」という事実である。
「ネット経済の対応不足」が引き起こす影響とは
この背景について、日本金融通信社 特別顧問 小俣 修一氏は、従来から指摘されている人口減少、高齢化、経済の成熟化、さらには相続による資金流出といった構造的な要因に加えて、「ネット経済への対応不足」という点が重要なポイントであると説明する。「たとえば今、B2Bの取引の4割ぐらいがネット取引に置き換わってきており、B2Cにしても2~3割に向かっています。リテール全体で無視できないボリューム感がある中で、多くの地域の金融機関がそうしたサービスに対応できていない点が、預金額の減少の本質的な要因の1つになっていると考えられます」(同氏)
また、お金の流れも変化している。従業員の給与や企業の事業売上は銀行口座に入るけど、その支出がECやウォレットに直接流れていく。「金融機関の口座はもうKYCの入り口に過ぎません。そこから先のバリューチェーンに食い込めていない金融機関は、顧客との関係を失っていっています」(小俣氏)
こうした流れを受け、上位40行前後の地銀はすでに「デジタルバンク」化への対応に動き出しているという。ただし、小俣氏は「今行われている多くのデジタル化は、単なる“デジタル化(デジタライゼーション)”に過ぎません」とも指摘する。
同氏によると、多くの地銀のデジタル化とは、既存のホストコンピューターの上にデジタルサービスを飾り付けたようなものだという。その上で、本当の意味での「デジタルバンキング(デジタルな銀行業務処理)」「デジタルバンク」を実現するには、オープンシステム化して、クラウド基盤への移行をすることが必要不可欠だと説く。
その実現なしには、ネット経済のバリューチェーンに参入することは難しいとのことだ。ただ、上位の4割ほどの地銀はその方向性に気づいているが、下位の地銀や信金の中にはまだ理解できていない層も多く、現状のままでは取り残される可能性が高いという見解を示す。
【次ページ】国内金融機関におけるデジタル化の取り組み相関図
地銀のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR