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  • 2022/07/13 掲載

【現地取材】シンガポールがスイスで仕掛けた「Web3/サステナブル」イベントの論点は何か?

FINOLABコラム

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スイスのチューリッヒで「対面のみ」の金融イベントPoint Zero Forumが開催された。このイベントは、官民のグローバルリーダーがデジタル経済におけるFinTechとWeb3の発展に向けたアイデアや知識の交換を促進することを目指した催しだ。招待者のみで開催された第1回から非常に白熱したイベントとなったが一体何が議論されているのか? FinTechとWeb3の交差点の領域や、サステナブルファイナンス、環境・社会・ガバナンス(ESG)などを含めた世界的な金融アジェンダの中身について、イベントに参加した筆者が解説する。
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 「Point Zero Forum」のメインステージ
(出典:筆者撮影)

金融イベント「Point Zero Forum」とは

 Point Zero Forum(ポイントゼロフォーラム:PZF)は、スイスのチューリッヒで2022年6月21日から23日までの3日間にわたって開催された。今回初めてとなる同フォーラムは、コロナ後には主流となっていたオンライン配信は行わず、対面のみで開催された。

 フォーラムへの参加登録には招待が必要であったにもかかわらず、世界中の規制当局、金融機関、投資家、スタートアップよりシニアレベルの参加者が1000人以上集まった。31のプレナリーセッション、9のレギュラトリーラウンドテーブル、13のワークショップにおいて、政府高官や企業CEOクラス200名以上の登壇によって非常に中身の濃い議論が展開された。休憩時間中に参加者の交流が行われた他、300を超える1対1のミーティングも実現している。

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PZF
(出典:筆者提供)

 PZFは、官民のグローバルリーダーが、デジタル経済におけるFinTechとWeb3の発展に向けたアイデアや知識の有意義な交換を促進するためのプラットフォームを提供することを目的として、初めてとなる今回から毎年の開催を目指している。

 主催は、ElevandiSWISS FDF(Federal Department of Finance)である。Elevandiは2016年よりSingapore FinTech Festivalを主催してきたシンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore:MAS)の運営チームがイベント企画企業として独立したもので、MASのChief FinTech Officerであるソプネンドゥ・モハンティ(Sopnendu Mohanty)氏が会長に就任している。

 スイスサイドはMASのカウンターパートにあたる金融当局であるSWISS FDFが主催、中央銀行や銀行協会などの金融関係が後援している。さらに、BIS(Bank for International Settlement:国際決済銀行)も後援する形となっている。シンガポールとスイスは金融連携に向けた協議を進めてきているが、フィンテック版のダボス会議を目指すPZFの開催は、金融立国を目指すシンガポールが、世界の富が集中するスイスの金融業界に働きかけて実現したものと言える。

金融先進国、スイスのラボとは

 フォーラム初日(6月21日)には、開催都市のチューリッヒ(Zurich)と近郊でクリプトバレーの中心と言われるツーク(Zug)の以下施設で、金融関連の技術変化の活用事例について、研究内容や最新動向を紹介するイノベーションラボ見学ツアーが開催された。

 筆者はツークまで移動し、CV Labsにおいて、クリプトバレーの動向(次項)とともに関連分野のスタートアップのプレゼンテーションを聞いたが、ラボの現場ではイベント会場とは異なる熱気を感じられるということで、参加者には好評であった。各ラボでは以下のようなトピックで研究に取り組んでいた。

  • CV Labs(クリプト関連のインキュベーション施設)
  • ETH Quantum Center(量子技術の研究)
  • ZHAW(サステナブルファイナンスの動向)
  • University of Zurich(ブロックチェーン技術の研究)
  • Google Campus(先進技術の実用)
  • University of St. Gallen(フィンテックの研究)
  • F10(スタートアップ投資も行うインキュベーション施設)
  • BIS Innovation Hub(国際決済銀行におけるイノベーションへの取り組み)

スイスの「クリプトバレー」の発展

 CV Labsの視察においては、個別スタートアップの紹介とともに、ツークを中心とするクリプトバレーの紹介が行われた。スイスとリヒテンシュタインを含めた地域内におけるクリプト関連企業は2021年末の段階で1128社にものぼっており、その約半分がツークで登記されている。ツークの人口が13万人程度ということを考えると、同分野に特化した発展を遂げていることがわかる。

 2021年末には、クリプトバレーのユニコーン(企業価値10憶ドル超)が14社となっており、上位50社の時価総額は6,118憶ドル(ただし、トップのイーサリアム<Ethereum>だけで4,381憶ドル)といった水準に達している。最近の暗号資産の大幅な価格下落によって時価総額もだいぶ下がっているが、集積地としての重要性は変わらないとの説明であった。

 特に注目されるのが、クリプト関連の中でも暗号資産取引所以外の、金融のあらゆる機能を新しいブロックチェーン技術で実現しようとする企業が出現していることである。

 クリプトバンクを標榜して実際に免許を取得している銀行もあり、クリプトファイナンスのエコシステムが整備されつつあるという印象を受けた。それに伴って、既存の金融業界の人材が多くクリプト領域に移ってきており、世界の富を集めてきたスイス金融の新しい顔をみたように感じた。

【次ページ】「Point Zero Forum」では何が議論されたのか?

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