• 2026/05/28 掲載

60代もGeminiで覚醒? 老舗メーカーが“年間で数千万円”も浮かせた「生成AI活用術」

連載:勝てる工場のつくり方~イケダガラス編~

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東京・神田に本社を構える老舗ガラスメーカー「イケダガラス」。生成AI活用によって、年間で数千万円規模のコスト削減を実現しつつあるという。驚くべきは、その中心を担ったのが60代のベテラン社員はじめ、ITに詳しくない現場担当者たちだという点だ。彼らは、イケダガラスで行っている「AIアイデアマラソン」なる取り組みを通じて生成AIと出会い、その凄さに魅了され、次々と業務を劇的に変えている。そこで今回、同社 代表取締役社長の池田 友和氏と同社社員2人に、主な活用例とともに、AIアイデアマラソンの取り組み内容などについて話を聞いた。
執筆:フリーライター 杉山 忠義

フリーライター 杉山 忠義

法政大学工学部卒。大手計測機器メーカーにエンジニアとして入社するも、リアルなものづくりがしたいと木工職人に転職。一転、30 歳を前に「言葉」「伝える」力に魅力を感じ、ライターを志す。当初はインテリア、製造業関連の案件が多かったが、次第に経営者、ビジネスサイドへのインタビュー案件が増加。ここ数年は IT テクノロジー、人事・求人・採用、中小企業経営者といった分野の案件多数。クラシックバレエに夢中な相方、アパレル企業で働く娘、父親と同じ大学の理工学部で学ぶ息子、13歳の犬・ミニチュアピンシャーの4人+1匹家族(2026年現在)。

  撮影:大参 久人
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イケダガラス 代表取締役社長 池田 友和氏

池田社長の思いは「まずAIに触れてほしい」

「ChatGPTの登場以降、AIが急速に世の中に広まりましたよね。私も実際に使ってみたところ、これはちょっと凄いな、と。そう思うと同時に、仕事に活用すべきだし、活用することが必須になるだろうと感じました」(池田氏)

 このように感じた池田氏は、すぐに動き始めた。2023年初めごろ、AIに関する外部の研修会に、AIに興味を持つ従業員と一緒に参加。これを機に、より多くの従業員に広めたいと思ったが、研修会への参加に手を挙げる従業員は続かなかった。

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 「会社側でマニュアルを作って提供し、AIを使ってもらおうか」。当初はこのような案も浮かんだそうだが、「AIは変化が早い技術なので、まずは実際に触れてもらうことが大事ですし、そうすることで私が感じたように、AIの凄さや業務改善に使えることを感じ取ってもらえると思いました」と池田氏は振り返る。

 そこでひらめいたのが、同社で長年続く制度の活用であった。

40年超続く活動を生かした「AIアイデアマラソン」とは?

 イケダガラスではさまざまな改善を、社員自らが提案する「提案活動」として40年以上続けている。対象は全従業員で、提案数の目標は1人当たり年間6件以上。提案内容の良し悪しにより100円~3万円までの報奨金を出している。

 池田氏はこの提案活動を活用し、「AIアイデアマラソン」なるイベントを企画する。

 先述したように、まずは1人でも多くの従業員がAIの凄さを体感し、慣れ親しんでもらうことが大切だと考えた。そのため提案内容のハードルは高くせず、「AIを使って少し調べごとをする」「文章を要約してみる」といった内容も対象に含めた。AIを使いこなしている人から見ると簡単な内容であってもよしとしたのだ。

 加えて、期間を5カ月間と限定し、毎月1つ以上のアイデアを継続して出した社員には完走賞を提供するアイデアを加えた。そのほか、優れた提案には報奨金を出すなどの内容は提案活動と同じだ。

 そうしてイベントを行ってみると、業務効率化やコスト削減に寄与するような画期的なアイデアが、ITに詳しくない従業員から挙がってきたのである。いくつか紹介しよう。

【活用例1】Geminiで「設備保全のアプリ」を開発

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【画像付き記事全文はこちら】
タブレット端末で工場管理アプリを操作。簡単かつ効率的に保全業務を行えるようになった
(イケダガラス提供)
 イケダガラスにおける工場の機械設備の保全業務は、一昔前であれば日常ならびに定期点検の内容を紙に記録、DXに取り組んだ2020年以降はタブレット端末やPCで記録していた。そして今回のイベントを受け、同業務を担当していたメンバーが、より簡便かつ効率的に保全業務を行えるアプリを開発したのだ。

 名付けて「工場管理アプリ」。アプリには工場全体に配置された設備が示され、気になる設備をタップすると、その設備のメンテナンスに関する情報はもちろん、他の情報、たとえば過去のトラブル履歴や、新たに点検した情報なども追記、確認できる。特筆すべきは、このアプリを開発した保全担当者はITやAIに詳しくなかったことだ。

「アプリを開発したことはもちろんありませんから、まずはいちから、どうすればアプリを作れるのかを、Geminiに聞いたそうです。すると、プログラミングが必要だと。でも、本人はできない。そのことを再びGeminiに投げると、Geminiがプログラミングをしてくれると。こんなやり取りを続けていくうちに、次第にAIの魅力や凄さ、使うことの楽しさを感じたようで、動画などで勉強もしながら、最終的にアプリを開発したと聞いています」(池田氏)

 池田氏は嬉しそうに成果を話した。AI活用の凄さを肌身で感じた従業員はその後もアプリの開発を続け、現在では消耗部品の在庫管理情報などをひも付けるまでに進化。本社のDX推進に向けて、担当工場だけでなく他の工場にも展開予定だという。

 なおイケダガラスではDX推進の一環としてクラウド型グループウェアの「Google Workspace」を導入しており、全従業員がGeminiをクローズドかつセキュアに使える環境を整えている。 【次ページ】【活用例2】60代のベテランが「ガラス板搬入」特有の課題を解決
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