- 2026/01/22 掲載
モバイルバッテリー発火で相次ぐトラブル、回収率「たった21.6%」の大問題
回収と事故、モバイルバッテリーの安全課題
近年、スマートフォンなどの充電用として持ち歩かれることが一般化したモバイルバッテリー。リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池はエネルギー密度が高い反面、異常が起きれば発煙・発火に至るリスクを抱える。航空機内では保管・充電のルールが厳格化されるなど安全対策が進む一方、鉄道や日常の移動では取り扱いが緩やかだ。これが、生活者が危険を認識しにくい背景にもなっている。
21日には、東京メトロ・日比谷線の車内で乗客のモバイルバッテリーから発火、日比谷線は一時運転を見合わせることになった。けが人はなかったが、約3万6000人に影響が出たという。
2025年にも、JR山手線車内で乗客が所持するモバイルバッテリーが発火し、乗客5人がけがをする事故が起き、運転が一時停止する事態となった。発火元となったバッテリーはリコール対象製品で、出火に関連して16件の火災確認がされていたと報じられている。このときは約9万8000人に影響が出た。
このほかにも、東海道新幹線内でモバイルバッテリーが発火した事案が報告されている。いずれも大きな被害には至らなかったものの、公共交通機関内での発火は極めて重大な安全リスクとなる。
回収率低迷と生活者の“未対応の山”
このような安全課題を背景に、消費者庁は複数のモバイルバッテリーについてリコール・回収・交換を進めている。たとえばアンカー・ジャパンが輸入したAnker Power Bank (10000mAh, 22.5W) は40万1771台を超える製品がリコール対象となる一方、2026年1月13日時点での回収率は21.6%にとどまる。1月20日にはさらにAnker 334 MagGo Battery (PowerCore 10000) についても2025年に11月に火災事故が発生したことが発表された。こちらは対象数が少ないが、それでも3件の火災事故を起こしていることが明らかになっている。回収率が低迷する背景には、告知が届かない・行動につながらないといった生活者側の事情がある。家族との共有や譲渡、中古流通などにより、「このバッテリーが該当製品なのか分からない」という状況が発生しやすい。また、購入者と使用者が異なる場合にも通知が生活者に届きにくいという構造的な課題が指摘される。
モバイルバッテリーの発火は、リチウム電池を使う製品全般に共通する現象として、内部セルの異常が蓄積熱を引き起こし、熱暴走に至ることがある。これは、製造時のセル品質、設計上の保護回路の有無、過充電・過放電の管理が不十分な場合に顕著となる。
加えて、利用環境の変化も影響する。高温下での保管、衝撃や圧迫、水濡れなどは電池内部の損傷を促し、熱暴走のリスクを高める要素だ。公共交通機関は密閉された空間であり、小さな発火でも大きな混乱につながる。 【次ページ】行政・業界の対応、回収率改善のために何ができるか?
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