- 2026/06/03 掲載
三菱重工が圧勝?「43兆円特需」なのに脱落危機…防衛5社比較で見えた「残酷な選別」
(見出し『【5社決算比較】防衛特需の「勝ち組」と「独自の立ち位置」』にて詳しく解説します)
なぜ今、政府は「防衛産業」に力を入れるのか?
日本の防衛産業は大きな転換点を迎えている。これまで民間企業に委ねてきた防衛装備品の生産基盤に対し、政府が強く関与し始めたからだ。背景にあるのは、国内で装備品を安定生産できなくなるという危機感である。政府は2026年2月と4月、防衛産業の成長戦略を議論するワーキンググループを開催し、生産基盤の強化などについて議論を進めた。従来の防衛生産・技術基盤戦略とは異なり、今回は経済安全保障や装備輸出まで含めた産業政策として位置づけている。防衛産業を単なる調達先ではなく、国家として維持すべき基幹産業として扱う方向へ踏み込んだ形だ。
背景には、関連企業による防衛事業からの撤退が相次いできた現実がある。2022年までの20年間で、およそ100社が撤退したとされる。防衛装備品は少量多品種で採算が取りづらく、発注時期も安定しない。民間製品のような量産効果も期待しにくいため、特に下請け企業の負担が重かった。
もう1つの理由が、防衛装備輸出政策の転換である。政府は2024年3月、英国・イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国輸出を可能にすることを閣議決定した。
さらに2026年4月には、これまで輸出可能な装備品を救難・輸送・警戒監視など5類型に限定してきた枠組みの撤廃方針も決定。今後、対象範囲が広がる可能性は高い。長く続いた輸出抑制から、条件付きで輸出を認める方向へ政策が大きく動いている。
一方、「国として支える企業」と「維持が難しい企業」の線引きが始まるとの見方も出ている。半導体分野でラピダスに巨額支援を行ったように、防衛産業でも国家主導の再編が進む可能性がある。
ただし、防衛産業を取り巻く環境は明るい話題ばかりではない。政府が期待する防衛装備品の輸出拡大には国際競争や営業体制など多くの壁があり、さらに業界では利益率の低さや技術者不足といった構造課題も深刻化している。防衛特需の恩恵を受ける企業と、その先の競争力が問われる企業、業界はいま大きな転換点を迎えている。
【5社決算比較】防衛特需の「勝ち組」と「独自の立ち位置」
この影響は、防衛関連企業の決算に鮮明に表れた。
中でも突出しているのが三菱重工だ。2026年3月期の受注高は7兆6,536億円となり、前期比19.5%増で過去最高を更新した。売上高は4兆9,741億円(14.1%増)、本業の儲けを示す事業利益も4,322億円(21.8%増)と大幅に伸びている。
成長をけん引しているのは航空・防衛・宇宙部門だ。ミサイルや艦艇、次期戦闘機関連など大型案件を相次いで受注し、同部門の売上高は1兆3,938億円と35.2%増になった。この部門は、長年主力だったエナジー事業に次ぐ柱へと成長を遂げている。政府が導入した利益率を最大15%とする算定制度の恩恵も受けており、防衛産業の中心企業としての存在感をさらに強めた。
一方、川崎重工とIHIは、防衛需要の恩恵を受けながらも、依然として航空分野への依存が大きいのが焦点となる。
川崎重工は航空宇宙システム部門などが下支えし、売上高は2兆3,112億円(8.5%増)、事業利益は1,451億円(35.4%増)と過去最高を更新した。ただ、受注高は航空宇宙システム事業で減少しており、ロボット事業などが全体を支える構図になっている。
IHIも、防衛需要や民間航空エンジン整備事業の拡大を背景に、受注高は過去最高の約1兆9,547億円(11.6%増)となった。営業利益も1,655億円(15.3%増)となったが、収益構造は依然として航空エンジン市況の影響を受けやすい。
三菱重工のように陸・海・空・宇宙まで幅広く受注できる体制とは差がある。今後は事業の多角化をどこまで進められるかがカギとなりそうだ。
その一方で、メガプライム企業とは異なる領域で独自の立ち位置を確立しているのが、日本製鋼所と新明和工業だ。
日本製鋼所は、火砲やミサイル発射装置を中心とする防衛関連機器の売上が469億円となり、前期比45.6%増と急拡大した。特殊鋼や砲身など、国内で代替しにくい技術を持つことが強みだ。派手さはないが、防衛予算拡大の恩恵を受けやすい立場にある。その結果、売上高が2,748億円(10.6%増)、営業利益253億円(10.9%増)となった。
新明和工業も好調だ。受注高は3,270億円と5年連続で過去最高を更新。売上高も3年連続の過去最高更新となる2,850億円(7.0%増)、営業利益も過去最高の163億円(16.9%増)となった。
US-2救難飛行艇の製造や維持整備に加え、防衛省向け特装車の価格改定効果などが寄与。最先端兵器の開発企業ではないが、後方支援や運用維持に欠かせない装備を供給し、自社技術を着実に防衛分野へ結びつけている。
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