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  • 2019/12/19

2020年のフィンテック、「スーパーアプリ」「行き過ぎたAI」をどう見るか

2019年はフィンテック分野に多くのテック企業が参入するなど、非常にダイナミックで大きな動きが見られた年だった。激動の2019年を振り返りながら、2020年の「フィンテックのトレンド」を予測する。後編では“王道以外のトレンド”の4つを解説する。

日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人
IBMにてメガバンクの基幹系開発、インターネットバンキング黎明期のプロジェクト立上げ、金融機関向けコンサルティング業務に従事。その後、マイクロソフトを経て、三菱UFJフィナンシャル・グループのイノベーション事業に参画し、フィンテック導入のオープンイノベーションを担当。「Fintech Challenge 2015」「MUFG Digitalアクセラレータ」「オープンAPI」などの設立を主導。また、MUFGコインなどブロックチェーン等の新規事業などの立上げも手がける。auフィナンシャルホールディングス 執行役員 最高デジタル責任者を歴任し金融スーパーアプリなどに携わる。現在は日本マイクロソフトにて、フィンテックを活用したデジタル金融サービスの創造に取り組んでいる。

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2020年のフィンテックトレンドとは?
(Photo/Getty Images)

2020年 フィンテック8つのトレンド
(1)「Regulated DeFi」プロジェクトの実用化
(2)ギグエコノミーに最適なネオバンクが増加
(3)金融の機能化の進展
(4)ジェネレーションZ向けサービスの台頭
(5)フィンテックの水平展開とその先
(6)スーパーアプリのクロスボーダー競争
(7)行き過ぎたAIの是正とハイパーパーソナライゼーション
(8)リセッションへの対応準備


(5)フィンテックの水平展開とその先に

 数年前、“金融サービスのアンバンドリング”というキーワードが流行ったのを覚えているでしょうか。伝統的な金融機関が提供するさまざまな金融サービスを、それぞれテクノロジーで最適化して個別のフィンテック企業が「早く、安く」提供することにより、金融機関そのものを代替可能とする考え方です。

 数百万の顧客獲得に成功したフィンテック企業は収益を伸ばし、IPOした事例も出てきました。また、アクセンチュアのレポート「Accenture 2019 Global Payments Survey」によると、フィンテック企業などの新しいプレイヤーとの競争激化により、銀行は2025年までに収益の最大15%を失うとされています。

 フィンテックのキーワードが広がった当初、それほどビジネス上の大きな脅威とはみなされていませんでしたが、「テクノロジーアダプション(技術適用)」が進むにつれて、アンバンドリングの影響も次第に大きくなってきています。

 もちろん、従来の金融機関もテクノロジー活用によるサービス強化やフィンテック企業の買収、テック企業との提携などで利便性を向上させていますから、一方的なアンバンドルが進んでいるわけではありません。しかし、フィンテック企業は開発力を生かして事業を素早く水平展開を進めています。

 たとえば、モバイル決済サービスで始まったスクエア(Square)は中小企業融資・暗号資産取引を、学生ローンのソフィ(Sofi)は決済口座やロボアドバイザーを、モバイル証券のロビンフッド(Robinhood)は決済口座や暗号資産取引を導入する……といった形で金融サービスのラインナップを拡充しています。

 これらの起業は近いうちにチャレンジャーバンク”、ネオバンクとの境界線があいまいになっていくでしょう。乱立気味で互いに差異化が難しいチャレンジャーバンク、ネオバンクと比較すると、もともと競争力のあるコアサービスを持っているフィンテック企業の方が有利かもしれません。

 このように、フィンテック企業が水平展開を進めると、フィンテック企業同士の競争が激化していくことになります。これまではビジネスドメインが異なっていたため競合関係になかったところが、同じ土俵での戦っていくわけです。

 フィンテック企業同士の連携や資本提携、買収も加速するでしょう。同時にUXもハイスピードで磨かれ、消費者にとってはより良いサービスの選択肢が増えることにもなります。

(6)スーパーアプリのクロスボーダー競争

 中国および東南アジアでは、すでに膨大な数の人がウィチャット(WeChat)やアリペイ(Alipay)、グラブ(Grab)、ゴジェック(Gojek)といった “スーパーアプリ”を利用しています。

 スーパーアプリとは、決済や送金機能を中心としてライドシェア、Eコマース、金融、メッセージング、宿泊予約、デリバリー、ゲームなど日常生活と結びついたさまざまなサービスをワンストップでスマホから利用可能とする統合型アプリの総称です。

 個々のサービスは “ミニプログラム”や“ミニアプリ”と呼ばれるアプリ内アプリ機能で実装されており(ゆえに親アプリがスーパーアプリと呼ばれる)、サービスごとにアプリを立ち上げる手間を省き決済もワンストップで行えるなど、非常に高い利便性を提供しています。

 また、スーパーアプリの運営企業は、アプリ内アプリを増やすために開発者ポータルなどを立ち上げています。スーパーアプリは、モバイル時代における新たなOS的存在となりつつあるといえるでしょう。

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Gojekは既存の大手金融機関から人材を獲得するなど存在感を増している
(出典:Gojek 報道発表)

 スーパーアプリはクロスボーダーでより便利に使えるように進化しており、観光客やビジネスパーソンにとってもなくてはならない存在となっています。

 たとえば、WeChatは中国のアウトバウンド旅行者が海外で便利に使えるミニプログラムを、各国のアライアンスパートナー企業や省庁と協力して提供しています。ミニプログラムがあれば中国人観光客は海外で迷うことなく観光地を回ることができ、決済にも困らないのです。

 東南アジアのスーパーアプリであるGrabは2019年11月に日本のタクシー会社と提携して、観光客がGrabアプリ上で日本のタクシーを呼べる機能の提供を開始しました。東南アジアのGrabユーザーは日本でこれまでよりも簡単にタクシーを利用できるようになります。

 中国、東南アジアの各国の経済成長により海外旅行者が増加し、クロスボーダーで使えるスーパーアプリの価値は益々高まっています。日本でもアウトバウンド、インバウンド双方含む海外旅行者が増加しており、これらのトラフィックを取り込もうとして、日本企業と海外スーパーアプリ勢との競争が本格化していくことが予想されます。

 日本においてもフィンテックに取り組むだけでは収益化が難しいのが現状です。2020年以降は、フィンテック企業においても、クロスボーダーの経済力取り込みが事業戦略上の重要なトピックとなっていくでしょう。

【次ページ】行き過ぎたAIの是正/ハイパーパーソナライゼーション

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