- 2026/03/06 掲載
EV失速で「バッテリー余りまくり」の悲劇…AIブームが生んだ「起死回生の儲け話」とは(2/2)
GMやフォードはすでに「次なる用途」を展開
GMは2025年7月に、リチウムイオン電池をリサイクルする米レッドウッド・マテリアルズと提携。GMが生産した新品および使用済みのバッテリーセルをレッドウッドに提供し、大型の定置型パックとして組み立てる。レッドウッドは、米AIインフラ企業のクルーソーが西部ネバダ州で使用する63メガワット時の蓄電マイクログリッドを供給しているが、この設備にGMの使用済みバッテリーが含まれているという。
ライバルのフォードも負けてはいない。2026年1月に新たに立ち上げたフォード・エナジーの社長に、産業用蓄電システム分野で経験豊富なリサ・ドレイク氏(プラットフォームプログラム・EVシステム担当)を任命。高まるグリッド安定化需要を取り込むべく、他社よりも低コストで耐久性の高いLFP電地(リン酸鉄リチウムイオン電池)で構成される大型の定置型パックを、南部ケンタッキー州のバッテリー工場などで製造して、電力企業に売り込む。
「電気代を下げる」思わぬ効果も?
米国におけるAIデータセンター建設は、電気代を上昇させるとして、地元住民の反対など大きな逆風に直面している。AI競争で中国に勝利することを目指すトランプ政権にとり、AIデータセンターに対する反対運動は見過ごせない問題だ。そのためトランプ大統領は、電力価格を引き下げるため、国内の主要な送電網運用事業者に対する圧力を強めている。これを受けて、米エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、多くの地域で電力網への負荷を高めているAI設備の大規模な増強について、長期的にはエネルギーコストの低下につながるとの見通しを示した。
フアン氏によれば、「市場原理によってエネルギー供給への投資が促されており、供給量が増加するとともに電力網の近代化が進む」。これに加えて、発電や配電の分野でAIによる最適化が行われ、時間の経過とともにコストは低下していくのだという。
こうした観点から、本来はEV向けであったバッテリーを利用し、コストパフォーマンスの高い蓄電システムの構築に成功した企業が勝ち組になることが予想される。
たとえば、EVメーカーからロボタクシー企業への脱皮を図るテスラは、その秘蔵っ子であるエネルギー部門が好調だ。2025年には前年比49%増の46.7ギガワット時の蓄電システムを展開。AIデータセンター向けのメガパック製品の好調が貢献した。
テスラによれば、AIデータセンターにおける電力安定化につながるメガパックは「極めてお買い得」であり、事業者が電力の裁定取引において、電気料金が安い時間帯に蓄電池へ充電し、価格が高いピーク時に放電・使用することで、電気代を削減または売電益を得ることを可能にする。
このようにして事業者が儲かれば、その節約分の一部を顧客に還元できるため、電気代抑制手段としての蓄電システムへの需要が高まる。
中国企業も参入…「バッテリー競争」超激化
一方で、自動車メーカーや蓄電池企業がひしめくデータセンター向けバッテリー市場では競争が激化しており、油断は禁物だ。事実、データセンター向けの急速充電可能なナトリウムイオン電池を開発し、2024年に量産を開始した米スタートアップであるナトロン・エナジーは、資金難により2025年9月に西部カリフォルニア州と中西部ミシガン州における工場稼働をキャンセルしている。
加えて、中国の蓄電池メーカーの厦門海辰儲能科技や遠景科技集団(エンビジョングループ)が、南部テネシー州などに相次いで米国に工場を設けている。AIデータセンター向け需要の成長余地は中国よりも米国市場の方が大きいとみて、収益を伸ばす狙いだと報じられる。トランプ大統領も、国内雇用を増やすこうした動きを歓迎しており、競争はさらに激しくなるだろう。
厳しい価格競争の中、生産コストを下げる一方でバッテリー性能を上げるという、困難なタスクに成功して生き残る企業はどこになるのか。2026年はその未来図が見えてくる年になるだろう。
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