• 2026/07/07 掲載

金融商品では他社と差が付かない…? SBIが“メディア事業”に注力しまくる納得の理由(3/3)

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地銀こそ有利? 地域金融が持つ「見えないデータ」の競争力

 では、この議論はSBIのような大手金融グループだけの話なのだろうか。加藤氏はむしろ地域金融機関にこそ大きな可能性があると見る。

 メガバンクや大手証券会社は主要都市に店舗を集約する傾向にあり、地域の隅々まで根を張るには限界がある。一方、地域金融機関は地域に深く根を張っており、その地域の人々や法人に関して、オンライン上には出てこない情報を把握している。

「地域で根を張って得られた、どこの誰がどういう資産を持っているか、誰と誰がつながっているかといった情報。これはオンラインには出てきません。こうした情報をデータ化して分析し、マーケティングや商品組成に生かせるかがポイントです」(加藤氏)

 さらに加藤氏は、これまで担当者のセンスに依存していた「人と人との関係性」や「顧客の不安・期待・関心」を、どこまでデータ化し、商品開発や顧客対応に生かせるかが地域金融機関の競争力を左右すると語る。AIなどのデジタルテクノロジーが追いついてきた今、それは実現可能な領域に入っている。

 なお、加藤氏は必ずしも地域金融機関自身がメディアを持つ必要はないとも指摘する。ポイントは「うまく活用していく」ことだ。自行の強みである地域密着の情報と、外部のメディアやコミュニティを組み合わせることで、競争優位を構築できる可能性がある。

顧客接点が激変「オンチェーン金融」をめぐる海外との温度差

 金融の顧客接点について加藤氏がもう1つ挙げたトピックが、決済や預金. 貸出などをブロックチェーンのネットワーク上で直接記録・実行する「オンチェーン金融」だ。加藤氏は2026年2月に香港で100名以上の機関投資家や投資銀行関係者と対話し、オンチェーン金融(決済や預金. 貸出などをブロックチェーンのネットワーク上で直接記録・実行すること)について、海外金融機関の強い「危機感」を実感したという。

「株式や債券などの金融アセットがオンチェーン化され、既存金融のシェアを奪う時代が、5~10年の時間軸で来ると見ている。既存金融がなくなるわけではないが、シェアを奪われる前に取り込んでおこうという発想です」(加藤氏)

 こうした危機感は、顧客接点やコミュニティへの投資にも表れている。米国ではロビンフッド(Robinhood)が投資メディアを取り込み、コインベース(Coinbase)が独自ネットワーク「Base」を展開するなど、金融サービスの周辺にエコシステムを構築する動きが広がっている。

 ブラックロック(BlackRock)もデジタル資産を通じた投資家教育や情報発信を強化しており、競争の主戦場はプロダクトから「接点」へと広がりつつある。

 一方、日本では既存システムの利便性や収益環境を背景に危機感は限定的だ。しかし加藤氏は、既存金融とオンチェーン金融が並行して発展する流れは「ほぼ間違いない」と見る。

「オンチェーン金融は決済効率が高く、資産回転効率が高いという点で優位性があります。金融は中長期的には効率的な仕組みに収斂していくので、オンチェーン金融は既存金融と並ぶ存在になると考えています」(加藤氏)

 SBIは海外有力プロジェクトへの投資と、国内でのステーブルコイン・トークン化金融商品の展開を並行して進める。

画像
SBIのトークン化戦略
(出典:SBIネオメディア・サミット 2026)

 ただし加藤氏は、重要なのは自社の顧客を定義した上で戦略を選ぶことだと強調する。

「すべての金融機関が同じ戦略をとる必要はなく、自社の顧客に合わせて意思決定することが重要です。その意味では、これまで以上に各社が自社の顧客をどう定義するのかが重要になります」(加藤氏)

 各務氏も、WebXへの金融機関の参加が前年比で約10倍に増えていると明かす。特に外資系金融機関の危機感は高く、社長レベルが直接参加を希望するケースも出ている。

 今後3~5年で金融機関に求められる役割はどう変わるのか。加藤氏の答えは意外にもシンプルだった。

「金融機関の本質的な役割は変わらないと思います。資金を必要なところに融通し、リスクを評価し、信用を創造・媒介する。その根幹には『信頼』がある。ステーブルコインやRWA(現実資産のトークン化)が普及しても、AIの利活用が進んでも、この役割は絶対に変わりません」(加藤氏)

 変わるのは実装方法だ。テクノロジーによって金融インフラは変化するが、資金仲介や信用創造という金融機関の本質的役割は変わらないということだ。

 「金融のプロダクトは模倣されやすい」。加藤氏のこの言葉は、金融機関の競争力の源泉は商品そのものではなく、顧客接点や信頼のネットワークへ移りつつある可能性を示している。

■WebX 2026開催のお知らせ
本記事で描かれているWeb3やトークン化経済の動向をさらに具体的に見聞きし理解できるWebX 2026が2026年7月13日(月)・14日(火)に開催される。仮想通貨・Web3メディア「CoinPost」が企画・運営する、アジア最大級のグローバルカンファレンスである同イベントでは各国政府の政策担当者や金融庁などの規制当局も登壇する。

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