• 2025/12/02 掲載

【独占】SBI北尾社長を直撃、「第4のメガバンク」で巻き起こす本気すぎる地方創生

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SBIホールディングス 代表取締役会長兼社長の北尾吉孝氏が提唱してきた「第4のメガバンク構想」。北尾氏によれば、この構想は地方銀行にとどまらず、自治体、地域メディアを巻き込み、日本経済の底力を再生するための挑戦だという。20年以上にわたって変わらぬ経営理念を掲げ、このたび『金融とメディア、ITが融合する日』を上梓した北尾氏に単独インタビューを行い、地方における「勝ち筋」と、SBIグループが描く新しい金融の将来像を聞いた。
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SBIホールディングス 代表取締役会長兼社長 北尾 吉孝 氏

「第4のメガバンク構想」は“再始動”ではなく一貫した理念

 私は「第4のメガバンク構想が再始動」と書かれた記事(注)を見たとき、正直、少し違和感を覚えました。私はこの構想を、途中で止めたことは一度もないからです。構想を掲げて以来、一貫して地方の金融機関をいかにしてより健全で、収益性の高い存在にするか、そのことだけを考えてきました。
(注:日本経済新聞『SBI新生銀行が再上場申請 「第4のメガバンク構想」再始動』2025年7月11日)

 地方銀行は地域経済の“血液”のようなもの。そこが滞れば、地域全体が立ち行かなくなります。だからこそ、SBIとして本気で支える仕組みを作ろうと動いてきたのです。

 第4のメガバンク構想とは、資本関係の有無に関係なく、SBIグループが中核となって全国の地域金融機関と連携し、広域的な金融ネットワークを構築する取り組みのこと。2019年に島根銀行と提携して以来、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行、東和銀行、きらやか銀行、仙台銀行、筑波銀行、大光銀行、東北銀行ら複数の地銀と連携を進めてきました

 目的は、システム共通化や業務効率化、IT技術の活用などを通じて地銀の経営を強くすることで、SBIグループの金融ノウハウとデジタル技術を共有し、収益力を底上げしていく。

 この構想の最大のポイントは、既存の三大メガバンクのように中央集権的ではなく、地方の自立を促す「分散型の連合体」である点です。私は、銀行連携は単なる資本関係ではなく、システム運用・リスク管理・投資・商品開発など、幅広い領域での協働により、銀行同士が競争だけでなく協調できる関係を築き、地方に新しい金融の“生態系”を作りたいと思っています。

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北尾社長は地銀単独では難しい問題に共同で取り組む考えを持つ

 地銀が単独では難しかったIT投資や人材育成も、共同で取り組めばスケールメリットが生まれる。たとえばシステムのクラウド化や共同の運用基盤を導入すれば、コストを大幅に削減できます。

 もちろん、現場の課題は山ほどあります。システムは古く、ベンダーに縛られ、運用能力も十分とは言えない。そうした現実を変えるには、時間も根気も要ります。それでも私は、ここを避けて通るつもりはありません。地方の銀行がしっかり稼げるようにならなければ、日本全体の経済が縮小するからです

 今、SBI新生銀行は公的資金の返済を終え、上場を目指す段階に入りました。これを中核に、他の地方銀行と力を合わせる体制づくりを本格化させています。テクノロジーと経営の両輪で支援するのが我々の使命であり、いよいよ「構想」から「実践」のステージに入ったというわけです。

「地方だからできない」という思い込みをまず変えたい

 地方経済の現実は厳しいです。人口減少に加え、中小企業を中心とした地域産業が縮小し、どうしても預金が集まりにくく、従来の枠組みだけでは立ち行かなくなっています。預金が減れば、貸出も思うように伸ばせません。

 そこで私が掲げたのが、「リージョナルからネーションワイドへ」という発想です。つまり、地方銀行が地域に閉じこもるのではなく、全国をフィールドに金融サービスを展開し、全国規模の金融ネットワークとして機能する。そして、これを可能にするのがテクノロジーの力です。

 たとえば島根銀行では、スマートフォンを活用した預金サービスを導入し、従来は減る一方だった預金残高を逆に増やすことに成功しました。スマートフォン支店「しまホ!」にて700億円を超える預金を獲得できたのは、まさにデジタルの恩恵です。ITの活用次第で、地方でも大手と同等の金融サービスを提供できることが証明されました。私はこうした事例を通じて、「地方だからできない」という思い込みをまず変えたいと考えています。

 もちろん、単にデジタル化するだけでは意味がありません。大事なのは、地域の現実に即した経営です。システムやアプリを導入しても、それを使いこなせる運用能力がなければ成果は出ません。そこで、SBIグループとして各地の銀行に運用ノウハウを提供し、共同でリスク管理や商品開発を行っています。単独では難しかった部分を、連携で補っていきます。

 さらに、地方銀行の枠を超えた産業支援にも力を入れています。地方に活力を取り戻すには、金融だけでは不十分です。ベンチャーを育て、自治体と協力し、人の流れも変えなければならない。

 私は、地域金融機関と共同でベンチャーファンドを立ち上げ、既存ネットワークも活用して、都市から地方へ、地方から都市へと人のモビリティを高める仕組みづくりを進めています。地方の潜在力を引き出すには、「人・モノ・金・情報」の流れをすべて再構築しなければなりません

 地方の銀行同士は、同じ地域にあるとどうしてもライバル関係になりがちです。でも、いま必要なのは競争ではなく共創です。共通の基盤を持ち、協力して地域を支える金融ネットワークを築く。テクノロジーがその橋渡しをしてくれる時代になりました。私は、この変化を「危機」ではなく、地方銀行が自らの殻を破り、全国とつながり、世界ともつながる「チャンス」と捉えています。 【次ページ】地方メディアの再生こそ、地方創生の要だ
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