- 2025/12/02 掲載
【独占】SBI北尾社長を直撃、「第4のメガバンク」で巻き起こす本気すぎる地方創生(2/2)
地方メディアの再生こそ、地方創生の要だ
私は金融だけで地方を元気にできるとは思っていません。金融再生と同じくらい重要だと考えているのが、地方メディアの変革です。
お金の循環を生み出すには、「情報」がきちんと流れなければなりません。ところが、今の地方ではその情報が十分に回っておらず、地方紙も放送局もキー局に依存し、地域からの発信が弱くなっています。結果として、地域の魅力が伝わらず、観光や産業の振興にもつながっていません。だから私は、地方メディアの再生こそ、地方創生の要だと思っています。
私が地方に出張するとき、ホテルの部屋に必ず地元の新聞が置かれています。地方のホテルに置かれている地方紙を読んでみると、これがまた面白い。地元の人たちの生活感や温度が伝わってくる。
ただ、紙だけで閉じてしまっているのはもったいないんです。地方紙がもっと自らの力で情報を外に発信できるようになってほしい。放送局も同じです。中央の番組を流すだけではなく、地域のリアルをデジタルの力で世界に届ける。そうした仕組みを金融と組み合わせてつくるのが、SBIが考える“新しい地方メディアのかたち”です。
今後は、地方メディアを支援しながら、金融と情報をつなぐエコシステムを構築していきたいと考えています。たとえば地元企業の取り組みや観光資源を、金融や投資の文脈と結びつけ、地域の魅力を発信することで、資金と人材が自然に循環するようにする。ブロックチェーンやWeb3を活用すれば、地元の人たちが地域経済に直接参加する仕組みも実現できます。まさに「情報の地産地消」です。
私がやりたいのは、地方の情報発信を“中央に追いつかせる”ことではありません。むしろ逆で、地方が自らの強みを発信し、外から人とお金を呼び込むことです。そのためには、メディアが変わらないといけない。新聞社や放送局が本業より不動産で利益を出す時代はもう終わりです。地方発のデジタルメディアが地域経済のハブになる時代を、私は本気でつくりたいと思っています。
私は「地方創生」を単なるスローガンではなく、産業・金融・情報の統合的な再設計だと考えています。融合すれば大きな力を発揮できます。私は、地方が持つ潜在力を、情報の力で引き出したいと思っており、地方メディアのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、その象徴的な取り組みになるでしょう。
“見捨てられた領域”にこそ、未来の日本を変える種がある
「地方創生なくして日本の成長なし」とは、安倍元首相もよく言っていました。私はこの言葉に共感しつつも、それだけでは足りないと思っています。誰もが注目している場所に行っても、そこに新しい価値は生まれにくい。むしろ、誰も目を向けなくなった、いわば“陳腐化した領域”にこそ大きな可能性があるんです。この考え方に気づかされたのは、かつてメディア王と称されたルパート・マードック氏との会話でした。そのときに私が「ラジオなんてもう終わりでしょう」と言ったら、彼は笑って「いや、これからが有望だ」と返しました。確かにその後、ラジオはデジタル化で新しい命を吹き返しました。
私はその時、ハッとしました。「陳腐化したものほど、再生の余地がある」と。それ以来、多くの人が「もう終わった」と思う領域に、再び価値を見いだす視点を大事にしてきました。世の中では「レッドオーシャン」「ブルーオーシャン」とよく言いますが、私はそのどちらでもない、“グレーオーシャン”にチャンスがあると考えています。古びて見える市場も、角度を変えればまだ光っている。要は、どこに価値を見出すかです。
メディアの世界も同じです。テレビ局や新聞社といった“オールドメディア”にこそ新しい価値の芽があると思っています。金融とデジタルの力で再構築すれば、彼らは再び地域の中核になれるのです。SBIがいま取り組んでいるのは、まさにそうした再生の現場なのです。
(後編に続く)
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