- 2026/03/06 掲載
EV失速で「バッテリー余りまくり」の悲劇…AIブームが生んだ「起死回生の儲け話」とは
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
需要の2.4倍…EV失速で「バッテリー供給過多」に
まず、バイデン前政権が2期目を目指していた2024年7月に、全米で計画中・建設中・稼働中であったバッテリー工場を地図上の点で表した図1を見ると、自動車産業が盛んな中西部と南部を中心に34の事業所が展開中あるいは予定されていたことがわかる。また、第2次トランプ政権発足直後の2025年2月にまとめられた記事によれば、GM、フォード、ステランティス、テスラ、ホンダ、トヨタ、韓国ヒョンデなどの自動車メーカーに加えて、パナソニックや韓国LGエナジーソリューション、韓国SKオンなど蓄電池メーカーによる工場がすべて稼働すれば、合計の年間製造能力が当時のおよそ2倍である合計421.5ギガワット時に達する予定であった。
ところが、米国におけるEV販売は2023年から頭打ち傾向が顕著になっており、2025年9月末で1台当たり最大7,500ドル(約120万円)の税額控除(補助金)が廃止されるに至り、年間販売台数が前年を下回るなど、需要の大きな伸びが見込めなくなった(図2)。
こうした状況を受け、自動車各社はEV生産計画の縮小を始める。たとえばフォードは、全電動の3列SUVの計画をキャンセルし、代わりにハイブリッドにシフトした上で、電動F-150ライトニングの生産を無期限に停止。さらに、低コストEVに注力するようになった。
米国の順調なEVシフトを前提に生産拡大を計画していた各地のバッテリー工場は、これにより大打撃を被った。ステランティスに至っては2025年6月に、中西部イリノイ州のバッテリー工場稼働計画をキャンセルしている。
米コンサルティング大手のアリックスパートナーズによれば、北米のEVバッテリー生産能力は2028年に需要の2.4倍に達し、2030年まで供給過剰が続く見通しだ。バッテリー生産能力を持て余す各社は、新たな販路開拓や供給先の多角化が迫られている。
こうした状況下で「救世主」の役割を果たすと見られているのが、現在のAIブームに関連する“ある分野”向けでの活用だ。
AIブームで大注目、EVバッテリーの「次なる用途」
結論から言うと、救世主の役割を果たすと見られているのが、EV向けバッテリーを電力網やAIデータセンター向けの定置型エネルギー貯蔵システムに活用するビジネスだ。まず米AIデータセンターは昨今のAIブームによって各地で急ピッチの建設が進められているが、同時に蓄電需要も急速に伸びている。図3を見ると総電力需要に対するデータセンター向けの需要割合は2025年の5.2%から、2030年には11.7%へと倍増すると見られている。
このため、米データセンター向けバッテリー市場の規模は、2024年の32億ドル(約5,020億円)から年率3.9%のペースで伸び、2030年には41億ドル(約6,430億円)に成長すると、米市場調査企業のResearchAndMarkets.comは予想している(図4)。
一方、米国で送電網の信頼性とセキュリティ向上に取り組む北米電力信頼度協議会(NERC)によれば、現在のAIデータセンター建設ラッシュによって、今後5年間に電力網の需要がパンク状態になり、停電が増えると見込まれる。そのため、急激な需要の変化に対応して、グリッドを安定させるソリューションの整備が急務となっている。
そこで登場したのが、EV向けバッテリーを電力網やAIデータセンター向けの定置型エネルギー貯蔵システムに活用するビジネスというわけだ。 【次ページ】GMやフォードはすでに「次なる用途」を展開
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