- 2026/07/02 掲載
量子はビジネスにどう使える? 金融・創薬・製造領域「ユースケースの現状」
司法試験合格後、2011年に日本銀行入行。システム部署での契約法務やリスク管理業務のほか、金融機関への考査・モニタリング業務などに従事。2023年より現職。 FinTech、Web3をはじめとする企業法務・スタートアップ法務を取り扱う。量子技術分野で文部科学省「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」助成ビジネスコンテスト受賞、NEDO challenge(2025)スクリーニング審査通過。INSEAD MBA修了。
量子は今どこに立っているのか? ニュースの裏にあるもの
「量子コンピューターのニュースは盛んに出ており、ハードウェアベンダーも開発上のマイルストーン達成を大々的に宣伝しています。一方で、ユーザー側の活用という点に目を向けると、ユースケースの実現例と同時に、さまざまなハードルも見えています」(馬場氏)量子コンピューターをめぐる報道は、ここ1~2年で一段と加速した。誤り訂正技術の重要な進展が相次いだことで実用化の現実味が増し、米国を中心にユニコーン級のスタートアップも次々と登場している。
こうした中で、馬場氏は量子コンピューターの未来について、期待だけではなく冷静な現状認識を示す。
「特にゲート型量子コンピューターについては、まだ実用的なマシンがあるわけではないので、中長期的な戦略視点と投資の体力が必要です。このため、実証が進んでいるのは、各業界のトップランナーや大手プレイヤーに限られているのが実情です」(馬場氏)
つまり、量子コンピューターの活用は“先行するごく一握り”と“様子見の大多数”に二極化している状況にある。関心はあるが踏み出せていない「ネクスト層」をどう取り込むかが、業界全体の課題でもある。
量子インスパイアード技術の領域も、基本的には大手のプレイヤーでの実証が進められているが、状況はゲート型量子コンピューターとはやや異なるという。
「量子インスパイアード技術は以前からありましたが、ここに来て“はまるユースケース”を大規模に探索する企業が出てきています。本気で取り組むプレイヤーが量子インスパイアード技術を実際に使う、というフェーズに入ってきています」(手塚氏)
手塚氏が言うように、量子インスパイアード技術自体は決して新しい技術ではない。それこそ10年以上前から研究は進められてきたにもかかわらず、なぜ今になって「現場に入ってきた」と言える状況になっているのか。
手塚氏は、量子インスパイアード技術が強みを持つとされる最適化(ルート最適化、組合せ最適化など)の利用を例に挙げ、ユースケースの蓄積によって「使い方」が洗練されてきたことが背景にある、と説明する。
「単純なルート最適・組合せ最適だけではなく、計算の一部をインスパイアードで解き、古典計算と組み合わせる、といった使い方のテクニックが多様化・洗練化されてきています」(手塚氏)
すなわち、技術そのものは最近登場したものではないが、「どこにどう使うか」という運用知の蓄積が、実装の差を生み始めているというのだ。
【次ページ】古典・量子・量子インスパイアード技術「3つのアプローチ」
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