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  • 2020/08/11 掲載

究極のフィンテックは“物々交換”?「なめらかさ」の行きつく先とは

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フィンテックを巡る動きは激しい。だからこそ、「フィンテックとは何か」「お金とは何か」といった基本的な問題に立ち返ることも重要だ。今回は、筆者が考える「フィンテック」の意味を紹介するとともに、フィンテックが進化することで、「お金」「資産」「フィンテック企業」がどう変わるのかを考えてみたい。

執筆:日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

執筆:日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人
IBMにてメガバンクの基幹系開発、インターネットバンキング黎明期のプロジェクト立上げ、金融機関向けコンサルティング業務に従事。その後、マイクロソフトを経て、三菱UFJフィナンシャル・グループのイノベーション事業に参画し、フィンテック導入のオープンイノベーションを担当。「Fintech Challenge 2015」「MUFG Digitalアクセラレータ」「オープンAPI」などの設立を主導。また、MUFGコインなどブロックチェーン等の新規事業などの立上げも手がける。auフィナンシャルホールディングス 執行役員 最高デジタル責任者を歴任し金融スーパーアプリなどに携わる。現在は日本マイクロソフトにて、フィンテックを活用したデジタル金融サービスの創造に取り組んでいる。

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ファインテックは金融をどのように「なめらか」にするのだろうか
(Photo/Getty Images)

改めて「フィンテック」は何にたとえられるか

 冒頭からやや唐突な物言いになりますが、筆者は、フィンテックとは「テクノロジーを活用して、従来はアナログだったお金の流れや取引を圧倒的に“なめらかな体験”へと変えていくドライバー」だと考えています。

 現在の世の中は、お金が流通することによって経済が回っています。物品やサービスはお金を媒介手段として用いて取り引きされているため、お金がなければ現代の人々の生活は成り立ちません。

 ゆえに、テクノロジーは現金という存在をキャッシュレスなどのフィンテックを用いたサービスに作りかえ、支払いや管理に関する障壁を取り除く方向で進化してきました。

 この「なめらかさ」は今後も留まることなく進化を続けていくでしょう。将来実現するかもしれないなめらかさを追求したフィンテックの姿とは、いったいどのような絵姿になるのでしょうか。

 筆者はある意味で、お金という存在が見えなくなるのではないかと考えています。見えなくなるといってもお金がなくなってしまうという意味ではありません。価値を示す尺度としてのお金は残りますが、取引の媒介手段としてのお金が隠蔽されるようになるのでは……と思っています。

「なめらかさ」を追求した先にあるフィンテックの姿とは?

 前述の「なめらかさ」を感じる要素は人によって異なると思いますが、お金が果たす重要な役割である交換の媒介機能が効率的に機能することが、これを実感させることになるでしょう。

 キャッシュレスの進展により、わざわざATMで現金を引き出さずとも物を買えるお店が増えました。また、ネット金融や企業間取引においてはオンラインで決済されるため、現金に頼っていた時代と比較するとはるかになめらかに感じます。

 一方で、お金を使うためには、給与を受け取って銀行口座から出金または電子マネーにチャージするなどのステップを踏むことになります。あるいは、住宅ローンを借りる場合、投資信託を換金して頭金を準備し、他の銀行に振り込むなどの操作が必要になります。

 つまり、オンラインで取引するために、前準備として一度お金に変換する必要があり、そこのプロセスの大部分は手動で行わなければなりません。この障壁を取り除くことが、次のレベルのなめらかさにつながるのではないでしょうか。

 暗号資産(仮想通貨)や、特定のサービスにアクセスするための権利として機能を持つ「ユーティリティトークン」、有価証券をデジタル化した「セキュリティトークン」の世界から、そのヒントを得られるかもしれません。

 「デジタルアセット」という言葉を耳にしたことがある方もおられるかと思います。デジタルアセットとはその名のとおり、アセット(資産)をデジタルデータとして表現したものです。

 ブロックチェーンを用いた暗号資産はデジタルアセットの一種ですが、暗号資産の場合はウォレットの秘密鍵が他人に渡ることで所有権も移転します。

 暗号資産と同じブロックチェーンの技術を用いて有価証券をデジタル化したものが「セキュリティトークン」です。

 セキュリティトークンは不動産やアート、貴金属などさまざまなアセットを裏付けとするものが考えられます。

 また、黎明期の現在は、従来は小口化して所有しにくかったような実世界のアセットを小口化して流通させるようなケースが多く見られます。将来的には、株式や債券などもセキュリティトークン化されていくかもしれません。

 不動産では、2020年3月に、LIFULLがデジタル証券基盤のサービスを持つ米セキュリタイズと、日本の不動産を対象に実証実験を開始しているほか、アート領域ではブロックチェーンを使った来歴管理を手掛けるスタートバーンなども実証実験中といいます。

 さまざまなアセットがブロックチェーンでトークン(価値を表象するもの)化されると、少なくとも技術的には、ブロックチェーンのP2P取引の仕組みを利用して、非常に容易に取引、交換できるようになります。

 このように、複数の領域で企業がデジタルアセットの実証実験を展開しているとともに、ゴールドマンサックスのような巨大な金融機関もこの領域が金融の未来だと考え、独自のコインの開発を検討しています。

 同社はこの8月にはデジタルアセット関連のサービス開発についてチームを拡大するといった報道もあるなど、この分野に注力していることがわかります。

アセットがトークン化された世界で起きること

 これまでは、アセットをいったんお金(法定通貨)に換えて別のアセットを購入する、というステップが必要でした。

 そのために手数料を支払ったり、いったん銀行口座に出金して、再度、別の金融機関の口座に入金するなどのフリクション(摩擦)が存在します。

 しかし、トークン化した世界では、裏付けとなる資産の有無や種類の違いはあるにせよ、トークンデータ+価格という構成においては同一です。

 見かけ上のアセットクラス(投資対象である資産の種類や分類)は水平になり、直接的にお金を媒介手段として用いずに交換することが可能にになると考えられます。

 すなわち、金(ゴールド)で株式を買う、あるいは不動産で暗号資産を買う、といったイメージのユーザー体験です。取引の見た目上は、物々交換のような形に近しい形となります。

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2020年代は「データ」がトークンやコインの価値を担保することにより“物々交換”の世界が生まれる可能性がある
(出典:筆者提供資料をもとに編集部作成)

【次ページ】アセットがトークン化された世界で起きること

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