- 2026/06/10 掲載
27年春「手形・小切手」消滅へ、“資金化不能”になる前に…今すぐやるべき3ステップ(2/2)
事業者に迫る「資金化不能」リスク
手形・小切手の廃止によって、産業界と金融界の双方における事務負担・コストの抑制が期待されています。電子移行による利点は、単なるペーパーレス化にとどまりません。郵送料や印紙代、取立手数料が削減されるほか、現物管理や押印、発送といった物理的な作業負荷も軽減されます。手形をでんさいに切り替えれば、支払う側と受け取る側の双方にコスト削減効果が見込まれます。小切手を振込に替える場合は、支払う側でシステム手数料などのコスト増が生じる可能性がありますが、郵送費や印紙代の削減効果を加味すれば、全体としてコスト削減につながる公算です。
一方、2027年3月末までに電子化しない場合、これまでどおりの手形・小切手利用ができなくなる可能性があります。加えて、多くの金融機関では2027年3月を待たず、手形帳・小切手帳の発行終了や、2027年4月以降を期日とする手形などの代金取立受付終了など、取扱縮小を前倒しで進める動きが見受けられます。
さらに、金融機関によっては最終振出期限を設定しており、その期限後に振り出された手形・小切手は当座勘定から支払えず、受け取った事業者が資金化できない場合もあります。紙のまま残すことは、将来的な資金化リスクを抱え込むことでもあるのです。
電子移行のための3つのステップ、三井住友銀行【事例】
企業側における実際の移行手順は、おおむね次の3つのステップで進められます。(2) 取引先への切り替え案内と調整を行います。支払先や受取先に対して新たな決済方法を通知し、システムや運用面での合意を形成します。
(3) 最後に、社内の導入準備です。経理部門の事務手続きや管理手順を見直し、システムなどの初期設定を完了させます。
この中で特に大切なのは、取引先への切り替え案内です。
銀行によっては案内状のひな型を公表しており、ほぼそのまま活用できる内容になっています。たとえば三井住友銀行の案内状ひな型は、取引先がスムーズに移行できるよう、大きく分けて4つの要素で構成されています。
案内状ひな型の冒頭では、政府の手形利用廃止方針を背景とした支払方法の変更を宣言し、手形や小切手から「でんさい」または振込への切り替え期日を明記します。この際、取引先が代金を受け取る立場であれば、決済期日などの支払条件に変更がないことをあらかじめ伝え、相手の不安を払拭する配慮がなされています。
続いて、取引先側が得られるメリットと留意点を整理して提示しています。
でんさいを利用する場合、支払側には発行や郵送の手間が省け、手形帳代や印紙代が不要になるコスト削減効果が生じます。一方の受取側にとっても、金融機関へ現物を持ち込む手間がなくなり、紛失や期日失念のリスクが解消されるという利点があります。併せて、金融機関での利用申し込みが必要になる点や、手形の不渡りに似た処分制度が存在するといった留意事項も記載しています。
そのうえで、回答書の返送期限を指定するとともに、自社の銀行口座情報やでんさいネットの利用者番号を通知。最後に、取引先が受取側であれば「指定許可機能(登録した相手からのみ受け取る機能)」を利用して自社を登録するよう促します。支払側であれば自社口座への支払設定を依頼するといった、具体的なシステム上の対応手順を案内して、締めくくっています。
業界に追い風? 銀行ビジネスへの影響は
事業者側にとって、早めに電子化へ舵を切ることは、将来の資金化不能リスクを回避するだけでなく、自社の事務コスト削減や資金繰りの円滑化というメリットをもたらします。取引先との信頼関係を維持し、業務効率を向上させるためにも、今すぐ自社の決済フローを見直し、移行に向けた具体的な行動を起こすことが推奨されています。一方で銀行ビジネスにおいても、紙の決済が姿を消すことは大きな転換点になりそうです。これまで窓口で行われていた手形の持ち込みや処理が不要になるため、顧客との日常的な対面接点が縮小する懸念があります。しかしこの移行期が、顧客の経理業務のデジタル化を支援するコンサルティングのきっかけになり、BtoB決済関連の自行サービスの存在感を高める好機にもなると考えられます。
また、でんさいやインターネットバンキングへの移行が進むことで、先ほど触れたように紙の処理に関わる莫大な事務コストを削減できるだけでなく、システム利用料や振込手数料などの安定した手数料収入の増加も見込めます。手形・小切手の電子化は、各行が計画に沿ってしっかり対応を進めれば、業界全体にとって追い風となる可能性があるのです。
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