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- 2025/09/25 掲載
【ガバクラ】コスト「3割削減」は幻想だった──盛岡市が直面した“15%”の現実
1993年早稲田大学第一文学部卒業後、ぎょうせい入社。地方行政をテーマとした月刊誌の編集者として、IT政策や産業振興、防災、技術開発、まちおこし、医療/福祉などのテーマを中心に携わる。2001年に日本能率協会マネジメントセンター入社。国際経済や生産技術、人材育成、電子政府・自治体などをテーマとした書籍やムックを企画・編集。2004年、IDG Japan入社。月刊「CIO Magazine」の編集者として、企業の経営とITとの連携を主眼に活動。リスクマネジメント、コンプライアンス、セキュリティ、クラウドコンピューティング等をテーマに、紙媒体とWeb、イベントを複合した企画を数多く展開。2007年より同誌副編集長。2010年8月、タマク設立、代表取締役に就任。エンタープライズIT、地方行政、企業経営、流通業、医療などを中心フィールドに、出版媒体やインターネット媒体等での執筆/編集/企画を行っている。
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大きな期待のもと“いち早く”ガバクラ移行へ
盛岡市ではこれまで、全庁的な基幹システムは情報企画課が調達・提供していたが、それ以外の個別業務システムについては、各課が独自に導入・運用を行っていた。この結果、同じベンダーに部署ごとで重複発注が発生するなど、投資の二重化や運用の非効率性が課題となっていた。
こうした状況を打破すべく、盛岡市は2021年、デジタル庁が募集した「ガバメントクラウド先行事業」に応募し、全国52件団体の中から8団体の1つに選ばれ、移行に向けた取り組みをいち早くスタートさせた。
盛岡市 情報企画課 デジタル推進事務局の髙橋 佳大氏は、応募の理由について次のように説明する。
「行政システムの改善は、住民の利便性に直結する重要なテーマです。どうせ全国の自治体がいずれ移行するのであれば、早く取り組むことで経験を蓄積でき、移行作業の平準化にもつながると考えました。結果的に20システムの移行を見据えた際、前倒しで始めることで後半の作業負担を軽減できると見込んだのです」
ガバクラ移行に際しては、盛岡市として大きく2つの期待を抱いていた。1つは、国の方針より2年早く取り組むことによる“経験の獲得”。もう1つは、クラウド利用による“運用コストの削減”である。
実際、当初のデジタル庁の資料には「3割のコスト削減」がうたわれており、その点にも期待がかかっていたという。
クラウド事業者の選定にあたっては、市内に本社を構えるITベンダー(同市の住民記録システムのベンダーでもある)と協議し、既存システムとのデータ互換性や障害対応のしやすさなどを総合的に勘案した結果、AWS(Amazon Web Services)を選定した。 【次ページ】運用コスト「3割削減」のはずが、現実は……
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