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- 2024/04/24 掲載
アマゾンの「偽レビュー」などを駆逐へ、Web3技術「OpenRank」の革新的方法の正体
オンラインレビューの信頼性が問われる時代、その背景とは?
インターネットの普及によって、消費者は商品やサービスを選ぶ際、オンラインのレビューや口コミを参考にすることが当たり前になった。アマゾンやGoogleマップなど、多くのプラットフォームがユーザーレビューを掲載しており、購買の意思決定に大きな影響を与えている。この2社に限らず、ユーザーレビューの影響力の大きさを認識している企業、ウーバー、アマゾン、メタ(フェイスブック)、Airbnbなどは、ビジネスや個人に対する評価システムを提供しつつ、レビューの信頼性を高める施策も進めてきた。
しかし、自動生成されたコンテンツや匿名のプロファイルの急増に伴い、偽のレビューや操作されたレビューが横行し、レビューの信頼性が大きな問題となっているのが現状であり、プラットフォーマーの責任も強く問われるようになってきた。
レビューの信頼性は、消費者だけでなくレビューされる側の事業者にとっても重要な問題になっている。偽のレビューによって、優良な商品やサービスの評判が不当に下げられたり、逆に粗悪なものが持ち上げられたりするリスクがあるからだ。(正式には認めていないものの)グーグルの検索結果順位にも、レビューが影響を与える可能性はあり、ビジネスの集客力に直結する問題となる。
また、シェアリングエコノミーの拡大によって、個人間の取引が増えたこともレビューの重要性を高めている背景の1つとなっている。メルカリをはじめ、ヤフオクやジモティーなど個人売買などでは、取引相手のレビューが大きなファクターとなるのは想像に難くない。
これらの企業が提供するシステムはP2P(ピア・ツー・ピア)の要素もあり、ある種の分散型評価システムといえるが、真に分散化されたものではない。レビューデータの管理や評判スコアの算出は、最終的には個々のプラットフォーム企業に委ねられているためだ。
レビューの信頼性を担保するためには、より透明性が高く、中立的な評価基盤が求められる。こうした中で注目を集めているのが、ブロックチェーン技術を活用した「分散型評判システム」だ。その代表例であるKarma3 Labsの「OpenRank」について詳しく見ていきたい。
Karma3 Labsの革新的なアプローチ
Karma3 Labsは、分散型評判プロトコル「OpenRank」の開発を通じて、Web3の世界におけるレビューの信頼性向上に取り組んでいるスタートアップ。2024年3月、シードラウンドで450万ドルの資金調達を発表し、注目を集めている。OpenRankの目的は、開発者が消費者向けアプリ、コミュニティ、マーケットプレイスを構築する際に、信頼できるレビューシステムを簡単に統合できるようにすることだ。そのためのキーとなるのが、「評判グラフ(reputation graphs)」の構築である。
評判グラフとは、ユーザー間の相互作用から信頼関係を導き出し、それを可視化したものだ。
OpenRankは、オンチェーンのソーシャルグラフデータを用いて評判グラフを構築する。つまり、ブロックチェーン上に記録されたユーザー間のつながりや活動履歴を解析し、信頼度を数値化するのだ。
そして、EigenTrustやHubs and Authorities、Collaborative Filteringといったグラフ理論に基づくアルゴリズムを適用することで、各ユーザーの評判スコアやコンテンツのランキングを算出する。
これらのアルゴリズムは、信頼度の高いユーザーから多くリンクされているユーザーや、類似した評価傾向を持つユーザー間で高い評価を付与し合うことを評判スコアに反映させる仕組みとなる。
これにより、レビューやコメントの信憑性を、中央集権的な管理者に頼ることなく、分散型のネットワークで担保することが可能になるのだ。OpenRankの特徴は、汎用性の高さにある。評判グラフを活用することで、特定のアプリケーションやユースケースに限定されない、汎用的な評判スコアを算出し、異なるサービス間でもユーザーの評判を共有することができる。たとえば、Aというサービスで評価の高いユーザーによるレビューは、Bというサービスでも高く評価され、逆にスパムや虚偽のレビューは淘汰される。
ブロックチェーンの性質上、評判スコアの透明性と不変性を確保することも可能だ。レビューデータをブロックチェーン上に記録することで、恣意的な改ざんを防止。これも、レビューの信頼性を高める上で重要なポイントとなる。
Karma3 Labsは、MetaMask、Farcaster、LensといったWeb3エコシステムと連携し、EigenTrustをはじめとする評判計算アルゴリズムの実装を進めている。MetaMask Snaps向けにはコミュニティ評価システム、LensとFarcasterにはランキング/推薦APIを実装する予定という。
LensとFarcasterはともに、Web3のソーシャルネットワーキングプロトコル。開発者はこのプロトコル上に独自のソーシャルアプリケーションを構築することができる。ともにユーザーのデータ所有権を尊重するもので、最近開発活動が加速している。 【次ページ】「評判グラフ」の仕組みとは? ピア・ツー・ピアでの信頼性担保
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